日本人の好きな味と言えば、やはり醤油味と味噌味ですよね。
手作り味噌は比較的作りやすいことから、近年ブームにもなっています。
そこで、味噌を手作りする際に気をつけたいことや、ありがちな失敗などをまとめました。
ぜひ参考にして、楽しい発酵食品ライフを送ってくださいね。
日本人のDNAに刻まれている「味噌」
味噌の成り立ちは、醤油より早いのをご存知ですか?
味噌の起源にはふたつの説があります。
ひとつは中国から伝来した「醬(ジャン)」が元だという説。
豆板醤が「辛味噌」だというところからも、説得力のある説ですね。
もう一つは、日本独自で作られたという説です。
日本では縄文時代から塩が作られていたため、大豆やコメなどを育てるようになった弥生時代から原型があったとする説があるのです。
今の味噌の原型は、飛鳥時代まで遡れます。
当時の文献に、「未醬(みしょう)」や「美蘇(みそ)」と書かれた文字を発見することができます。
これが現在の味噌に変化したのですね。
すなわち1300年も前の昔から、味噌は広く食べられ、日本人のDNAに刻み込まれて来た味ということになります。
その後室町時代になると、味噌は全国各地で作られるようになり、江戸時代には京都は白味噌、江戸は豆味噌などというように、各地の風土に合わせて手作りされるようになります。
この味噌の種類は明治時代にははっきりと分類され、豆の皮などで作られた甘い「白味噌」、白大豆で作る「赤味噌」、豆を曳かずにに作る「玉味噌」などとはっきり定義が決まります。
昭和の時代へ下ると、仙台味噌が普及し、各地で特色のある味噌を売り出すようになります。
この頃までは、味噌は各家庭で手作りするものとされていました。
もちろんその際には失敗することもあるので、姑から嫁へと味噌作りの技術を受け継ぎ、味噌はその家庭の味を支える大事なものとして作られてきました。
現在味噌を手作りする家庭は少ないですが、発酵食品ブームや健康志向ブームなどがあったおかげで、味噌は見直されてきています。
また、外国の方が日本食で一番感動するのが味噌なんだとか。
日本から世界へ味噌の素晴らしさは広まっているのですね。
味噌を手作りするときに気をつけたいこと
味噌は発酵食品なので、一度作ると長持ちさせることができます。
その際に気をつけたいのが、雑菌の混入です。
全てを消毒することは不可能ですが、雑菌が入ってしまうと、麹の発酵するのと同時に、菌も繁殖してしまうことになります。
特に味噌は手でこねたり、詰めたりする作業があり、菌が混入しやすいです。
大豆を洗うときにも、しっかりと研がないと、汚れから菌が入ってしまいます。
気になる方は、初めは少量から手作りし、手袋などを使用してこねると良いです。
手作り味噌で一番失敗に繋がりやすいのが、大豆の浸水時間です。
しっかりと水を吸わせて、芯がない状態に炊き上げないと、きちんとした味噌にはなりません。
大粒でよく水を吸い、煮上がった際に美味しい大豆を使用しましょう。
大豆をよく洗い、汚れをしっかり落としたら、大豆の3倍の量の水につけます。
18時間以上経つと、大豆の大きさが2倍近くになります。
そうなってからようやく味噌にできるのです。
準備に時間はかかりますが、美味しい味噌を食べるためにしっかり下ごしらえしましょうね。
味噌を手作りするメリットとは
味噌を手作りすると、失敗もありますが、それ以上にメリットが大きいです。
まず、家庭の味にカスタマイズできるということです。
塩分や旨味の調整が自分でできますし、豆や麹にこだわって作成することができます。
熟成させたものが好きな方はたくさん仕込めば良いですし、作りたてを味わいたい方にも少量から作れるので向いています。
また、発酵食品でありながら、比較的少ない材料で作れるので、達成感を味わうことができます。
小学生などの頃から、「今日は味噌作りだよ」とイベントのように設定しておけば、自由研究の題材にもなりますし、食べ物のありがたみが理解できる食育の機会にもなります。
また、味噌はブレンドすると旨味が増すという報告があります。
なので、米味噌、豆味噌、麦味噌などをそれぞれ手作りして、最適のバランスを導き出すのも楽しいです。
熟成にも時間がかかるので、一ヶ月もの、三ヶ月もの、一年ものと食べ比べる楽しみもあります。
そうすると、麹が生き物だということもしっかり理解できる良いきっかけになります。
ジップロックで作れる少量から、一年分を仕込む樽作りまで、ぜひ挑戦していただきたいです。
特に樽で作る場合は、蒸した大豆をこねる作業などが一大行事になりますので、家族全員が参加できて良いですね。
味噌を手作りする上での注意点とありがちな失敗
味噌を手作りするときに、失敗しないように気をつける点がいくつかあります。
まずは、長期保存した米麹を使用しないこと。
麹は生き物なので、長い間放っておいたものでは発酵がうまく進みません。
「焼け麹」という状態になった麹は、他の何にも使用できないので、新鮮なものを使用してください。
また、大豆はしっかりとよく研ぎましょう。
汚れをしっかり落とさないと、美味しい味噌になりません。
米を研ぐ際には、水を何度もかえますよね。
それと同じように、大豆もしっかりと汚れを落とし、水が透明になるまで洗ってください。
そして、大豆にはたっぷり水を吸わせてください。
18時間水につけておくのは大変だと思いますが、しっかりと水を吸収した大豆でないと、煮あがりが硬く、きちんとした味噌になりません。
3倍の量の水が目安ですが、不安な場合は水を足すのもOKです。
とにかくたっぷりと吸水させてください。
大豆を煮る時も、芯が残らないようにたっぷり水を使ってくださいね。
目安は大豆の1.5倍の水の量です。
そして、煮る際には火元から離れず、吹きこぼれないように十分柔らかくなるまで煮てください。
親指と小指で潰せるぐらいの柔らかさが目安です。
麹と混ぜる際には、大豆を冷ましてからにしましょう。
熱いままだと麹が死んでしまいます。
大豆と麹と塩を全て同時に入れるのも失敗の原因の一つです。
均一に混ざるように、麹と塩を混ぜ合わせてから大豆と混ぜます。
そしてしっかりとこねながら混ぜることで、出来上がりが良くなります。
子どものいる家庭では、初めは子どもにこねさせて、仕上げを親がしてあげると良いですね。
樽で作る場合は、しっかりと重石をすることも重要です。
これらをないがしろにした場合、味噌の出来上がりにムラがあったり、大豆が固いまま発酵が進まなかったりします。
十分に気をつけて手作りしましょう。
失敗してしまった味噌のリカバリー方法
味噌を手作りした際に、失敗してしまった場合、どのようにしてリカバリーすれば良いのでしょうか?
まずはありがちな失敗の一つ、「カビが生えてしまった」場合です。
味噌を発酵させる際に、カビも同時発生してしまうことがあります。
樽の内側や表面にカビがある場合、そのカビの部分はしっかりと綺麗に取り除いてください。
そして35度以上のアルコールを染み込ませたガーゼで、樽の内側を消毒しましょう。
味噌と樽が面しているフチの部分に白いカビが発生していることがありますが、これをそのままにしておくと、味噌の旨味が損なわれてしまいます。
綺麗に取り除くことで、美味しい味噌へ変身できます。
また、漬けている最中に水が上がって来てしまうこともあります。
しばらく経っても水が吸収されない場合は、水は捨ててしまっても大丈夫です。
その後しっかりとかき混ぜておけば、発酵がきちんと進みます。
出来上がった味噌がやや固いなどの場合は、すり鉢であたってください。
おそらく大豆の芯が残ってしまったのが原因です。
これ以上柔らかくすることはできないので、すりつぶして使用しましょう。
失敗しない味噌の作り方と楽しみ方
手作りでも失敗しないために、味噌のしっかりとした作り方をご紹介します。
【道具】
・樽
・鍋
・ラップやキッチンペーパー、ガーゼなど
・重石
・押し蓋
【材料】
・大豆 230g
・米麹 353g
・塩 141g
※出来上がり1kg分
【作り方】
①大豆は前日によく洗い、18時間以上水につけておく。
②鍋に大豆を入れ、ひたひたぐらいに水を入れて煮る。
圧力鍋なら約20分、大鍋なら約3時間ほど。
親指と小指で挟んで潰れるぐらいの柔らかさにする。
③煮上がった大豆を袋などに入れ、手やビン、機械などで潰す。
④麹と塩を混ぜ、その後大豆と混ぜ合わせる。
固さの目安は耳たぶぐらいか、小指がすんなりと入るぐらい。
⑤団子状にまとめ、樽に移す。
こうすることで空気が抜け、発酵が早く進む。
⑥ラップや布を敷いて、押し蓋をする。
⑦重量の2~3割の重石をして約10ヶ月~1年寝かせると完成。
工程のどれも単純ですが、手を抜くとすぐに出来上がりに反映されてしまうシビアな食品です。
その分、自分で作った味噌の味は格別です。
時間はかかりますが、美味しい味噌を仕込んで、家族の健康を支えましょう。
味噌は日本が誇る発酵食品
味噌は手作りすると時間がかかりますし、失敗も多い食品です。
しかし、健康ブームのこの世の中で、しっかりと摂取したい食品の一つでもあります。
発酵食品のため体に良く、夏場も味噌汁を飲むことでバテにくくなるという報告があります。
旨味の塊なので、料理に使用すると調味料が少なくて済むのも嬉しいですね。
世界から注目されている味噌を、手作りしてみませんか?