皆さん、毎日食べるお米が、どのように精米されているかご存知ですか。
無洗米が日常化した現代では、若い人は知らないかもしれません。
しかも、玄米と精米が違う食べ物だと思っている人もいるかもしれません。
玄米も精米も同じお米なんですよ。
収穫された籾から玄米、精米となって白いご飯が食べられるのです。
お米についてお話したいと思います。
籾→玄米→精米の工程があって白いご飯が食べられる
「籾(もみ)」と聞いても、若い人は何のことなのかピンと来ないかもしれません。
籾は、稲を収穫して、実の部分を脱穀した状態のお米です。
殻付きですので、種子としての機能が残っています。
越冬して種まきすると、発芽して再び稲を生やすことができます。
その籾から、殻をむいた(籾ずりした)ものが玄米です。
最近では、健康食として有名になってきましたので、スーパーでも見かけるようになりました。
籾ずりしてから、しばらくは発芽できるので、これを発芽させると、発芽玄米になります。
玄米は古くなってしまうと、発芽しにくくなってしまいます。
この玄米の表面を削ったもの(精米)が、皆さんがよく食べている精米ですね。
玄米の重量の10%が米ぬかとして削られます。
精米したてのお米がいちばん美味しいとされています。
籾の状態ですと、常温で長期保存できますので、お米にこだわりがある人は、籾のまま長期保存する人もいるようです。
籾のまま保存すれば、虫も発生しにくく、玄米よりも長持ちします。
精米すれば、新米のような美味しいご飯が食べられます。
デメリットといえば、精米が大変ということでしょうか。
普通の精米機ではできませんので、籾すり機を買うか、籾に対応した精米所を探す必要があります。
保存の場所を多くとることからも、一般家庭では難しいかも知れませんね。
玄米と精米の差
籾のまま保存するのは難しくても、玄米でしたら管理は精米とあまり変わりません。
玄米の健康効果は、最近では知られるようになりましたが、精米と何が違うのでしょう。
まず、カロリーですが、
白米100g→168kcal
玄米100g→165kcal
となっており、あまり差はありません。
栄養価は玄米の方が高いのに、カロリーにあまり差がないのは、吸収率の違いからです。
カロリーは食べ物が持っているカロリー数を表しているのではなく、体内で吸収されるカロリー数を表しているのです。
玄米の栄養価が精米よりも高いのは、精米の際に取り除かれてしまう糠層や胚芽に、ミネラル・ビタミンB1・ビタミンE・食物繊維が多く含まれているからです。
1日に必要な栄養を摂取できるので、完全栄養食と呼ばれるんですね。
さらに豆腐やわかめの入った味噌汁でカルシウムとたんぱく質を加えれば、まさにパーフェクトになります。
また、炊いた玄米であれば、ミネラル欠乏になる心配もないので、神経質になる必要もありません。
玄米のダイエット効果
前項でお話した通り、玄米は精米に比べて、ビタミンやミネラルの含有量が多くなっています。
籾のまま食べることはできませんが、玄米でしたら、そのままの栄養を摂取することができますので、玄米を食べることがダイエットにも良い効果をもたらします。
玄米に含まれている糖質の代謝を活発にするビタミンB群は、脂肪の蓄積を抑える働きがあるとされています。
食物繊維は腸内環境を整えて、便秘などの解消に効果が期待でき、血流が促進されることで新陳代謝が活性化し、美肌効果も期待できます。
玄米は硬いので、よく噛む必要があります。
よく噛むことによって唾液がたくさん分泌され、栄養分が吸収されやすくなります。
また、よく噛むことで、ゆっくり食べることになるので満腹中枢が刺激され、満腹感を得られやすくなります。
食物繊維が豊富なので、腹持ちもよいですよ。
他にも、顎をよく動かすことによって、顔の筋肉の運動にもなり、顎のラインがシャープになります。
このような理由でダイエット効果が期待できる玄米ですが、白米などと同じように、あまりよく噛まずに玄米を食べると、消化不良を起こしてしまう可能性があります。
最低でも50回は噛むようにしましょう。
玄米が精米に取って代わられた理由
玄米ダイエットをおすすめするお話をしてきました。
玄米は良いことだらけなのに、どうして現代人は精米を主に食べるようになったのでしょう。
その理由はいくつか考えられます。
・食感が良くない
現代人は柔らかいものを好む傾向にあり、硬くてたくさん噛む必要がある玄米は敬遠されているようです。
・匂いが独特
人によっては糠臭いと感じるようです。
・硬くてパサパサしている
食感が良くないのと似ていますが、パサパサしているのも不人気の理由のようです。
・炊くのに手間がかかる
炊飯器に玄米モードが付いているものもありますが、やはり炊飯器ですと、おいしく炊けないようです。
土鍋や圧力鍋で炊く方法もありますが、精米より手間がかかります。
匂いは工夫で対処できますが、食感は変えられません。
玄米は皮が付いているのですから、皮つきのリンゴと皮をむいたリンゴの食感が違うのと同じように、精米と食感が違うのは当然です。
玄米がどうしても苦手という人は、3~4日保温させた寝かせ玄米や糠(ぬか)を別の方法で摂るようにするなど、工夫をしてみましょう。
籾から玄米、玄米から精米という作業は大変手間がかかったので、昔は精米はぜいたく品でしたが、現代では玄米が珍重されているというのも不思議な話ですね。
籾のまま保存できないのなら!玄米・精米のおすすめ保管方法
さて、一般家庭では、籾の状態での保存は難しいとお話しましたが、玄米・精米の正しい保存方法はどのようになっているのでしょう。
米を長期保存するためには、劣化する原因をできるだけ少なくしておくことが大切です。
劣化する原因とは、
・呼吸
・酸化
・虫
・カビ
・乾燥
・におい移り
です。
冷蔵庫での保存が、保存環境としては向いています。
乾燥しすぎの問題がありますので、タッパーなどに入れて保存するのが良いでしょう。
しかし、一般家庭の冷蔵庫では、大量に保管しておくことはできませんよね。
スーパーでよく売っているトウガラシの商品では一定の効果はありますが、虫にしか効果がなく、暑い季節ではあまり役に立ちません。
真空パックするという手もあります。
きちんと真空にできれば、カビや乾燥、虫、におい移りを防ぐことができます。
問題は、ご家庭での真空パックでは、そこまで完璧な真空状態にできないことです。
手間もかかるため、日常的に使うのは大変です。
では、どのように保管するのが良いのかと言いますと、無酸素保存です。
米を専用の袋に入れ、袋の中の「酸素」だけを取り除くという保存方法です。
きちんと脱酸素された米は、半年から1年以上の長期間、新鮮な状態で保存することができます。
米を長期保存する場合は、できるだけ素材に近い状態が良いので、
籾>玄米>精米>無洗米
の順がおすすめです。
無酸素保存は、どんな状態のお米でも安全に保存することが可能ですが、栄養面を考えると玄米がおすすめです。
玄米を食べないということであれば、白米より酸化しづらい無洗米の方が良いでしょう。
脱穀した後の籾殻活用法
籾や玄米・精米についてお話してきましたが、農家でない人は、籾の状態のお米を目にする機会は少ないですね。
脱穀した後の籾殻は、どのように活用されているのでしょうか。
籾殻は、分解されにくい性質を持っています。
水でも変形しにくく、水分も含みにくくなっています。
変形しにくいという性質を利用し、寒い季節には畑の地表にまかれ、保温対策として使われています。
また、暑い季節になると、反対に地表が乾燥しないように保湿のためにまかれることもあります。
種をまいた後、水分を維持したいときに地表を覆うことができるので効果的です。
このとき、風で飛んでしまう可能性があるので、注意も必要です。
土に混ぜ込んで、土の通気性を上げるという使い方もあります。
硬い土の場合には、多めに混ぜ込むと、空気や水の通り道ができて、土が柔らかくなります。
混ぜ込んだ土は時間をかけて、3年くらいで堆肥化するので、定期的に混ぜ込んでいくことになります。
籾殻を燃やすことで炭化させ、籾殻燻炭という肥料にもできますが、籾殻を燃やすのは条例で制限がかけられていることがありますので、実行するのは難しいでしょう。
籾殻は時期によっては貰うことができますので、お知り合いの農家さんにお願いしても良いですし、農協などに相談してみるとわかると思います。
庭に畑があるという人は、籾殻を活用してみてはいかがでしょう。
古来から日本人の主食・米
日本人の食生活に欠かせないお米ですが、案外知らないことも多かったのではないでしょうか。
食事がバラエティー豊富になった現代では、お米も主食としての存在感が薄くなったように感じます。
玄米回帰の動きもそうですが、もう少し、お米というものに意識を向けてみてはいかがでしょうか。
毎日の食事が変わるかもしれません。