アメリカでは、日本以上に肥満や生活習慣病が問題になっています。
肥満の人数も、レベルも日本と比較にならないほどで、そのために色々な取り組みを始めています。
例えば、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸が、心臓疾患の原因になるとして2018年6月に使用禁止になりました。
ダイエットのための雑誌やテレビ番組も多く、アメリカでは食事改善の一つとして和食を食べる人も増えています。
それではアメリカのダイエットと生活習慣病の改善に勧められている和食による食事改善についてご紹介しましょう。
ファストフードの広がりとアメリカの肥満問題
1980年代、日本はバブル期を迎えました。
1950年の終わりから始まった高度成長期と並び、日本ではそれ以前の家庭にはなかった、様々な文化が入ってきました。
例えば、1985年には宅配ピザ1号店が東京の恵比寿にできます。
それまで、ピザというと、どこでも食べることができるものではなく、都内の一部のイタリアンレストランでしか食べることができませんでした。
今や全国にあるバーガーショップも、どんどんと広がっていったのは1970年代後半になってからです。
日本では昭和の終わりまでは一般的な家庭の多くは和食が中心でした。
当時の日本人のトランス脂肪酸摂取量は、欧米の人の摂取量の10分の1以下で、生活習慣病の問題といったら、塩分の摂りすぎくらいでした。
欧米でも今のように肥満が問題になるようになったのは、20世紀の終わりになってからです。
日本よりは早く、ピザの宅配やハンバーガーショップの普及、炭酸飲料の広がりというのが始まりましたが、1970年代より前には、今のように社会問題になるほど大勢の肥満者はいませんでした。
ファストフードの広がりは、アメリカでも肥満者の数を増やす原因となっています。
2010年代後半アメリカでの肥満率は30%以上、国民の1億人近くが肥満と言われています。
この数は日本の10倍以上と言われています。
そして、18%以上の子どもが肥満です。
1990年代のアメリカで肥満者数は3千万人と言われていましたが、この25年の間に3倍以上に増えています。
アメリカでも2000年代に入ってから、肥満は国民の健康にも社会的なイメージも良くないと、ダイエットのために食事改善をする人が増えています。
その中の一つが、2018年に始まったトランス脂肪酸を含む食品の販売を規制することです。
過度の肥満が多いため食事改善でダイエットをしたいアメリカ人
ダイエットをしたい人の中には、まずは運動を取り入れる人がいます。
しかし、過度の肥満になってしまうと、運動自体ができないこともあります。
アメリカの肥満率は全国民の30%以上です。
現在、日本人の20代女性の平均身長は160cmで体重は53kgです。
今までは日本人は小さいと言われていましたが、最近ではアメリカやヨーロッパの女性とあまり変わりがなくなっています。
欧米の女性の平均身長は162~163cmです。
しかし、フランス人女性の平均体重は62kg、そしてアメリカ人女性の平均体重は74.5kgになっています。
身長はわずか数センチしか違いがないのに、日本人と欧米人の体重差は10kg以上になります。
日本では100kgを超えたら、かなりの肥満と言われますが、アメリカ人の中には100kgは普通という人もいます。
しかし、100kgの体重を抱える人は、急激な運動をすると心臓に負担がかかってしまいます。
足腰にも負担がかかりますので危険です。
肥満があると血管の病気を持っていることもあり、アメリカでは生活習慣病患者の数も多くいます。
アメリカの糖尿病患者数は人口の9%にもなり、心臓病や脳卒中で命を落とす人の割合は38%と言われています。
しかし、アメリカ人の中には、肥満でも支障があるわけではないと、あまり気にかけない人もたくさんいます。
肥満の親の中には、子どもの肥満を気にかけない人も多く、子どもの肥満も増えて、国中で悪循環を起こしています。
しかし、アメリカ全般ではここ30年ほどの間で、和食を摂り入れる食事改善をすすめることで、生活習慣病による死亡率がかなり減少しています。
ダイエット目的でも、和食を取り入れた食事改善をしている人が増えています。
以前はファストフードというと、ハンバーガーやホットドッグだった人が、おにぎりを食べるようになっています。
ダイエットしたい!アメリカの食事改善の難しさ
和食による食事改善意識が高まっているとはいえ、まだまだアメリカ人全体が受け入れているわけではありません。
皆さんはアメリカドラマをご覧になりますか?
アメリカのドラマでは、色々な食事風景を見ることができます。
朝食は「街中のカフェでカップケーキ」「サンドイッチとコーヒーを購入する」「宅配ピザのLサイズ並みのものをテイクアウトや宅配で注文する」というシーンがたくさん出てきます。
アメリカドラマに出てくるカップケーキには、たっぷりの生クリームや果物がトッピングされ、誕生日のケーキはカラフルな色のクリームたっぷり、私たちがイメージするケーキとはかなり違いますね。
朝食で子どもたちが食べるのは、パンケーキにハムエッグ、そしてオレンジジュースにミルクです。
アメリカではピーナツバターとブルーベリージャムのサンドイッチが人気という話もあります。
確かに美味しいですが、ものすごい糖質と脂質ですね。
アメリカは日本以上の男女雇用の平等性が言われているため、朝食を父親が作る家庭もあります。
もちろん、男性でも女性でも関係なく、料理が上手な人はいますが、バリバリのビジネスマンは、日本人以上に忙しくて、ゆっくりと朝食に時間をかけることができない人もいます。
さらに、子どものころから「個人」を大切にする国のため、ある程度の年齢になると子どもでも家にあるものをレンジで温めて食事にする、という家庭が多いようです。
幼少期から親が正しい食生活を進めていれば良いですが、そうでない家庭の場合はどうしても好き嫌いが出たり、ジャンクフード中心の食生活になってしまっています。
煮物や野菜がたくさん入ったスープや魚を食べるということは、あまりないようです。
大勢の肥満の子どもたちは、食事改善によるダイエットをしたくても、家庭の協力も難しくなかなか全体の改善は難しいと考えられます。
そして、その子たちがやがて大人になり、現在の1億人の肥満の仲間入りをすることになってしまうのです。
ドラマに出てくる俳優や女優は、ドラマ内だけでファストフードを食べていますが、仕事のために健康を考えてジムで体を鍛えたり、常に食事改善によるダイエットを心がけています。
しかし、一般の人がドラマのような食生活をマネしていたらどうでしょうか。
体質にもよりますが、このような食生活を毎日食べていると、糖質と脂質の摂りすぎに対して、ビタミンやミネラルが不足してしまいます。
他にも食物繊維不足も気になります。
せめて、予備軍の子どもだけでも食事改善をしたいと思っても、親は忙しすぎてなかなか手が回らない、というのが現状かもしれません。
アメリカ人のダイエットにつながる?欧風の食事改善
それでは本当にアメリカの食生活では、ミネラルやビタミンが不足しているのでしょうか。
一見ピーナツバターやブルーベリージャム、オレンジジュースを飲んでいるのだから、ビタミンやミネラルを摂っているように見えます。
しかし、魚や豆製品、海藻も一緒に摂る和食と比較すると、糖質や脂質との比率は、かなりアンバランスです。
同じ欧米の食生活でも、アメリカやイギリスと比較し、イタリアやスペインでは魚や豆類をよく食べます。
イタリアのシチリアをはじめとする地中海料理は健康に適していることで、和食よりも前にユネスコの無形文化遺産に指定されました。
地中海料理は、和食とは違った形で魚介類やオリーブ、ひよこ豆などの豆料理を食べます。
和食でいう魚介類、ごま油・えごま油、大豆料理などになりますね。
イタリアの人はピザやパスタが好きだから肥満が多いのでは、というのは偏見で、地域によってはとても健康な食生活を営んでいる人が大勢います。
アメリカでも健康志向の人の多くは、地中海風ダイエットに興味を持ち、オリーブオイルや魚中心の食事改善でのダイエット法を摂り入れています。
家庭の料理も、以前はピザやハンバーガー中心だったのをやめて、魚や豆、オリーブオイルを使ったパスタやサラダ、野菜を中心とした食生活になっています。
しかし、この中でも極端な人が多く、日本人以上に徹底したベジタリアン(菜食主義)に偏っている人も大勢います。
菜食主義の人にはそれなりの理由がありますので、仕方ありませんが、野菜だけに偏ってもビタミンAやB群、たんぱく質、カルシウムを十分に取ることはかなり難しいです。
さらに、いも類や根菜・果物を多く食べすぎると、糖質過多になりビタミンB群が不足してしまうことがあります。
肉や魚もまんべんなく摂ることでダイエットにつながるのですが、なかなか難しいようです。
アメリカでも和食を使った食事改善でダイエット
アメリカでは、地中海風ダイエットの他に、和食を好んで食べることで健康になるという食事改善をしている人もいます。
20年以上前は欧米で簡単に手に入らなかった、味噌や醤油、米も今では現地で生産し販売をしています。
日本食が痩せる、ということから世界中で日本食を好んで食べている人が多くなっています。
日本人の皆さんの中には和食中心なのに太っていると思っている人はいませんか?
それは、日本人の方が欧米と比較し背が低いことに原因があります。
さらに、日本の中で比較すると、どうしても太っているように感じませんか?
10代、20代の若い女性では、日本は世界一の痩せ大国で、二位の韓国を多く引き離して、BMI値が低い人の率はダントツの第一位です。
もちろん食の欧米化で肥満も問題になっていますが、実際には痩せている人が多いのは事実です。
そのため、欧米でも和食を摂り入れる食事改善のダイエットが話題になっています。
アメリカでも、朝はご飯に納豆、豆腐という食事を食べる人もいます。
アメリカ人の子どもの中には、お袋の味に「味噌汁」「肉じゃが」と答える子どももいます。
実際にアメリカ人が和食をたくさん摂るようになってから、癌になる発症率がかなり減少していると言われています。
アメリカの食事改善に大切なトランス脂肪酸の規制
アメリカでは生活習慣病の原因に、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸があると問題視されてきました。
そして、2018年の夏にいよいよトランス脂肪酸を含む食品の使用が規制されることになりました。
しかし、マーガリンやショートニングの他に、ハンバーガーやステーキの原料になる牛肉の脂身からもトランス脂肪酸を摂取してしまいます。
どれほどマーガリンやショートニングを規制しても、いくら自然のトランス脂肪酸でも、牛肉を食べすぎれば生活習慣病の原因になります。
肥満の原因にもなります。
日本では、どちらかというと牛肉よりも鶏肉・豚肉を利用することが多いですね。
豚汁にトンカツ、治部煮に唐揚げと、色々な料理で鶏肉・豚肉を活用します。
カレーやシチュー、ハンバーグでも鶏肉や豚肉を利用する人も多いのではないでしょうか。
豚肉も動物性の油脂を含みますが、豚肉はビタミンB1が多いため、糖質のカロリーをエネルギーに変える働きがあります。
鶏肉は、高たんぱくで低脂肪と人気の肉です。
鶏肉・豚肉は脂身の摂りすぎに気をつけるだけで、牛肉よりも生活習慣病の予防にも、ダイエットにもつながります。
また、和食の主菜は肉料理よりも魚料理の方がよく利用されています。
鯖やマグロに含まれるDHAやEPAは、悪玉コレステロールをためない身体になります。
焼き魚や煮魚、刺身と和食の方が、余分な脂肪を摂ることなく魚を食べることもできます。
アメリカではトランス脂肪酸の規制が始まりましたが、ただマーガリンやショートニングを規制するだけでは、食事改善の一部にしかなりません。
やはり食生活全体の改善をしないと、多くの肥満や生活習慣病の改善にはつながらないのではないでしょうか。
アメリカ以外でもダイエットの食事改善に和食を
アメリカをはじめ、世界の先進国はどこでも健康ブームです。
以前はピザをパクついていた人でも、野菜をたくさん食べたり魚を食べるようになっています。
中でも、野菜や魚を美味しく食べる和食は世界から注目されています。
アメリカだけでなく、ヨーロッパの国々でも和食のお店が人気です。
和食は美味しいだけではなく、ダイエットを考えた人たちの食事改善にも利用されています。
世界の人たちが認めている和食、私たちも、大切にしていきたいですね。