最近、手作りの味噌が話題になっています。
手前味噌ともいうこの自家製味噌作りですが、作るのに手間がかかったり、専用の容器を用意しなければならないと思っていませんか?
実は味噌作りは、ビニール袋で簡単に作ることができます。
仕込みの時期は年が明けた寒いうちがベストです。
ここでは基本的な味噌の作り方と、保存法、仕込むときのポイントをご紹介します。
手軽に始める味噌作り!ビニール袋のいいところ
味噌作りには容器を用意して保存場所を確保して…と作る前から手間が多いように感じますが、初めて味噌を作るのであればビニール袋で作るのがおすすめです。
ビニール袋を使うメリットを挙げてみます。
●少量から作れる
味噌用の容器を用意すると少しだけというわけにもいかず、たくさん作らねばという気になります。
まずは試しに始めたいといったときに、少量ずつ作れるのがビニール袋のいいところです。
●雑菌の混入を防げる
味噌は煮沸しながら作るので、雑菌の混入は少ないのですが、油断せず扱いたいものです。
清潔なビニール袋を準備することで雑菌の混入を防ぎます。
また、ビニールが味噌全体に密着するので、空気抜きをしっかりすればカビの発生も防ぐことができます。
●味噌の状態を確認できる
透明なビニール袋を使えば、味噌の発酵の状態が簡単にチェックできます。
また、熟成が進んでタマリが出てきたときも、袋の上からすることで味噌が空気に触れることなく揉みこむ作業を行えます。
初めての味噌作りには、作り方の過程以外にも不安が多いものです。
その点、身近で簡単に手に入るビニール袋を使えば、手間や不安が軽減されるのではないでしょうか。
初めてでも簡単!手前味噌の作り方
味噌は、麹、塩、大豆からできています。
この3種の原材料の割合や種類、仕込む時期や熟成期間によって様々な味や色、風味に変化します。
自分好みの味噌に仕上げるためにも、まずは基本の作り方を押さえておきましょう。
【材料 2.5kg分】
・乾燥大豆 500g
・米麹 1kg
・塩 300g
【道具】
・鍋(できるだけ大きなもの)
・ビニール袋(大きくて丈夫なもの)
・衣類用圧縮袋(40㎝×30㎝)
【仕込み】
①米を研ぐようにして大豆を洗い、大豆の量の3倍量の水に一昼夜つけておきます。
②一晩経つと、およそ3倍ほどに膨らみます。
この大豆を鍋に入れ、柔らかくなるまで3~4時間ほど煮ます。
取り出す目安は親指と小指でつまんで簡単につぶれる程度の柔らかさです。
③大豆を煮ている間に塩と麹をビニール袋に入れてよく混ぜておきます。
④大豆が煮あがったら、40℃くらいまで冷ましてから半分の量を二枚重ねにしておいたビニール袋に入れて、丈夫なガラス瓶などで粒がなくなるまで潰します。
ここでつぶし方が粗いと粒の多い味噌に、丁寧に潰すと滑らかな味噌になります。
残りの大豆も同じように潰します。
⑤潰した大豆に、混ぜ合わせておいた塩と麹を加えてまんべんなく混ぜます。
⑥全体がよく混ざったら、ビニール袋の角まで豆で埋まるように袋の下から手で押して空気を抜いていきます。
⑦袋から空気が抜けたら、袋の口をガムテープで止めます。
この時、少しだけ隙間を空け、空気抜きを作っておきます。
板状になったこの味噌の元を、袋の底部分から丸めてさらに空気を抜きます。
⑧⑦を衣類用圧縮袋にいれて、吸引口をアルコール消毒した掃除機を使って空気を抜いて、密封します。
⑨1月~2月の寒い時期には室内に置いておきます。
気温が15℃以上に上がるようになってきたら室内の冷暗所に移して保存します。
食べごろはいつ?味噌の熟成する様子を知ろう
味噌の仕込みが終わればあとは食べごろを待つばかりなのですが、味噌の食べごろとは仕込んでどれくらい経ったころのことなのでしょうか。
そもそも味噌の発酵には原材料にもなっている麹が深く関わっています。
麹には麹菌が含まれています。
麹菌とは「コウジカビ」というカビの一種です。
このカビは塩と混ぜた時点で死滅してしまいますが、このコウジカビから出る酵素が、大豆のタンパク質を分解したりデンプンを糖に変えたりする働きをします。
この酵素が働くことができる適正温度は20~25℃と言われています。
つまり常温で保存することで酵素が力を発揮するというわけなのです。
ではどれくらいの期間、熟成させれば良いのでしょうか。
仕込み直後から大まかに味噌の状態をみていきます。
●仕込み直後
色は大豆を煮た状態のままで、塩味が強く風味はありません。
水分も少ないため、パサパサしています。
●仕込みから3ヶ月後
ほんの少し色味が濃くなり、かすかに味噌の香りや旨味を感じるようになりますが、まだまだ塩辛さが強いです。
●仕込みから10ヶ月
濃い茶色に変わり表面に照りや冴えが見られます。
味噌特有の発酵臭とほのかにアルコールの香りがし、固さも独特の半固体の滑らかさが出てきます。
ビニール袋の上から味噌を押すと、仕込み直後との違いがはっきりとわかります。
●仕込みから2年後
熟成が進み、こい茶色や黒色になります。
甘味が薄れ乳酸発酵による酸味がでて香りが強まります。
長期間熟成させた味噌も食べられないことはありませんが、これらの特徴をみると、味噌の食べごろは仕込みから10ヶ月から12ヶ月熟成させた後が最適ということになります。
作り方は変わらないのに、熟成期間だけでこれほどの変化が見られるのも、味噌づくりの面白いところです。
作り方を覚えたら味噌の保存方法について知ろう
基本の作り方と味噌の熟成についてお話してきましたが、ここからは味噌をいい状態で保存する方法をご紹介します。
味噌が食べごろを迎える10ヶ月ごろまでは、室内の冷暗所に保存することをおすすめします。
この期間は熟成が進む時期なので、酵素が働ける温度を保ちながら常温保存します。
熟成する間に、味噌から茶色い汁が出ることがありますが、これは「タマリ」と呼ばれる旨味を多く含んだエキスです。
見つけたら、ビニール袋の上からよく揉みこんでおきましょう。
また空気の抜きが甘かったり出来具合を確認するなどで封を開けた後は、しっかりと空気抜きをして味噌を密閉しなおします。
空気に触れる部分が多くなってしまうと、そこからカビが繁殖して、せっかくの味噌がだめになってしまいます。
もしカビができているのを見つけたら、その部分をきれいに取り除き、しっかりと密封しておきましょう。
食べごろを迎え、使い始めたら冷蔵庫や冷凍庫で保存するようにします。
味噌を取り出すたびに空気に触れ、カビやすくなることを防ぐため、また常温で保存しているとどんどん熟成が進んでいくので好みの風味を保つためにも冷蔵・冷凍での保存をおすすめします。
いくつか袋を分けて作った場合は、未開封のものを冷凍しておくのもいいでしょう。
味噌は、その塩分の多さから家庭用の冷凍庫では凍ることはありません。
なるべく長く好みの味噌を楽しむためにも、保存方法には気を遣いたいところです。
ビニール袋の上から簡単に味噌の出来栄えをチェック
作り方は簡単でも、味噌は麹の種類、塩の割合、熟成期間などによって見た目も風味も大きく変化します。
麹と大豆の割合は独自のものでもいいのですが、大豆の割合が多いとカビやすくなります。
また、減塩がいいからといって塩の量を控えすぎると、これもカビの発生する原因になってしまいます。
塩の量の基本は、乾燥豆と麹をあわせた重さの約2割ほどです。
味わいや見た目の違いをまとめてみました。
ビニール袋を使って作れば、味噌の様子が簡単に見られるので参考にしてみてください。
●麹の種類
・米麹…米の甘味が強くなります。
・麦麹…米麹よりも香りが強くあっさりとした味わいになります。
・米麹+麦麹…香りが強く甘味のある味わいになります。
●麹の割合
・多い…麹の甘味が強い、ぜいたくな味噌に仕上がります。
・少ない…豆の味が引き立つ辛口味噌になります。
●熟成期間
・長い…カドがなくなり旨味の濃い味になります。
・短い…淡色で、あっさりした味わいになります。
ビニール袋でも他の容器でも作り方は同じ…味噌作りで守るべきこと
味噌の作り方は思っていたよりも簡単です。
ここで紹介しているようなビニール袋を使ったやり方なら、もっと手軽に始められるでしょう。
しかし、どのような容器を使ったとしても、味噌は発酵食品ですから人がやるのは混ぜ合わせるところまでで、あとは酵母におまかせになります。
しかし、混ぜ合わせるまでに間違ったことをしてしまうと、肝心の酵母が働かず味噌作りは失敗してしまいます。
仕込みまでに守らなければならないポイントを覚えて、美味しい味噌を作りましょう。
●長期保存した麹を使わない
麹は生き物なので常に発酵し続けています。
発酵すると熱を発しその熱で麹が焼けてしまい、「焼け麹」の状態になってしまいます。
麹には生のものと乾燥したものがあり、それぞれに保存法が違うので注意が必要です。
●大豆の手洗いをしっかりする
つるつるした乾燥大豆はあまり汚れているようには見えないのですが、一度洗うと汚れや油分が出て、水が濁るほどになります。
この洗いの作業をおろそかにせず、洗い水が透明になるまでしっかり洗いましょう。
●大豆にたっぷりの水を吸わせる
吸水を怠ると、いくら煮ても豆に固さが残ります。
これは味噌の出来栄えにも影響が出ますので十分な量の水でしっかりと吸水させます。
●大豆を煮るのにもたっぷりの水を使う
十分に水を吸った後でも、大豆を煮るとさらに水を吸って膨らみます。
大豆を煮るときは大豆の1.5倍の量の水で柔らかくなるまで十分煮るようにしましょう。
●熱いままの大豆を塩・麹と混ぜてはいけない
大豆が熱いまま麹と混ぜてしまうと、大豆に残る熱のせいで麹の持つ「麹菌」が死滅してしまいます。
こうなると発酵ができず味噌になりません。
大豆を加えるのは、手のひらに乗せても熱さを感じない程度まで冷ましてからにしましょう。
●とにかくしっかり混ぜる
混ぜ合わせがうまくいかず、ムラができると大豆と麹の混ざらない場所から傷んでしまいます。
まず塩と麹を十分混ぜてから大豆と合わせ麹が隅々までいきわたるようしっかり混ぜましょう。
基本を覚えて味噌作りに挑戦しよう
ビニール袋を使った味噌作りについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?
味噌が現在のように市販される前までは、各家庭で作られていたものですので、決して敷居の高いものではありません。
味噌作りは自分好みの味噌が作れるだけでなく、出来上がりを待つ楽しみも魅力のひとつです。
ぜひ、この機会に、家庭で自家製味噌作りに挑戦してほしいと思います。