まず、米油はその名の通りお米から作る油です。
お米から出来ているという事は、安心安全で健康に良さそうですが、最近耳にするトランス脂肪酸という、逆に体にはあまり良くなさそうなものですが、米油とどのように関係しているのでしょうか?
今回は、毎日自分や家族のために、油を使ってお料理をする人の豆知識として、米油とトランス脂肪酸の関係を紹介します。
米油は何からどのようにして作られるの?
一般的な植物油(サラダ油・大豆油等)のほどんどが、海外から輸入される原料で作られる中、米油だけは国産の農産物「米」が原料の all made in Japanなのです。
ところが米油の原料は、実はお米そのものでなく、玄米を精製した時に出来る米ぬかなのです。
米ぬかと言えば、ぬか漬けに利用されるお馴染みのもので、栄養価がとても高く、お料理から化粧品、入浴剤、肥料にまで色々なものに活用できる万能選手です。
そして便通改善や整腸効果、肌荒れ、花粉症、血糖値低下などの機能アップにつながる素晴らしい力を持っています。
そして、米ぬかはお米を精製する段階で、大量に発生します。
つまり、日本のあちこちの精米所や農協などで作り出されるため、国内全体で何十万トンもの供給力があります。
米油の原料は、日本で自給できる作物なのです。
菜種油や大豆油のような、輸入された遺伝子組み換え原料による、リスクの心配もないということです。
米ぬかから米油になる方法は、手間ひまがかかりますが、伝統的な方法でじっくり抽出する「低温圧搾法」。そして効率を重視した「高温圧搾法」や「溶剤抽出法」があります。
高温での酸化や溶剤添加など、私達の体への影響が気になるところですが、米油とトランス脂肪酸にはどのような関係があるのでしょうか?
そこで、まだあまり耳にすることの少ない、トランス脂肪酸についてお話します。
トランス脂肪酸って何?
トランス脂肪酸とは、常温で液体の植物オイル(サラダオイル等)に水素を添加して人工的に作られた固形・半固形のオイルのことを言います。
トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸(動物性脂肪)と同様に、過剰に摂取すると、心臓疾患のリスクが高まることが報告されています。アメリカでは原則使用禁止となっています。
糖尿病やがんの発症リスクを高め、脳梗塞や脳卒中などの原因にもなり、子供の脳の発育や、高齢者の認知症にも影響を及ぼすと言われています。
トランス脂肪酸は、本来ヒトの体内にはありません。
牛や羊の肉・ミルク・バター・チーズなどの動物性脂肪には、もともと含まれていますが、含有量はそんなに多くはありません。
一方、植物油を原料とするマーガリンやショートニング、マヨネーズなどはトランス脂肪酸の含有量が一挙に多くなります。
原料となるサラダ油は液状のため、バターやマーガリンのように固形や半固形にするために、化学処理によって水素を添加することでバターもどきを作っているのです。
そしてトランス脂肪酸となり、細胞や血管に脂肪が蓄積されます。
それに対して、米油などの植物オイルの不飽和脂肪酸は、体脂肪として蓄積しないで、エネルギーとして代謝されるのです。
米油にトランス脂肪酸は含まれているの?
トランス脂肪酸は天然もので最初から食品中に含まれているものと、人工的に加工・精製する流れでできるものがあります。
人工的なものは、マーガリンやマヨネーズ、ショートニング。
天然のものは、牛肉・羊肉・牛乳・乳製品の中に微量で含まれています。
そして植物や魚から取った油を精製する時に、高温処理を行います。
この時にもトランス脂肪酸が微量に含まれています。
つまり、体に良い米油でも、精製の方法によってはトランス脂肪酸を発生することになるのです。
やはり、手間ひまかけた「低温圧搾法」で作られた油の方が、体には優しいという事になります。
けれども、米油はもともと抗酸化成分をたくさん含んでいるので、たとえ加熱によって作られた有毒物質のリスクがあったとしても、他の植物油に比べると、かなり少ないと言えるのではないでしょうか?
トランス脂肪酸を取らないようにするには?
日本ではトランス脂肪酸が含まれているショートニングやマーガリンを使った食品は身近に、至るところにあります。
例えば、インスタントラーメン、カップ麺、スナック菓子、クッキー、ケーキ、ドーナッツ、パン、数えだしたらきりがないです。
使ってないものを探すほうが難しいぐらいです。
アメリカでは使用禁止になっていて、トランス脂肪酸の含有量の表示が義務化されているのに、日本ではなぜ、何も規制などがないのでしょうか?
最近はトランス脂肪酸フリーと記載のある食品を見かけることもあります。
やはり毎日自分や家族のためにお料理を作るものにとっては、時間と愛情をかけて、美味しくて、体によいものをと考えます。
私たちの心身は、今まで食べてきたもの、それを原料とした細胞で作られています。
数ヵ月後の自分を作るのは、今日食べたものです。
そう考えてると、日々の食事の大切さを身に染みて考えさせられます。
出来る限り、人工的な油(マーガリン、ショートニング)の代わりに、米油などの体に良い油に置き換えるようにする。
油で揚げたお菓子や、お惣菜は控えて、米油やごま油などで自分で揚げるようにする。
買い物をする時は、裏に記載してある原材料表示を、一度確認してみる。
新鮮な食材を買ってきて、1から自分で作ることは手間ひまがかかりますが、自分と家族の健康のために、少しずつ変えていくことが出来たらいいですね。
米油の魅力
米油は脂肪酸のバランスがとてもよいのです。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は常温で固体化することが多いので、酸化はしにくいですが、血管内で固化しやすいので、心臓血管系にリスクが生じます。
一方、不飽和脂肪酸は常温で液体化するので酸化しやすいですが、液体のため、体に蓄積されにくいものです。
そして何より血液中の余分な中性脂肪を減らし、血栓を防いでくれるというすばらしい能力もあります。
そして、米油の最大の魅力は、圧倒的にビタミンEの含有量が多く、植物油の中で唯一抗酸化物質「Yオリザノール」をたっぷりと含むことです。
このビタミンEは体内の脂質を酸化から守り、健康な細胞を維持するのに役立っているのです。
つまり、酸化しやすい飽和脂肪酸の欠点を抗酸化作用の強い「Yオリザノール」がカバーしてくれるのです。
その他にも、豊富に含まれる植物ステロールは、コレステロールを引き下げる働きが強いことで知られています。
天ぷらやフライなどの揚げ物をした時の、胃もたれの原因となる物質が少なく、トランス脂肪酸も出にくいのです。
カラッと揚がり、素材の味を引き立ててくれます。
とても口当たりが軽いので、胸やけもしません。
油自体も汚れにくいので、鍋に付着するごみも少ないのです。
美味しくて栄養価が高く、体に優しい米油は、是非毎日の生活に取り入れたい油です。
米油の美味しい取り入れ方
熱を加えても酸化しにくいことから、揚げ油としてよく使わてれています。
最近は米油で揚げたかりんとうやポテトチップスなど、低トランス脂肪酸の、体にもやさしくておいしいお菓子が増えてきています。
ここで簡単に自宅で作れる米油マヨネーズと米油クッキーを紹介します。
①米油マヨネーズ
【材料 作りやすい量】
・卵黄 2個分
・塩 小さじ1
・コショウ 少々
・酢 大さじ2
・米油 1カップ
・レモン 仕上げに少々
【作り方】
①ボールに卵黄・塩・コショウ・酢を入れて、もったりするまで泡だて器でよく混ぜ合わせます。
②米油を少しずつ加え、その都度よく混ぜ合わせます。
白っぽくクリーム状になったら出来上がりです!
※油は細くたらすようにして入れて、少しずつ乳化させます。
③仕上げのレモンを入れて混ぜ合わせます。
市販のマヨネーズにはない、作り立ての味です。
新鮮で軽くてさっぱりした、とても美味しい自家製マヨネーズです!
②米油クッキー
【材料 25~30個分】
・米粉 80グラム
・米油 25グラム
・アーモンドプードル 15グラム
・豆乳 20グラム
・砂糖 30グラム
・ベーキングパウダー 1グラム
・塩 1グラム
・グラニュー糖 仕上げに少々
【作り方】
①ボールに米粉・アーモンドプードル・砂糖・ベーキングパウダー・塩を振るい入れて、よく混ぜ合わせます。
②米油を2回に分けて加え、ぽろぽろになるまで泡だて器で混ぜます。
③豆乳を加えて手でまとめます。
このときは、練らないようにします。
④ラップに生地を包み、綿棒で5ミリ幅にのばします。
⑤型抜きして、仕上げに表面に豆乳をぬって、グラニュー糖をまぶします。
米油に米粉に豆乳という、とってもヘルシーなレシピですが、さくっとして軽いので、何個でも食べられるでしょう。
トランス脂肪酸を減らして米油を取り入れよう!
私たちの体は60兆~100兆個の細胞から出来ています。
そしてその細胞を覆っているのは油なのです。
油は、脳や目、内臓、皮膚、神経などにとっても、とても大事な役割を果たしているのです。
そして、その一つ一つの細胞にとって、毎日の食事から摂る油は、とても大事な栄養分となります。
米油をはじめとする植物油は、加齢による生活習慣病、がん、認知症などの健康上のリクにも備えることができます。
米油などの摂ってもよい油と、トランス脂肪酸などの摂らないほうがよい油を見極めて、私たちが心身ともに健康な生活を送られるように、上手に付き合っていきたいですね。