子供の頃、母がよく作ってくれた甘酒は、1袋に酒粕300g入ったものを、砂糖をたっぷり入れて煮溶かした、冬の日の定番飲料でした。
その甘酒が、今や健康にも美容にもいいと大ブームになっています。
そこで今回は、酒粕から作った甘酒にはどんな効果があるのか、また、おいしくて簡単にできる作り方のコツや、米麹から作る甘酒との違いについてなどを、ご紹介したいと思います。
酒粕300gで作った甘酒の特徴と米麹甘酒との違い
甘酒には2種類あります。
ひとつは、日本酒を搾った後の搾りかすである酒粕から作られた酒粕甘酒、もうひとつは麹菌という良性のカビが生えた米である米麹を発酵させて作る米麹甘酒です。
酒粕甘酒は、酒粕に7~9%のアルコールが含まれているため、出来あがりの甘酒にも若干アルコール分が含まれています。
そのため飲むと体がじんわりと温まるので、冬によく飲まれるのです。
アルコール分を飛ばせばアルコールが苦手なかたでも十分おいしくいただけますが、赤ちゃんや妊婦さんなどは飲まないほうがいいでしょう。
また、甘酒という名前であるのにもかかわらず甘くないため、砂糖を混ぜて作るのが特徴です。
甘みはお好みで調整できるので、はちみつをいれたり、みりんを入れたりするかたもいます。
スーパーなどで1袋だいたい酒粕300gが入って売られているので、買ってきてすぐに甘酒が作れます。
作り方は基本、酒粕を水で煮溶かし、砂糖を加えて味をつけるだけと、とても簡単です。
一方、米麹甘酒は、作るのがやや面倒かもしれません。
といっても、基本は米麹と水とお粥(あるいはごはん、米)を混ぜて発酵させるだけです。
発酵に平均8時間かかるのと、温度を60℃にキープしなければいけないのが、慣れないとやや難しいのです。
しかし出来あがった米麹甘酒には、生きた酵素が300以上も含まれるうえ、アミノ酸やビタミンなどの栄養がいっぱいです。
しかも、砂糖なしなのに自然な甘さがあり、アルコール分を一切含んでないので、小さな子どもでも安心して飲めます。
欠点としては、発酵器を使ったり、米麹をかなり消費するため、割高になる可能性があることです。
その点酒粕は値段が安く、1袋だいたい200~300円なので、経済的な面を考えれば酒粕甘酒でしょう。
酒粕甘酒の驚くべき健康・美容効果
健康・美容効果が高いのは米麹甘酒で、酒粕甘酒は特に体に良いわけではない、と思っていたら大間違いですよ!
酒粕には、レジスタントプロテインという特徴的なタンパク質が含まれています。
レジスタントプロテインには、糖質や脂質とくっついて体外にそのまま排出させてしまう作用があるため、コレステロールが低下するのです。
また、食物繊維が豊富なのも酒粕の特徴です。
食物繊維は便秘を改善するだけでなく、血糖値の上昇を防いで糖尿病を予防する効果や、脂肪の吸着を抑える効果があるため、女性やダイエッターの味方です。
他にもミネラルやビタミンも含まれており、特にビタミンB2、B6が豊富です。
ビタミンB2、B6はともに皮膚や粘膜の健康を守る働きがあるため、美肌にこだわる女性にはうれしい栄養素です。
さらに高血圧の予防や肝臓を強化するペプチド、睡眠の質を上げるS-アデノシルメチオニン、血行を良くして冷えを改善するアデノシン、肌のシミのもとになるメラニンの生成を抑えるアルブチンなど、酒粕には体に良い成分がいろいろ含まれています。
ストレスの溜まった女性が夜寝る前に甘酒を1杯飲めば、ぐっすり眠れてストレスは解消、血のめぐりが良くなって美肌にも効果的といいことずくめです。
夜の1杯だけでなく、朝食やリラックスタイムなど、いつでも好きな時に飲めるよう、酒粕300gでまとめて甘酒を作っておくことをおすすめします。
酒粕300gで作るおいしい甘酒のレシピ
スーパーなどで酒粕を買って来たら、1袋全部(だいたい酒粕300g)を使って甘酒を作りましょう。
砂糖を入れて、煮溶かすだけで出来あがります。
【材料】
・酒粕 1袋(酒粕300g)
・水 1200cc
・砂糖 大さじ7杯
【作り方】
①酒粕を細かくちぎって鍋に入れ、水を注ぎます。
②そのまま弱火にかけ、かき混ぜながらゆっくりと煮溶かしていきます。
③砂糖を加えて、中火で加熱したら出来あがりです。
砂糖の量はお好みで調節してください。
最後に、すりおろした生姜や生姜汁を加えると、スッキリとした味わいになるうえ、アルコール臭が気になりません。
体も内側からポカポカと温まってきます。
日本酒を加えると、よりお酒感が強まりほろ酔い気分にもなれるでしょう。
逆に、甘酒のアルコール分が気になるかたは、加熱してアルコール分を飛ばします。
甘酒のアルコールはエタノールといって、78℃が沸点です。
3~4分沸騰させればアルコール分が抜けるので、お試しください。
出来あがった甘酒は、冷蔵庫で保存します。
レンジで温めて飲むのはもちろん、冷やでもおいしいくいただけます。
酒粕300gを使って滑らかな甘酒を作るコツは?
酒粕甘酒は、酒粕が鍋の底に沈殿したり、かたまりができたりします。
それが素朴で味わい深いというかたもいらっしゃれば、もっと滑らかでクリーミーな甘酒がいいというかたもいらっしゃいます。
後者の場合、酒粕の煮溶かしかたをもう少し工夫する必要があります。
例えば下記のような方法です。
・練る
・マッシャ―で潰す
・すり鉢でする
・ミキサーにかける
・味噌溶きで溶きながら入れる
・酒粕を細かくちぎって一晩水に漬けておく
練る場合は、最初に酒粕300gを水1200ccに2~3時間漬けておいてから、酒粕300gと水の半量でよく練り合わせ、残りの水を加えてから弱火にかけます。
マッシャ―で潰す場合は、酒粕300gと水を半量の600cc入れて弱火にかけ、マッシャ―で潰した後、さらに泡だて器で滑らかにします。
それから水の残り600ccを加えてさらに煮ます。
すり鉢の場合はすり鉢に酒粕300gとお湯を適量入れてすり、沸騰しているお湯1200ccの中にこの酒粕を入れてよくかき混ぜます。
すり鉢でするのが面倒なら、ミキサーにかけてもOKです。
味噌溶きを使う場合は、沸騰している1200ccのお湯の中に、酒粕300gを味噌溶きで少しずつ溶きながら加えていきます。
いずれの方法も比較的短時間でできますが、ちょっと手間がかかりますよね。
手間をかけるのが面倒なら、一晩水に漬けておくのがおすすめです。
時間はかかりますが、翌日には簡単に溶けます。
酒粕300gを使い、酵素の効果を最大限生かした甘酒を作るには?
甘酒は発酵食品です。
発酵食品には酵素が含まれています。
米麹甘酒には酵素が300以上も含まれていますが、酒粕にも100以上含まれています。
酵素はとても体に良いのですが、熱に弱いのが欠点です。
そのため米麹甘酒を作るときは温度を60℃にし、それを超えないようしっかり管理しなければなりません。
60℃が酵素を活発にさせる適温で、70℃に上がると壊れてしまうからです。
酒粕甘酒も60℃が適温に変わりありません。
したがって酒粕300gを煮溶かす際に沸騰させれば、せっかくの酵素が効果を発揮できない甘酒になってしまうのです。
では、どうすれば酵素を活かした酒粕甘酒が作れるのでしょうか。
ポイントは温度です。
まず、酒粕を細かくちぎってぬるま湯(40度位)に浸しておきます。
そして火にかけるとき、火の先が鍋底に届かないくらいの火力にします。
つまり、弱火にするのです。
IHなら保温~1にすればOK。
時間はかかりますが、気長にかき混ぜつつ、トロトロと溶かしていきましょう。
こうして出来あがった酒粕甘酒には、米麹甘酒に劣らず酵素パワーがいっぱいです。
しかしアルコール分は飛ばないので、アルコールが苦手なかたやお子様は飲まないでください。
煮立たせてアルコールを飛ばした酒粕甘酒でも、酵素以外の有効成分がたっぷり入っているので、健康・美容効果は失われません。
安心してお飲みください。
酒粕甘酒でできる料理&おやつのアレンジレシピ
酒粕300gで甘酒を作ったら、3日くらいで飲みきるのがベストです。
しかし毎日同じ甘酒ばかりでは飽きてしまいますよね。
たまにはアレンジ甘酒もいいのでは?
例えば、豆乳と酒粕甘酒とを同分量で混ぜた豆乳甘酒。
まろやかなおいしさに加え、女性にうれしい美肌や血行促進効果が豆乳からも得られます。
きなこや黒ゴマを入れてもいいですね。
意外に合うのがほうじ茶。
豆乳甘酒にほうじ茶のティーバックを入れると、その何ともいえない味わいにやみつきになります。
豆乳甘酒にゼラチンを入れて固めたら、豆乳甘酒プリンに。
ちょっとしたデザートに変身します。
砂糖の代わりにはちみつを入れると、やさしい味わいの酒粕甘酒になります。
生姜をたっぷり入れると格別です。
酒粕そのものを使ったアレンジも楽しめます。
代表的なのが粕汁です。
たっぷりの根菜を入れた具だくさん味噌汁に、酒粕を加えるだけで風味豊かな粕汁に。
味噌が白味噌のほうが、うまみが引き立ちます。
良質な酒粕ならクリームチーズや味噌と混ぜると、野菜のディップソースになります。
ほんのりお酒の風味があるので、大人の洒落たおつまみに。
ほかにもアイデア次第でいろいろなアレンジが楽しめるので、ぜひレパートリーを広げてみてください。
素朴でおいしい昔ながらの酒粕甘酒をぜひ生活に取り入れてみて
最近話題の手作り甘酒は、もっぱら米麹から作るほうですが、かつて昭和の食卓で甘酒といったら、酒粕を煮溶かして作るものでした。
その甘酒に優れた効果があることを、先人たちは経験で知っていたのかもしれません。
平成の今、新たに見直されている甘酒は、この先もずっと私たちとともにあるでしょう。
市販の甘酒に飽きたらぜひ酒粕を手に取って、あなただけのオリジナル甘酒を作ってみてください。
その感触、その匂い、すべてが新しい発見となるでしょう。