健康に良いと評判の玄米ですが、一部で毒があるといわれています。
この毒をなくすには、長時間浸水させると良いようです。
どうして浸水させると毒がなくなるのか、そもそも体に良い玄米になぜ毒があるのか、いったいどんな毒で、ホントに悪影響を及ぼすのか等々を、今回はしっかりと検証していきたいと思います。
体に良い玄米に毒があるってどういうこと?お米の浸水と関係があるの?
体に良い筈の玄米なのに、「毒」があるなんて驚きですよね。
ただ、毒といっても毒キノコやフグ毒のように、食べたら命にかかわるキケンがある、というわけではありません。
ヒトの体にとって、多少ネガティブに働く可能性がある、というレベルです。
玄米をはじめとした穀物は、アブシジン酸という植物性ホルモンを分泌しています。
アブシジン酸は発芽抑制因子で、老化を進めたりストレスを感じたりすると分泌されるといいます。
また種子が鳥獣に食べられてしまったり、乾燥に負けたりしないよう、環境から身を守る役目もあります。
このアブシジン酸がヒトの体内に蓄積されると、細胞のミトコンドリアの働きを阻害し、エネルギー生産を低下させるといいます。
そのため倦怠感を感じたり、活性酸素が増えてガンや老化が進行したり、免疫力が低下して病気にかかりやすくなったりするといわれています。
しかし、こうした影響が現れるのは、アブシジン酸を生で摂取した場合です。
玄米を生で食べない限り、大きなダメージはないと考えられます。
とはいえ、それでもやはり気になりますよね。
実は、玄米を炊く前にお米を浸水させることが、このアブシジン酸の毒と大きな関わりがあるのです。
長時間の浸水は玄米の毒を無毒化させるためだった!
玄米の炊き方で大切なのは、炊く前にしっかりと浸水させることといわれています。
玄米は外皮が硬く、水を吸収しにくいため、柔らかくふっくらと炊き上げるには、できるだけ長く水に漬けておいたほうがいいのです。
ところがこの浸水、水をたくさん含ませるためだけに行っているのではありません。
アブシジン酸の毒を無毒化させるためでもあるのです。
長時間浸水させると玄米は発芽します。
発芽すればアブシジン酸の役目は終わるので、無毒になるのです。
ですから、浸水させても発芽しなければ意味がありません。
発芽させるには最低でも12時間以上、できれば17時間の浸水が必要といいます。
かなり長時間ですよね。
毎日炊くのはちょっと大変です。
出来るときにまとめて炊いておいて、1食分ずつラップにくるんで冷凍保存しておくのがおすすめです。
玄米の毒を無毒化させる長時間浸水のメリットとデメリット
玄米を炊く前に長時間浸水させて発芽させることで、アブシジン酸の毒が無毒化出来ます。
ほかにもいくつかメリットがあります。
たとえば、水分を含んで柔らかく炊けたり、発芽させることで栄養価が高まったりします。
特に、ストレスに打ち勝ち、頭の働きを良くするといわれるギャバは、発芽させると約3倍も増えるといいます。
一方、長時間浸水させることで、下記のようなデメリットもあります。
・水がにごる
・腐敗しやすい
・雑菌が繁殖しやすい
・糠臭くなる
こうした問題に対しては、次のような対策をとるといいでしょう。
・浸水中は何回か水を取り替える
・冷蔵庫に入れておく
・圧力鍋などの、完全に密閉されて雑菌が繁殖しにくい容器で浸水させる
・ぬるめのお湯に浸水させて、早く発芽させる
特に夏場は傷みやすいので、冷蔵庫保管は必須です。
また、圧力鍋に玄米とぬるめのお湯を注いで漬けておくと、約6時間で発芽します。
時間短縮で腐敗を防ぐ方法としておすすめです。
いろいろ工夫してお試しください。
玄米の毒はアブシジン酸の他にもあるって本当?
玄米にはミトコンドリアの働きを阻害するアブシジン酸がありますが、ほかにも毒があるといいます。
それがフィチン酸です。
フィチン酸にはキレート効果といって、水銀など有害な金属物質と結びついて、体外に排出させるという働きがあります。
このキレート作用がミネラルにも及び、体外に排出させてしまうため、体のミネラルが不足してしまうのです。
フィチン酸の毒に関しては、ミネラル排出は認められておらず、全く問題ないという説もあります。
むしろ解毒作用のほうが顕著で、積極的に摂ったほうが良いともいわれています。
しかし、仮にフィチン酸の毒があったとしても、アブシジン酸同様、玄米を浸水させることで無毒化できます。
浸水による発芽の過程でフィチン酸がつかんでいたミネラルを離し、各々が独立して体内に取り込まれ、作用するようになります。
無毒化効果に限らず、発芽玄米にすることで玄米はさらにパワーアップし、しかもふっくら柔らかく炊けます。
玄米を炊くなら、浸水は欠かせない工程ですね。
心配ご無用!玄米の毒は本当は毒じゃない
フィチン酸はともかく、アブシジン酸に関しては、玄米の毒といわれています。
しかし、アブシジン酸はもともと加熱されることで消失する成分です。
玄米は加熱されたうえで食されるので、その時点で毒はなくなっていることになるのです。
にもかかわらず、玄米の毒性が強調されるのは、ちょっと怪しさが感じられます。
本当に玄米に毒があるのなら、そもそも食用として販売されないはずです。
国民の食と健康を管轄する厚労省も、玄米の毒に関しては何ら言及していません。
ということは、玄米の毒といわれるものに関して、神経質になる必要はないとも考えられます。
確かに、浸水させれば水分を含むため、柔らかくふっくら炊けます。
玄米をおいしく炊くために必要な工程でしょう。
しかし、長時間浸水で発芽させないと無毒化できないというのは、ちょっと違うといえます。
玄米がご飯になればアブシジン酸はなくなるのですから、発芽玄米にしようがしまいが関係ありません。
それにアブシジン酸がミトコンドリアを阻害するというのも、種子を食べようとする鳥獣に対して、と考えらえます。
ヒトに影響を及ぼすほどのことはなく、万が一あったとしても鳥獣のように生で食べてはいないため、毒性が発揮される心配がないのです。
そのため玄米の毒に関しては、気にする必要はないといって良いと思いませんか。
毒に関係なく玄米は浸水させたほうがおいしく炊ける!
アブシジン酸やフィチン酸があっても、玄米は私たちヒトにとって決して毒ではありません。
それでも玄米にとって、浸水は必要な工程といえます。
ふっくら柔らかく炊き上げるためにです。
水分を出来るだけ多く含ませるために、浸水前には拝み洗いをするといいでしょう。
玄米を両手に取り、こすり合わせるようにして洗う格好がまるで拝むようだから、「拝み洗い」といわれます。
拝み洗いをすると玄米の外皮が傷つくため、その傷口から水分が浸透しやすくなるのです。
玄米をまず水で軽く洗い、上に浮かんでくるもみ殻のゴミや不純物等を取り除きます。
この作業を水を取り替えながら2~3回行い、それから拝み洗いをします。
拝み洗いをした後、浸水させます。
時間は長いほうがいいですが、発芽にこだわらなくても大丈夫です。
少なくとも6時間、できれば一晩浸水させておけばOKです。
毎日のルーチンワークになるよう、無理のない作業を行いましょう。
玄米の毒は気にせず、浸水はしっかり!
いかがでしょうか。
結局玄米の毒と呼ばれるものは、ヒトにとってはそれほど気にしなくていいものだと判明しました。
それでも炊飯前の浸水は大切です。
ご飯がふっくら柔らかく炊きあがるからです。
一晩水に漬けておくだけでいいので、玄米炊飯の手順の一つとしてルーチンワーク化しましょう。