パンを作る時にほとんど目にする「強力粉」。
同じ「小麦粉」の分類に入る薄力粉や中力粉等ではダメなのでしょうか?
「強力粉」の方が良い理由はなぜ?
「薄力粉」ではダメなの?
と疑問を持っている方も多いと思います。
その疑問を解決できるように、徹底解析していきます。
パン作りの基本材料「小麦粉」の分類~強力粉編~
「小麦粉」でも強力粉・中力粉・薄力粉とありますが、この「力」とは小麦粉に含まれるたんぱく質の力の強さを表します。
その名の通り、強力粉はたんぱく質の力が強いという理由で「強力粉」と呼ばれています。
外国での分類は、Bread Flour、Hard FlourやStrong FlourやSemolina等があります。
強力粉の原料は、硬質小麦と呼ばれるたんぱく質がたくさん含まれている小麦から作られます。
たんぱく質の含有量は11.5%~13.0%です。
エネルギーは366kcalです。
水分は14.5gです。
たんぱく質は11.7gです。
炭水化物は71.6gです。
カルシウムは20mgです。
鉄は1.0mgです。
ビタミンB1は0.10mgです。
強力粉の原料の小麦は気温が低く乾燥した土地で育ちます。
粒は粗くサラサラとしているのが特徴です。
強力粉に水を加えて捏ねると、生地がまとまって粘りが強く出ます。
パン作りにはもちろんですが、餃子の皮や中華麺にも使われています。
冷蔵庫での保管は、結露による固まりやカビの発生、冷蔵庫内のにおいが移ってしまうことがあるので、オススメはしていません。
保存の期間は、強力粉は約6か月が目安となります。
パン作りの基本材料「小麦粉」の分類~薄力粉編~
その名の通り、薄力粉は強力粉と比べるとはるかにたんぱく質の力が弱いという理由で「薄力粉」と呼ばれています。
外国の分類は、Soft Flour、Weak Flour、Cake Flour、Cookie Flour、All Purpose FlourやPlain Flour等があります。
薄力粉の原料は、軟質小麦と呼ばれるたんぱく質が少なく、デンプンがたくさん含まれている小麦から作られます。
たんぱく質の含有量は6.5%~9.0%です。
薄力粉の成分組成、100gあたりを見てみましょう。
エネルギーは368kcalです。
水分は14.0gです。
たんぱく質は8.0gです。
炭水化物は75.9gです。
カルシウムは23mgです。
鉄は0.6mgです。
ビタミンB1は0.13mgです。
薄力粉の原料の小麦は気温が高く湿った土地で育ちます。
粒は細かく柔らかいのが特徴です。
薄力粉に水を加えて捏ねると、生地がまとまりにくく粘りは非常に弱いです。
焼くとサクっとした食感になります。
パン作りにはあまり使われませんが、クッキー、ケーキ、天ぷらの衣によく使われています。
保存の期間は、薄力粉は約1年が目安となります。
パン作りの基本材料「小麦粉」の分類~中力粉編~
その名の通り、中力粉は強力粉と比べるとたんぱく質の力は少し弱く、薄力粉と比べると少し強いという理由で「中力粉」と呼ばれています。
外国の分類は、All Purpose Flour、Plain Flour、Pastry Flour 等があります。
アメリカ(英語で)で単にFlourと言えばこの中力粉を指す事が多いです。
中力粉の原料は、強力粉の硬質と薄力粉の軟質の中間で、中間質小麦と呼ばれる小麦から作られます。
そのため、たんぱく質は強力粉ほど多くはなく、デンプンも薄力粉ほどではないです。
たんぱく質の含有量は7.5%~10.5%です。
中力粉の成分組成、100gあたりを見てみましょう。
エネルギーは368kcalです。
水分は14.0gです。
たんぱく質は9.0gです。
炭水化物は74.8gです。
カルシウムは20mgです。
鉄は0.6mgです。
ビタミンB1は0.12mgです。
中力粉の原料の小麦は若干薄力粉よりなので、湿度が高く湿った土地で育ちます。
粒も強力粉と薄力粉の中間の特徴を持っています。
パン作りにはあまり使われず、スーパーにもあまり並んでいない事から、中力粉には馴染みがないかもしれません。
しかし、うどん麺に使われていたり、日本の麺用や和菓子の一部にも中力粉は使われています。
意外にも日本向けの小麦粉かもしれませんね。
保存の期間は、中力粉は約1年が目安となります。
これで解決。パン作りに強力粉をよく使う理由
一言で「小麦粉」と言っても、上記で説明したようにたんぱく質の量や質によって、強力粉・中力粉・薄力粉と分類されている事は分かりました。
では、なぜパン作りには同じ「小麦粉」でも強力粉が用いられるのか、なぜ強力粉が適しているのか、その理由を説明していきます。
小麦粉に水を加えて捏ねると粘りと弾力が出てきます。
その理由は、小麦の主要たんぱく質のグリアジンとグルテニンが結合して、粘りと弾力をもたらすグルテンが形成されるからです。
グルテンは、小麦粉に水を加えて捏ねると、つながって網目状になります。
粘りと弾力があるから、パン生地の発酵中にが膨らむための重要な炭酸ガスが発生しても、伸びてガスを内部に留めておく事ができるのです。
ところが、もしグルテンが弱かったり少なかったりしたら、膨らむための炭酸ガスが発生してもグルテンが切れてしまって、ガスがパン生地から外に出ていってしまいます。
パン生地を膨らませるための炭酸ガスを外へ出さないように、ある程度の粘りと弾力が必要だから、グルテンの力が強い強力粉が用いられているのです。
ただし、強力粉は産地や銘柄、等級によってグルテンの力に差があります。
アメリカやカナダ産はグルテンの含有量が多い小麦が作られるため「ふんわりと軽いパン」になります。
一方ヨーロッパ産はグルテンの含有量がアメリカやカナダと比べると少ないため「しっかりと噛みごたえのあるパン」になります。
強力粉を用いる理由は分かったけど・・・パン作りに強力粉ではなく薄力粉でもできるの?
答えは「できます」。
ただし、食感が全く違います。
・強力粉0、薄力粉300gで作ってみました。
見た目はさほど変わった様子もなく、普通のパンです。
ただし、握った瞬間表面が硬いのはすぐ分かるくらい硬いです。
生地を作る時には、粘りと弾力がないのでかなりべたつき形成しにくいです。
焼きあがった後はゴワゴワした印象です。
・強力粉150g、薄力粉150gで作ってみました。
見た目は普通のパンです。
握った印象が、表面がサクっとしています。
生地を作る時には、粘りがあまり無いですが、弾力は若干あるので形成しようと思えばできます。
食感はサックリ軽く、ふっくらもしています。
食感が軽いので、パンそのものを味わうとなった時に物足りない感じでのさっぱり加減です。
・強力粉300g、薄力粉0gで作ってみました。
見た目は普通のパンです。
握った印象は、上記の2つのパンよりもズシっときます。
生地を作る時には、粘りも弾力もあるので形成がしやすいです。
食感はもっちりとして弾力があります。
上記の2つのパンよりも、食べた時に粉本来の味が強く感じられます。
パンそのものを味わうとなった時はやはり強力粉100%が一番美味しかったです。
強力粉を使う理由が分かりましたか。
あくまでも筆者主観なので、是非自分好みに試してください。
パンが強力粉である理由が分かったらパンを作ろう!パンのおおまかな作り方
せっかくパンを作る時に強力粉を用いた方が良い理由が分かったのですから、実際に作ってみましょう。
・捏ねます
材料に水を少しずつ加え、パン生地の発酵に最適な温度27℃~30℃に捏ねあげ、固まってきたら油脂を入れさらに捏ねます。
生地が手につかなくなったら、生地を引っ張り、ゴムのように伸びたら完了です。
・一次発酵します
27℃~30℃の所に30分~40分間置いて発酵させます。
粉を付けた指を生地にさし、抜いた時穴がそのままなら発酵完了です。
・ガス抜き
手で生地を押さえ、発酵で膨らんだ生地の中にある炭酸ガスを全体に分散させます。
・分割します
生地を1個ずつちぎらずスケッパーで切ります。
・丸めます
中に発生する炭酸ガスを閉じ込める為、分割した生地の切り口を閉じます。
片手で包みくるくるまわすと表面が張り綺麗にできます。
・休ませます(ベンチタイム)
生地を並べ上から塗れ布巾をかぶせ20分寝かせ、生地を柔らかくし、扱いやすくします。
・形成します
ガスを含んでいる生地をめん棒で、パンに合った形に伸ばしていきます。
・仕上げの発酵をします
形成した生地を35℃~38℃の所に約40分置き、2倍の大きさに膨らむまで発酵させます。
・焼きあげます
小型パンなら180℃に予熱して、10分~15分焼き。
大型パンなら170℃に余熱して、20分ほど焼き。
型に入れて焼く場合、140℃に余熱して15分焼き、さらに180℃で20分焼きます。
以上で強力粉を使ったパンができあがります。
強力粉の性質を知る事で、パン作りに強力粉が必要な理由が分かります
漠然とパン作りには強力粉が必要なのだという事はなんとなく知っていた方も多いと思います。
でも、理由までは人に説明できるほどは知らなかったのではないでしょうか。
理由を調べたら、小麦粉の分類の仕方、それに含まれるたんぱく質の違い等が見えてきました。
ただし、必ずしも強力粉でないといけないという訳ではない事も分かりました。
性質が分かった事により、自分好みのパンを作る事もできるようになりますね。