麦味噌をご存知ですか?
九州や愛媛県、山口県ではメジャーな味噌の一種です。
日本では各地でその地方独自の味噌が広まっているため、もしかしたら、麦味噌の入った容器をスーパーなどで見たことがないかもしれません。
食べたことがないという方は、麦味噌を試してみませんか。
今回は、その麦味噌を2kg自分で作ってみるレシピだけでなく、ルーツやちょっとした疑問を調べてみました。
麦味噌のルーツと現代の麦味噌
麦味噌のルーツは、西暦713年、つまり今から約1300年前にあったといわれています。
証拠となるものは、大当寺に収められている「大日本古文書」の一文と国分寺にある「味噌天神」とであります。
もうひとつ別の話として、刺客に追われていた菅原道真が農家に立ち寄り、水を求めたところ、当時の容器(おそらく壺だと思われます)から、焼き味噌に湯を足して差し出されたそうです。
このことが結果として道真の身を刺客から隠し、救ったらしいのです。
農家にも味噌が常備されていたということは、大昔から味噌は日本の食卓に浸透していたのですね。
この時代は和食しかなかったので、一般家庭であっても2kgだけの麦味噌では足りなかったはずです。
各家庭、あるいは村などで多く保存されていました。
昔は麦味噌は全国各地で作られていたのですが、現代では九州を中心に食されています。
古い時代から伝わる麦味噌、その製法は熊本県の五家荘(ごかのしょう)での作り方が今もなお使われています。
麦こうじを大豆と塩で9月に仕込み、1~3年熟成させるのです。
この製法が、今も九州に伝わる自家製麦味噌製造法です。
九州の麦はほとんど、ハダカ麦を使っています。
配合割合は麦こうじ10に対して大豆4が一般的です。
近年では、麦味噌と米味噌を合わせた「合わせ味噌」も売られています。
「米味噌は美味いがさっぱりして、ちょっとものたりないから、麦味噌のしっとりとしていてコクのある味を合わせたらどうか?」という声に合わせて作られました。
麦味噌が九州などで使い続けられている理由
平安時代から、麦味噌というと「田舎味噌」といわれることもありましたね。
田舎味噌というとどんな感じだと思いますか?
しょっぱくて赤い色をイメージされる方も多いと思います。
確かに赤味噌もありますが、京風の白味噌もあります。
色が白いのは平安時代に島流しにあった皇家の方が作らせたなど、いくつか説はあります。
では、味はどうでしょうか?
試しに麦味噌2kg容器に作ったとして、味見してみましょう。
実はしょっぱいのではなく、ほんのり甘いのです。
このほんのり甘い麦味噌が、九州などで生き残った理由を考えてみましょう。
九州、山口、愛媛などは平地が少なく、米が作りにくいことも麦味噌が今も作り続けられている理由と考えられます。
他にも、大豆独特の香りが好まれなかったのが理由の1つです。
2つめは、大豆を使用することで塩分を多く使うため、しょっぱくなりすぎるのが苦手とされています。
3つ目は、魚介類を常に食べていたことから甘い多糖タイプの味噌が、九州の地域の人達の作る料理の芳香に好まれていたのが理由です。
このように、いくつかの理由が重なって麦味噌が使われ続けているのですね。
ではここで、麦味噌が使われている代表的な料理を2品紹介します。
熊本名物、からしれんこんです。
じつは、からしれんこんに使われているからし味噌の味噌は、麦味噌なんですよ。
もうひとつは、もつ鍋です。
こちらは福岡県の郷土料理で、スープに溶く味噌は、麦味噌です!
2品とも、東京でも当たり前のように食べられているため、どこの特産か知らなかった方もいるかもしれませんが、これで身近な味噌に感じられたのではないでしょうか?
味噌2kgの容器があまり見られない理由は?
麦味噌は関東ではあまり食べられていないため、容器入りの麦味噌2kgは関東ではあまり見かけませんよね。
しかし麦味噌に関わらず、スーパーなどで手に入る味噌は大体が1㎏以下の商品です。
現在では核家族や少人数の家族が増えたため、スーパーに並んでいる味噌容器は750g入りなどが一般的になりました。
もし、2kgの容器の味噌を買ったら、どのような問題が起きるか、想像してみましょう。
家族の人数にもよりますが、賞味期限内に使い切れずにカビが生えてしまうことが考えられます。
最近では食生活の多様化により、食事の際の汁ものというと味噌汁だけではありません。
洋食にはコンソメスープ、中華にはシャンタンスープ、韓国風キムチスープなど、さまざまなスープの素が販売されています。
食事に合わせてさまざまなスープが楽しめるため、味噌汁を毎日飲まないという人も増えています。
そのため、味噌の消費が減っているといわれているのです。
しかしそれでも、実はひそかなブームになっているのが、「手作り味噌」です。
麦味噌だけでなく米味噌の手作りセットが人気を集めているのです。
1㎏や2㎏などの少量から作れて、容器付きのセットもあります。
手作り味噌は作ってみるとその面白さからハマってしまうと評判です。
次項では、麦味噌の作り方をご紹介します。
麦味噌2kgを容器に詰めて作ってみよう!
では麦味噌を作って2kg容器に詰める所までを簡単にご紹介します。
もし作るのであれば、ネットショッピングサイトなどを利用して、手作りキットを買うことをお勧めします。
そこには細かく丁寧に説明が書かれています。
今回は、その一部工程を簡単に記してみます。
約2.5kgの麦味噌の作り方です。
【材料】
・大豆 500g
・乾燥麦こうじ 750g
・塩 300g(塩分約10%)
【その他、準備するもの】
・みそかめ、またはホーローポット(大豆500gの場合5.4ℓのものを用意)
・大きめの鍋(ない場合には数回に分けて大豆を煮る)
・鍋、またはボウル(アルコールで殺菌しておくこと)
・ざる
・マッシャーなどの大豆をつぶす道具
・重石用の塩700g(袋に詰める)
・ラップ、新聞紙、ひも(カメを覆うために使う)
【作り方】
①大豆を洗い、大豆の3~4倍以上の水に一晩寝かせます。
②大豆を3~5時間煮ます。
③途中アクをとり、湯を足しながら指先でつぶせるくらいになるまで煮ます。
④熱いうちに大豆をざるにあげ、煮汁を切ります。
⑤切った煮汁は600mlほど取っておいて、煮汁300mlは熱いうちに塩35g(分量に載せたのとは別)を足し、種水を作ります。
⑥ボウルに乾燥麦こうじをいれ、30℃以下のぬるま湯を250~300mlを加えてかき混ぜ、30分程おいて吸水させます。
⑦この後は、大豆をつぶし、塩と麦こうじを大豆と混ぜ合わせ、味噌玉と呼ばれるダンゴ状にしたものをカメに詰めて、つぶして、重石をのせて封をします。
上記でご紹介したレシピは、大まかな作り方です。
細かい作り方は、家庭専用の麦味噌作り方キットなどを参考にしてくださいね。
麦味噌2kgを容器に保存する方法・注意点
麦味噌も他の味噌同様、時間の経過と温度の影響をうけて、色が濃くなる現象が起きます。
色が濃くなる現象のことを、「着色」または「褐変(かっぺん)」といいます。
麦味噌2kgを容器に保存するときは、冷蔵庫、または冷凍庫で保存しましょう。
麦味噌だけでなく、味噌一般は冷凍庫に保存しても固まりません。
少し固くなるだけです。
ポイントとしては、ラップで空気に触れないようにして、ふたを容器でしめることです。
これでカビが生えるのも防げます。
もし褐変(かっぺん)してしまったら、それはそれでおいしく食べられるレシピもあります。
【味噌チャーハン】
普通のチャーハンを炒めるときに、褐変(かっぺん)した味噌を大さじ1加えるだけでいつもと違う味になります。
【味噌の生姜焼き】
生姜焼きのときに作る調味料の中に、だしを加えていない褐変(かっぺん)した味噌を大さじ2杯ほど加えます。
【ツナ味噌】
ツナ缶(オイルも使います)に褐変(かっぺん)しただし入り味噌80g、砂糖40g、鷹の爪1本を加えるだけで、ビールのおつまみになります。
1つ、留意点を加えるならば、麦味噌は米味噌より少し甘いです。
甘いのが苦手は方は味噌の量を調整してください。
米味噌と比べて、そのほんのりとした甘さを味わうのも悪くはないかもしれません。
麦味噌2kgを作ったら透明な容器で観察!夏休みの自由研究にしよう!
もし麦味噌2kgを作るのなら、是非子どもと一緒に体験してみましょう。
今の時代ではなかなか体験できないことですし、子どもが自分の食べているものや、作り方、または何かを作ることに興味を持てるかもしれません。
例えば、自由研究の課題に麦味噌を作って持っていくというのはどうでしょうか。
夏休みという短い期間では十分に味噌は熟成できませんが、作った味噌を透明な容器に入れておけば、毎日の変化を観察できます。
味噌は、熟成によって色合いが変わります。
毎日変わっていく熟成具合は、まるで生き物を観察しているように面白いものです。
作り方や味の変化、スーパーで売っている味噌とどう違うのかなどをまとめて、色合いの変化を写真に収めて記録すれば、立派な自由研究になりますね。
麦味噌2kg作ったら小分けにして!
麦味噌は案外関東でも、合わせ味噌として使われていたのは、若い方はあまり知らないかもしれません。
しかし、これによって麦味噌はより身近な食べ物だとわかりましたし、保存容器も他の味噌と大して変わらないこともわかりました。
自家製の麦味噌を2kg作った際には、小分けにして保存するのがお勧めです。
2kgの容器は、製造中には使いますが、家庭では一気に使うことはないと思いますので、冷凍庫に保存した方が長持ちします。