無農薬で作られた野菜を目にする機会が多くなっています。
お米でも、無農薬のものが出てきていますよね。
しかし、それがどのようにして作られているのかご存知でしょうか?
今回は、通常のお米の作り方と比較して、無農薬でお米を作るための工夫や病害虫対策についてお伝えします。
農薬を使わずに作られたお米や野菜を選ぶメリット
無農薬米や野菜を安全だと思って購入することが多いと思います.
でも無農薬米や野菜にはメリットもデメリットもあるので、それを知って購入するのがよいでしょう。
無農薬の米や野菜の作り方を説明する前に、まず無農薬の米や野菜のメリットについて説明します。
無農薬の米と野菜は、農薬を使用せずに栽培された米や野菜を指します。
農薬を使用して栽培された米や野菜にはどうしても農薬が残留します。
その米や野菜を食べて体内の中に入り、さらにその量が多くなっていくにつれて、内臓など様々な器官が汚染されていきます。
そのため小さなお子様や体の弱い人などには、非常に不安になると思います。
一方、無農薬で栽培された米と野菜は、農薬が残ることがありません。
この結果、体に農薬が入らず、健康な体にすることができます。
また、無農薬により栽培された米と野菜は本来の味が出て、非常に美味しくなります。
野菜嫌いのお子様でも無農薬野菜なら食べられるというお子様も多くいるくらいです。
このように無農薬米と野菜には、健康と美味しさのメリットがあるのです。
日ごろ農薬を気にせずに食べている方は、無農薬栽培の米と野菜を考えてみてはどうでしょうか。
無農薬で食の安全性が向上し、広まっていってほしいと思います。
農薬を使わずに作られたお米や野菜のデメリット
無農薬の米や野菜の作り方を説明する前に、ここでは無農薬の米や野菜のデメリットについて説明します。
まず無農薬の米や野菜は、コストが高いということです。
無農薬でお米や野菜を栽培する場合、いろいろな病気を防ぐためにさまざまな注意をして栽培する必要があります。
その為、手間をかけることが多くなり、その結果コストが掛かることになります。
ただびっくりするほど高くなるという事は無いので、普通に栽培されたお米と比較して購入を検討してみてください。
またコストはともかく、味がどういうものか知りたいという方は、レストラン等でも無農薬野菜や無農薬米等を提供している所もあるので、試してみると良いでしょう。
さらなるデメリットではありませんが、無農薬のお米や野菜は栽培時に農薬を使っていないことという定義があります。
しかし無農薬のお米や野菜を栽培する前に農薬を使って栽培していた場合、土地自体に農薬が残留している可能性があります。
こうした土地で栽培された無農薬のお米や野菜には、農薬を含んでしまう危険もあり、それが体内に入ってしまうこともあるのです。
無農薬が体によいのですが、残留農薬についてはよく考えておくことが大切です。
通常のお米の作り方
無農薬のお米の作り方の前に、通常のお米の作り方を説明します。
4月 筋まき、稲苗育て
土、種、水量などを調節して種まきの機械を通すと、苗箱が完成します。
苗箱を育苗ハウスの中に敷き詰め、シートを箱にかけ、そのまま1か月程日に当てながら育てます。
筋まきをしたお米が発芽して成長してくると一面緑色になります。
5月 田んぼにもみがらを撒く
田んぼにもみ殻を撒きます。
お米にとって最も必要な栄養分は実はお米自身が持っており、このもみがらを肥料として使用します。
またこのもみがらにより、美味しくなるのです。
5月 田んぼを耕す
撒いたもみ殻と一緒に、田を耕します。
5月下旬 田植え
田植えは、寒い地域などでは5月の下旬、山間地や棚田だと6月頃に行います。
6月下旬~7月 水管理【溝切り】
溝切り機(エンジンのある一輪車のような溝切り専用機械)を使って、稲の列2~3メートル間隔で15cm程度の深さの溝をつけます。
溝切りは、稲の根が土中で肥料や水分をよく吸収できるようにし、伸び伸びと生長させるためのものです。
土中の空気や温度の調節や、有機物の分解によるガスを抜くためには水管理が必要です。
この水管理をしやすくするのが溝の作成なのです。
9月下旬~10月 収穫・稲刈り
この時期稲刈りをして収穫します。
無農薬米の作り方①農薬を使わない
それでは無農薬によるお米を作り方を説明していきます。
無農薬と聞くと、お米の病気が気になります。
農作物に何故病害虫が発生するのでしょうか。
自然の生態系は、いろいろな動植物の食物連鎖や有機物が循環することで成り立っています。
従って、ある特定の虫や病気に偏って大発生することはありません。
一方田んぼや畑は、単一の作物を栽培しているため、特定の虫や病気が発生しやすいのです。
これが、農作物の病害虫です。
この病害虫をあの手この手で防いでいるのです。
手っ取り早く防ぐのは農薬です。
農薬を使用しない場合には、次のような工夫が要ります。
1.病害虫の卵や菌を入れない
2.病害虫が発生する環境にしない
3.病害虫に強い農作物を作る
4.病害虫に農作物がやられる期間を少なくする
水稲では、無病の良い種で健康で丈夫な稲を作り、田植えを遅くしたりして、いろいろと栽培に工夫をしています。
しかし、いもち病が多く発生する年は、収穫量が通常の7割位まで落ちるようです。
無農薬米の作り方②アイガモ農法
無農薬のお米の作り方として、アイガモ農法という方法もあります。
水田にアイガモのヒナを放して、虫や雑草などを食べさせるのです。
農薬の1つ除草剤は10アール当たり約3千円程度で、1度散布するとその年は草が生えません。
そのため手っ取り早く除草剤を使うことが多いのです。
一方、無農薬栽培では除草剤を使うことはありません。
そこで、アイガモを使用したり、手作業でしたり、動力除草機を使用したり、米糠を撒いたリといろいろな方法で除草するのです。
アイガモ農法はよい方法ですが、デメリットもあります。
1.キツネ、イタチ、カラス等の外敵からアイガモを守らねばなりません。
電気牧柵や網を田んぼの上に張ったりなどする必要があります。
2.アイガモのヒナを購入するために費用が掛かります。
ヒナを買うと10アール当たり、約1万円程度必要です。
アイガモ農法では田植後10日位で、小さなヒナを放します。
ヒナなので、硬い稲は食べきれず、柔らかい雑草を食べたり、足のみずかきで田んぼの土を撹拌することで、雑草を防ぐのです。
アイガモが成長し、稲に穂が出てくると、稲の穂を食べてしまいます。
その時期には稲も生長して、雑草も生えにくくなっているので、アイガモを引き上げます。
しかし、引き上げて大きくなったアイガモは、次の年は使用できません。
そしてアイガモが多くなると、処分しなければなりません。
田んぼを耕さない無農薬米の作り方
無農薬のお米の作り方には、耕さない田んぼで作る方法もあります。
この方法は、収穫の終わった秋から準備します。
冬の期間は、田んぼに水を張り、微生物を活性させて栄養を蓄えさせます。
前の年の切り株をそのまま残して田植えをします。
その切り株は微生物によって分解されて、土は耕した状態と同じ状態になるのです。
通常の田植えは、稚苗を数本ずつ植えていきますが、耕さない田んぼでは、成苗を1~2本ずつ植えていきます。
田んぼを耕さないと、次のようなメリットがあります。
1.従来からの生きものが増加する
2.土壌の変化から水持ちがよくなる
3.酸素を多く含むようになる
4.水が綺麗になり、お米が美味しくなる
残した切り株から藻類が増えてきて、雑草を抑えてくれるので、肥料・除草・殺虫が必要ないのです。
2月頃の氷の下では、イトミミズやユスリカなどが多く繁殖します。
それを餌にするカエルやクモが春の早い時期から現れてきて食べるので、苗が虫から守られます。
一方で、土を耕さないで栽培することへの反発や抵抗もあるようです。
草取りを何度もして栽培する人は”精農家”とよい評価を受けます。
また農協などの指導で、農薬・肥料・トラクターを使用することが当たり前の方法と思っている農家も多いです。
農薬や肥料、トラクターのメーカーや販売店などの仕事の関係から、抵抗は大きいようです。
無農薬でお米を作るには日々の工夫と努力が不可欠!
ここまで、通常のお米の作り方と比較して、無農薬でのお米の作り方を紹介しました。
お米が作られる過程を初めて知った方もいらっしゃるかもしれませんね。
農薬を使わないことは消費者にとっては理想ですが、生産者の立場に立つと、かなり大変なものだと思います。
無農薬のお米や野菜を手にするときには、生産者の方への敬意を忘れずにいたいですね。