手作りした味噌は市販のものと違い、とても美味しいものです。
最近では味噌作りキットなどもあり、家庭で手軽に手作りの味噌が楽しめます。
味噌をつくる過程で原材料や作り方など気を遣うところは多くありますが、一番気にかかるのはできあがりの量と保存する容器の大きさではないでしょうか。
できあがり量が決まれば、おのずと必要な材料の量や容器が決まってきます。
ここでは味噌の作り方とともに、その量についても注目していきます。
味噌の手作りをはじめる前に確かめたい仕込道具
家庭で味噌作りをはじめる場合に重要なのは、特別な道具が必要かどうか知ることです。
専用のものが要るからといって、新しく揃える必要はありません。
専門の道具は高価であったり、手入れやメンテナンスに手間がかかりがちです。
家庭にあるもので代用できるのであれば、どんどん使うようにしましょう。
【味噌を手作りするときに必要な道具】
・大豆を炊く鍋または圧力鍋
味噌作りの要、大豆を煮るために使います。
煮る前に大豆を吸水させますが、そのときに2~3倍ほど膨らむので、そのことを見越した大きさの鍋を用意しましょう。
・塩と麹を混ぜる容器
たらいやボウルなど、ある程度大きさのあるもののほうが、塩と麹の扱いが楽になります。
・大豆を潰す道具
味噌の仕込み量が10kg以上になるのであれば、豆ミンサー等の機械のほうが良いでしょう。
大豆がしっかり煮えていれば、マッシャーや手・足でも十分細かく潰すことができます。
手や足で潰す場合には破れにくい厚手のビニール袋を数枚用意し、その中に大豆を入れて押しつぶします。
・はかり
材料を量るときに使います。
家庭用のデジタル計量器で十分です。
・味噌を熟成させる容器
容器には様々な大きさや材質ものがあります。
仕込んでから約1年弱、味噌を入れて保管するものですので慎重に選ぶに越したことはありません。
また、たくさん仕込んだ場合にはそれなりの量になるので保管スペースと容器の大きさに留意して選ぶことも大切です。
・重し
味噌のできあがり重量の2~3割程度の重石を用意します。
石である必要はなく、水の入ったペットボトルでも代用できます。
味噌の保管場所・容器の大きさを左右するできあがり量
味噌作りをはじめるときに、ふと考えるのが仕上がりの量のことです。
1年にどれくらいの量の味噌を使うのか、把握できている人は少ないでしょう。
家族の人数や食事の嗜好によって違いがあります。
年間で使う味噌の量を知る手がかりとして味噌汁に使う味噌の量を元にきめる方法があります。
大まかな量にはなりますが、味噌汁のお椀1杯が160cc、味噌の希釈は10倍がベストなので味噌汁1杯に使われる味噌の量は約16gほどになります。
この量を元に年間の味噌の使用量を決めます。
たとえば味噌汁を1日1杯飲む一人暮らしの人の場合、「16g×365日=5,840g」という計算になります。
計算した量にこだわりすぎることはありませんが、作る量の目安になるので覚えておきましょう。
保管スペースや熟成容器の大きさにも限りがあるので、使う味噌すべてを手作りにすることはあまり現実的ではありません。
家庭で作れる容量を超えた量と労力が必要になり苦痛な作業になってしまうかもしれません。
せっかく作るなら楽しみながら作りたいものです。
ご自分で仕込める範囲での味噌作りを心がけましょう。
味噌を手作りしよう!鍋やボウルなど容器の大きさにも注意
作る量が決まったら、材料をどれくらい準備すれば良いかが決まります。
ここでは手作りしやすく扱いやすい量として、できあがりが約6kgになるように準備します。
【材料】
・大豆 1,300g
・麹 2,000g
・塩 800g
【作り方】
①大豆をよく洗い、一晩(18時間以上)水につける。
まず大豆をしっかり洗います。
見た目にはきれいに見えますが、米を研ぐようにしてしっかり洗うと、水が濁るほどの汚れが出ます。
洗い水が透明になるまで洗ってから大きめの容器におよそ大豆の3倍量の水を張り、しっかり吸水させましょう。
②大豆を柔らかくなるまで煮る。
しっかりと芯まで吸水させた大豆は、乾燥大豆の約2~3倍の大きさになります。
この吸水をしっかりしておかないといくら煮ても芯が残り味噌の出来に影響が出ます。
「ひたひた」くらいの水で、柔らかくなるで煮ていきます。
鍋で煮ると灰汁が出るので、そのつど取り除きます。
煮ている間は鍋のそばを離れないようにしましょう。
圧力鍋なら20分ほど、大なべを使う場合は弱火で3時間ほど煮ます。
煮上がりの目安は、親指と人差し指でつまんで潰せるくらいの柔らかさです。
③煮上がった大豆を滑らかになるまで潰す
大豆が熱いうちに潰します。
ビニール袋に入れてビンや手、足を使って粒が見えなくなるまでよく潰します。
大豆の量が多いほど力の要る大変な作業なので、大量に仕込む場合は人手を用意して手伝ってもらうか機械を使うほうが効率がよさそうです。
④塩きり麹を大豆に混ぜ込む
潰した大豆に、あらかじめ塩と麹を混ぜた「塩きり麹」を混ぜ合わせます。
このときに混ぜ方にムラがあると、麹が持つ酵母が働かない部分ができてしまい熟成する間に痛んでしまうので、しっかり混ぜておくようにします。
混ぜ合わせる硬さの目安としては「耳たぶ」または、「小指がすんなり差し込める」くらいの硬さに仕上げます。
⑤保存容器に詰める。
味噌は、空気に触れ続けると痛んだりその部分だけ変質してしまうので、保存容器に詰めるときはできるだけ空気を抜いて詰めるようにします。
両手で団子状に丸め容器の底に押し付けるようにして詰めていきます。
使用する容器の大きさは味噌が入っても余裕があるものを選びます。
味噌を詰めた後重石をのせたり、熟成される間にタマリと呼ばれる水分が出るので、あまり余裕がない容器だと仕込み後の扱いに苦労します。
すべて詰め終わったら、表面が空気に触れないよう布やラップで塞ぎます。
その上から中蓋をして、味噌のできあがり重量の2~3割程度の重石をのせます。
何でできてる?容器の大きさは?保存容器の特徴を知ろう
味噌を手作りするのに欠かせないものが、仕込んでから熟成させる間味噌を入れておく保存容器です。
その種類は、素材や容器の大きさなど、実に豊富でどれを選ぶか迷ってしまうほどです。
まずは容器の素材の特徴を知り、ご自分や家庭環境にあったものを選びましょう。
●プラスチック製の漬物樽
5Lの量が入るもので容器だけの重さが400gほどと、とても軽いつくりになっています。
特徴は、軽いこと、口が広く内容物が取り出しやすいことが挙げられます。
ただし素材がプラスチックなので匂い移りが心配です。
また塩分を多く含む味噌を長期間保存するので、容器自体が変質する可能性があるのがデメリットです。
●広口ガラス瓶
ガラス瓶は透明なものがほとんどなので、光の影響を受けやすくなりますが、紙や布で覆うと多少軽減されるでしょう。
常に明るいところへ置くのでなければ、熟成していく味噌の様子が観察できて、面白いかもしれません。
また、匂いがつきにくいのも良いところです。
しかし、瓶という性質上広口といっても限度があるので、仕込みにくいと感じるかもしれません。
●木製の樽
味噌蔵などでは現在でも木製の樽が使われています。
家庭向きの程よい大きさのものも市販されています。
使うほどに木の部分に菌が住み着き、味わい深い味噌ができるようになります。
ただし、木を使った容器は、温度や湿度に影響されやすい素材なので管理が難しい容器でもあります。
●陶製の容器
味噌作りのほか、梅干や糠床としても利用される容器です。
外部の温度の影響を受けにくい素材で、味噌作りにも最適です。
容器の劣化はまず起こらないので長くつかえる容器でもあります。
ただ、陶製ゆえに重く移動させるのに力が必要です。
●琺瑯の容器
ガラス質の上薬を掛け、高温で焼き付ける琺瑯の容器は味や匂いが付きにくく、内容物の成分を劣化させないメリットを持ちます。
また塩分にも強いため、容器自体の劣化も起こりません。
琺瑯容器の中にはバルブが付いた製品もあり、空気を入れずに保管することにも向いています。
陶製ほどではないですが、それなりの重さがあります。
また、1度ガラス質の部分が傷つくと、中の金属の部分が錆びてしまうこともあります。
手作り味噌はどこに置く?容器の大きさに合った保管場所
味噌は常に発酵しているため、保管方法や保管場所に気を使う必要があります。
丁寧に仕込みをした味噌でも、手作りした味噌は保存料が入らないため、保存法を間違えるとあっという間に痛んでしまいます。
そうならないためにも、仕込んだ味噌をどのような場所に保管するのか、良く考えなければなりません。
正しく保管して、無駄なく使う工夫をしましょう。
味噌に付くカビを防ぐためには、どんな保管場所を選べばよいでしょうか。
味噌を仕込むとなると、それなりの量になるので場所に迷うかもしれませんが、光の変化が少なく涼しい場所であれば十分保管可能です。
床下収納がキッチンにある場合にはそこを利用するのも良いでしょう。
ただ、夏場に気温が上がったり湿度が高くなるような場所に置くことは絶対に避けなければなりません。
高温、多湿な場所では味噌の発酵が進み過ぎてしまうからです。
夏場の保管は冷蔵庫が適しています。
年間通して、一定の温度を保つためカビが生えにくく安心です。
さらに、発酵を遅らせたい場合(多量の味噌が手元にあるなど)には、冷凍庫もおすすめの保管場所です。
冷凍することで発酵が一時的にゆっくり(もしくは止まる)になるので、長い期間手作り味噌を楽しむことができます。
冷蔵・冷凍庫を保管場所とするなら、あらかじめスペースにあった容器の大きさで味噌を仕込むのも良いでしょう。
味噌の熟成中も手間を惜しまない!待つ期間も手作りの醍醐味
仕込み直後から味噌の発酵は始まっています。
時間が経つにつれ、見た目や味の変化が見られるのは、味噌を手作りするうえで、ひとつの楽しみともいえます。
一般に味噌の食べごろは、仕込んでから10ヶ月ほど経つ頃といわれます。
しかしこれはひとつの目安で、保管する環境や仕込みのときの材料の状態などで少しずつズレが出ます。
ご自分で仕込んだ味噌の食べごろを知るには、普段から味噌の様子を確認する必要があります。
確認するときのポイントをまとめてみます。
・色合いが茶褐色
・味噌本来の風味とコクがある
・濃い味噌の香りがする
これは、年が明けて2月ごろ仕込んだ味噌をその年の秋から冬に開けてみたときの特徴です。
風味やコクは、少し手にとって舐めてみて確かめてみましょう。
また、食べごろを迎えるまでにも、時々蓋を開けて容器の中の様子を確認します。
カビが付いていたら取り除き、タマリと呼ばれる水分が出ているときには、味噌にタマリを混ぜ込む作業をしておきます。
再度蓋をするときには、しっかり密閉することも忘れずにしましょう。
容器の大きさによっては、「天地返し」をすることもあります。
仕込む味噌の量が多い場合には、容器の底部分と蓋の付近の熟成具合を均一にするため、1度別の容器にひっくり返す作業をします。
手間をかけ丁寧に作る味噌は格別の味
手作り味噌の仕込み方や量、保存容器や保管場所の選び方、熟成期間で確認することなどについて、ご紹介してきました。
仕込みや熟成中の手間を惜しまず、丁寧にしただけいい味噌になり、より美味しくなるでしょう。
また、完成までに時間のかかる食品でもあるので、それを待つ楽しみもあります。
家族総出で作業するのも楽しそうです。
この記事を読んで、味噌を手作りする楽しみが少しでも生まれたら幸いです。