玄米は身体によい食品ではありますが、発芽毒であるアブシジン酸が含まれることをご存知の方も多いでしょう。
ところでアブシジン酸は長時間の浸水時間をとることで、その発芽毒を不活化させることが可能になります。
今回はアブシジン酸とはどのような成分なのかを知り、健康への影響を与えないためにはどうすればよいのかを考えることにしましょう。
玄米の発芽毒とはどのようなもの?
玄米に関係する「毒」と言われれば、いくつか思い当たるものはあるでしょう。
ただし玄米の発芽毒になると、発芽抑制因子で玄米の発芽を調整している「アブシジン酸」のことになります。
アブシジン酸は玄米が乾燥や低温の環境でストレスを感じ、自ら作り出して蓄積する物質です。
例えば忙しい主婦の間では、圧力鍋を使う時短調理が人気ですよね。
その場合に玄米を短時間で軟らかくするため、浸水時間はなしで圧力鍋を使った場合、アブシジン酸を体内に入れてしまうことになります。
そして圧力鍋の調理の他にも、玄米の調理法として人気のびっくり炊きも同様です。
びっくり炊きはステンレスの鍋や土鍋でも手軽に作れるので人気ですが、その調理の特徴から浸水なしでもふっくらとおいしく炊き上がります。
これらの炊飯方法で炊くと、多くの場合は体内にアブシジン酸を入れてしまっていることになります。
アブシジン酸は発芽に「毒」がついている名前から見ても、健康のためにはよい物質ではありません。
浸水時間をとれば玄米の発芽毒は本当に無くなるの?
玄米の発芽毒であるアブシジン酸は、浸水時間をたっぷりと用意することで、その毒を力を持たない状態(無毒化)にすることができます。
その浸水時間の温度は、夏場であるなどその水の温度が高ければ、早く無毒化できることになるようです。
ただ夏場は気温が30℃を超えてくると、食中毒菌が発生する可能性があるため、冷蔵庫に入れることも必要になります。
そういった冷蔵庫に置く場合や、冬場の寒い時期には浸水時間を長くとる必要があります。
具体的には浸水の温度を積算した時に、100℃になればよいとされているため、基本は12~17時間置いておくとよいでしょう。
尚、発芽モードに入ってくると、水が濁ったりにおいがする場合もあるため、浸水時間の間に1~2度水を変えるとよいですね。
ただしアブシジン酸は、浸水時間を長くとり無毒化できても、毒素が死滅して無くなったわけではありません。
そのため発芽した玄米を乾燥させると、発芽毒の威力は倍増するとも言われています。
どれくらいの浸水時間をとれば玄米の発芽毒を無くせるの?
玄米の発芽毒であるアブシジン酸は、浸水時間を長くとれば無毒化できると言われています。
無毒化するためにとる具体的な浸水時間については、トータルの温度が100℃になればよいので、例えば30℃なら3.2時間でクリアできますよね。
反対に、浸水させている水の温度が低ければ長い時間が必要となります。
このことについて、できるだけ確かな情報を知りたいと思い、あるお米屋さんのおすすめ浸水時間を見ると、やはり積算の温度が100℃となっていました。
また以前にTVで紹介された際には、玄米の無毒化に必要な時間は、12~17時間とされていたようです。
様々な情報から見ても、一晩程度は浸水時間が必要なようです。
夏場は12時間以上、冬場は24時間程度の浸水時間が望ましいと思っておくとよいでしょう。
ただし高温で加熱乾燥をさせている場合には、長く浸水時間をとったとしても発芽をすることはなく、無毒化することもないとされています。
そう考えると、ある資料による米の最低発芽温度の10℃を、できるだけ下回らないようにして、発芽しやすい環境に置くことが望ましいです。
そうなると冷蔵庫でも野菜室などの、比較的温度の高めの場所を選んで、夏場も保存をした方がよいと感じます。
玄米の浸水時間によって栄養価は変わってくるの?
玄米に含まれる発芽毒は浸水時間の中で抜けていくといわれています。
ただし栄養素によっては水溶性ビタミンなどの、水に溶けだす栄養素も存在します。
そうなると浸水させている間に、栄養価が落ちるのではないかと心配になりますよね。
玄米は外皮(ヌカ)に包まれていて、あまり噛まずに体内に入れると、消化されにくい特徴があります。
そう考えると水に溶けだす栄養素としては、不溶性の食物繊維と水溶性のビタミンB群になります。
確かに水溶性ビタミンが水に溶けだすのは残念ですが、元々玄米にはビタミンB群の栄養素は白米に比べても多く含まれています。
ビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6などは4~5倍の量となり、ビタミンB2、葉酸、パトテン酸も白米の2倍の量です。
そのため少し溶けだしたとしても、玄米に栄養がたっぷり含まれていることは変わらないでしょう。
浸水時間の間や炊飯前には水を変えることになるでしょうが、玄米のにおいを無くすためにも必要になり、浸水そのものも発芽毒を抜くためのものです。
そう考えると栄養価に関しては、それほど気にしなくてもよいのではないでしょうか。
浸水時間を置かずに玄米を炊くと身体にどんな症状が出るの?
玄米の発芽毒を始め、ヌカの部分に多少の残留農薬があったとしても、何か症状が出ることはないと見られています。
しかし、玄米の発芽毒のアブシジン酸は、体内に摂り込むと知らない間に体を蝕む可能性があります。
それというのもアブシジン酸は、体内の細胞に存在するミトコンドリアに損傷を与えて、エネルギーを作れなくさせてしまうためです。
そうなると身体は疲れやすくなり、生活習慣病やさらに深刻な病気になる可能性も高まってきてしまいます。
私達が生きていくためには、体を造っている細胞のミトコンドリアが、活性化していることは大変重要になります。
そのため有酸素運動をしたり食事にも注意をして、ホウレン草やピーマンなどの緑黄色野菜に含まれる、アミノ酸やビタミンを摂るようにすることを心がけましょう。
また、浸水時間が長ければ長いほどよい、というわけでもありません。
浸水時間が長すぎたり、気温が高い時の浸水は、食中毒菌が発生してしまうことが考えられます。
食中毒菌が繁殖した食べ物を食べた場合には、腹痛、嘔吐、下痢といった症状が起こりがちです。
これは、アブシジン酸による影響とは別のものです。
そのため、浸水する時は浸水時間の管理や、水の摂り替えには気を配るようにする必要があります。
浸水時間に玄米をぬるま湯につけると発芽毒の力は強まるもの?
玄米の浸水の目的は、発芽毒を抜くために発芽をさせることです。
ある資料によるとそのための最適の浸水温度は、30~37℃になるということです。
そうはいっても、ぬるま湯に浸けることになると腐らないか、それに発芽毒に影響はしないかと心配になりますよね。
確かに温度の面では、気温が高いところに置くことは、食中毒菌の繁殖がないようにするために、避けた方がよいこととなります。
ところが、そういった環境で長時間放置をするのでなければ、ぬるま湯での発芽もよい方法となるのです。
まず玄米の発芽毒は、浸水時間の積算の温度が100℃程度で抜けるとされていて、30℃なら3時間20分でその時間に達します。
玄米の発芽は芸能人の方でも、ヨーグルトメーカーで保温をさせて作っている方がいます。
またお米屋さんのおすすめする方法でも、炊飯器の発芽玄米モードを使い30℃以上で数時間置くやり方もあります。
例えば玄米が発芽するためには、逆に冬場の低すぎる温度では発芽しにくい状態です。
このような理由から、浸水時間に玄米をぬるま湯に浸けることも、短時間であれば悪いことではないと言えます。
そしてぬるま湯で浸水をさせるからと言って、アブシジン酸の発芽毒の力が強まる心配もないでしょう。
玄米の発芽毒の力を無くすため浸水時間を12時間は用意しよう
玄米の発芽毒と聞くと怖い存在に思えますが、浸水時間をたっぷりと用意することでその力はなくなるようです。
その時間は一晩程度ということなので、12時間は最低でもとりたいところです。
そうすることで発芽毒の無毒化とともに、玄米に水も吸収されてふっくらとおいしく炊けることになります。