日本人の食事摂取基準というのをご存知ですか?
食事摂取基準では男女別、年代別のエネルギー必要量、脂質目安量、タンパク質目標量など、5大栄養素の必要な量が示されています。
エネルギー量がいわゆる「カロリー」と言われるものです。
今回は、60代の女性のカロリーについてや、適した食事の献立などについてもお話しします。
60代の女性の1日に必要なカロリー
女性は50代を境に、閉経が始まります。
それに伴って、女性ホルモンが急激に減少をし始めて、女性ホルモンを原料とする骨の元を作るための骨芽細胞が作られにくくなります。
女性ホルモンはコレステロールを原料としていますので、ホルモンの生成が減少することで50代を過ぎると、コレステロールが余るようになってしまいます。
コレステロールは脂質が原料なので、脂肪が余ってしまうということになりますね。
50代はまだ個人差がありますが、60代になればそれは明らかで、余分なコレステロールの摂取を控えないと、痩せている人でも、コレステロール値の高さを指摘されるようになってしまうこともあります。
さらに、20代を過ぎると、成長などに必要な基礎代謝量が減少し、60代になると1日の基礎代謝量は1100kcalで、小学校低学年の女の子と同じくらいになります。
そのために、60代の女性は1日に摂取するカロリーを控える必要がでてきます。
この1100kcalという数値は体重が53kgの女性の場合で、体重が違うと必要な基礎代謝量のカロリーも違ってきます。
53kgという体重も、身長が160cmなのか150cmなのかによっても、肥満・標準・痩せすぎとなります。
53kgの体重の女性なら、身長は156cmくらいが理想になります。
基礎代謝量が同じでも、この数値に身体活動レベルというものをかけますので、普通の生活をしている人なら、さらに1.75倍、スポーツ選手や体が資本の仕事をしている人は2倍します。
デスクワーク中心の人でも1.5倍しますので、60代の女性が1日に必要なカロリーは、最低でも1650kcal、接客や立ち仕事をしている人なら1925kcal必要となります。
ダイエットや栄養関係のサイトで、60代女性の1日に必要なカロリーは○○kcalと書いてあっても、身長や体重、生活内容で違います。
全員が当てはまるわけではないということです。
60代の女性の体重別基礎代謝のカロリー
カロリーのことだけを考えて食事をしていると、残っている大切な骨や筋肉量を減少させてしまうことになりますので、骨や筋肉を保ちながら、肥満にならないという工夫が大切です。
急激に体重を落としてしまったために、骨密度が下がってしまったり、サルコペニア肥満になってしまったら意味がないですね。
サルコペニア肥満とは、見た目が痩せている、細く見えるのに、骨や筋肉が少なくて脂肪が多いというタイプの肥満です。
中高年の女性に多く、高齢になっときに転びやすくけがをしやすいと、問題になっています。
普段から通勤や仕事で歩く人は大丈夫ですが、家の中でじっとしている人や、車通勤とデスクワーク中心の人は気を付けましょう。
そのためにも、適切なカロリーの量を知ることが大切です。
まずは、自分に適切な体重を知りましょう。
50代から69歳までの人は、40代までの人や70歳以上の人とBMIの基準値が違います。
60代の場合は、目標とするBMI値は20~24.9kg/m2になります。
自分の身長が155cmなら50kg~59kgまでは標準となります。
痩せていることが必ずしもいいというわけではありません。
健康診断の結果でBMI値が出されていますので、それを見るとわかると思います。
標準内の体重であれば、それをキープすることが大切です。
もし、この時にBMI値が25を超えていると、健康診断を行った医師や看護師から栄養指導や体操教室の参加を促されます。
指摘がない場合は、標準だと考えて良いでしょう。
体重が標準なら、そこから1日に必要な基礎代謝量を計算します。
基礎代謝量は、基礎代謝基準値というものをもとに計算します。
基礎代謝基準値は乳幼児が最も高く、52~59ですが、60代なら20.7前後です。
体重が50kgなら50×20.7で1035kcal、60kgなら60×20.7で1242kcalが基礎代謝量になります。
小柄な人と背が高い人では、同じ60代でも基礎代謝に必要なカロリーは違ってくるということですね。
働く60代の女性に必要なカロリー
今は、女性ということはもちろん、高齢でも仕事をすることが当たり前になってきました。
そのため、60代を過ぎても仕事を続けている人は珍しくありません。
そのため、同じ体重でも身体活動レベルによって、1日に必要なカロリーは違うということです。
自分の体重にあった基礎代謝量のカロリーがわかったら、ここから身体活動レベルをかけて計算します。
デスクワークの人は1.5倍、立ち仕事やハードワークな人は1.75倍します。
看護師や保育士・教師・外回りの保険の外交の仕事についている人は、その日のハードさで1.6~1.9に掛け率を変えるということもありです。
また、専業主婦でも介護をしている場合は、1.75に相当することもあります。
数は少ないですが、50代くらいならアスリートや農繁期の農家・建築現場・長距離トラックの運転手なら、最も高いレベルの1.9を掛けることもあります。
同じ60代でも体重50kg、家事中心の専業主婦の女性なら1日に必要なカロリーは、1035×1.5=1552kcalになります。
60kgでハードワーカーの女性なら1242×1.75=2173kcalとなり、同じ60代の女性でも、必要なカロリー、つまりエネルギー量はかなり違います。
ちなみに500kcalの違いは、カップラーメン1つ以上の違いとなります。
60代の女性に必要なカロリーをエネルギーにする栄養素
カロリーは、糖質・脂質・タンパク質から摂ることができますので、普通の食生活をしていれば、1日の摂取するエネルギー量が「0kcal」になることはありません。
エネルギーになる三大栄養素の摂り方が問題で、必要なカロリーの50~65%を糖質から摂取し、20~30%を脂質から摂取するように言われています。
痩せ気味で運動をしている人は、消費量を考えて脂質を、脳を使う仕事をしている人は、糖質を多めに摂っても普段の生活で消費する量が多いため、しっかりとエネルギーになります。
逆に不足することで立ち眩みや、脳貧血の原因になってしまいます。
そして、脂質や糖質がエネルギーになる時に必要な栄養素が、補酵素のビタミンB1、B2です。
ビタミンB1、B2は、糖質や脂質のカロリーをエネルギーに変える働きがあります。
ビタミンB1、B2は肉類や豆類・卵・チーズなどに多く含まれています。
ナッツ類にも多く含まれています。
ダイエットといって肉やチーズ、ナッツを避けてしまうと、せっかくの補酵素になる栄養を摂取できなくなります。
特に60代の女性は、基礎代謝量が若い女性よりも減少していますので、ビタミンB1、B2は必要不可欠です。
特に豚肉は、ビタミンB1を摂ることができる最適な食材です。
豚肉は太る、と避ける人がいますが、豚肉は糖質をエネルギーに変えてくれる優れた食材です。
もちろん、脂身を摂りすぎてしまうと、カロリーの摂りすぎになってしまいますので、上手に活用してください。
60代の女性が積極的に摂取して欲しい食べ物
女性は早い人で50代、ほとんどの女性が60代で骨密度が減少します。
骨粗鬆症の治療のために、女性ホルモンの薬をもらう人もいるくらいです。
筋肉や骨が弱くなっては、痩せても意味がありませんので、たんぱく質やカルシウム・リン・マグネシウム・ビタミンDをしっかりと摂ること大切になります。
そのための不可欠な食べ物が、乳製と大豆製品です。
肉や魚・乳製品・大豆製品・卵には、良質なたんぱく質・ミネラル(無機質)・ビタミン類が豊富に含まれています。
50代くらいまではスタイルがいい、細くて羨ましいといわれている人でも、60代くらいから背が縮みはじめて、小さくなったり背中が曲がってしまうこともあります。
そうなってしまったら、ほっそりしていたスタイルの良さも裏目になってしまいますね。
コレステロール値、血糖値が健康な状態で、筋肉量も減少しない、骨密度が保てる食生活が大切です。
女性は何歳になっても、外見が気になるものです。
痩せたい、きれいに見られたいというのは当然ですが、カロリーばかりを気にしていると、大切な体の骨幹が老化してしまいます。
年齢を重ねてからでは手遅れということもありますので、30代、40代のうちからしっかりと、骨や筋肉の貯金をしておきましょう。
60代の女性向けの食事献立
10代の子どもたちに必要な栄養は、1回の食事で13品目、1日39品目と言われています。
これは50代でも60代でも同じですが、子どもが育って家族が初老の夫婦2人になり、やがて1人になると、食生活がいい加減になっていきます。
よく1日30品目を摂りましょうと言われますが、1日に20品目さえ難しくなります。
体重は減っていきますが、それと同時に栄養不足になります。
最近、きちんと3食摂っているのに栄養失調状態になっているという、60代以上の女性が増えています。
ご飯と漬物やサラダ、納豆だけ、冷ややっこや煮豆だけでは、十分なたんぱく質やカルシウムは摂れません。
朝食はトーストと牛乳、昼食はカップ麺やソバ、うどんだけという人もいます。
牛乳を飲んでいるから大丈夫、1日3回食事している方大丈夫ではないのです。
60代でも1日に1500kcalは必要になりますので、トーストとコーヒー、カップ麺、ご飯に納豆では1日のカロリーは1000kcalを下回ります。
さらに、糖質やたんぱく質は取れても、脂質やビタミン、無機質が不足します。
トーストにマーガリンを塗ったり、漬物や卵をプラスしても、野菜が十分とは言えません。
60代だからこそ、1回の食事でたくさんの食品を摂る必要があります。
朝がパンの人は、トーストにマーガリンをやめて、ベーコン・レタス・きゅうり・トマトのサンドイッチにします。
果物と、チーズまたはヨーグルトを添えましょう。
コーヒーはブラックではなく、カフェオレにします。
これだけで、朝食が2品目から8品目になります。
昼食はカップ麺をやめて、麺類なら野菜をたくさん入れた汁を作ります。
冬ならなべ焼きうどんで、ネギや卵・鶏肉・しいたけ・にんじん・ほうれん草を入れます。
夏ならつけ麺にして、汁に鶏肉のささみ・なす・玉ねぎ・マイタケ・長ネギ・しょうが・みょうがを入れます。
うどん・醤油を入れると、10品目を超えます。
夕飯はご飯、豆腐や納豆にゴマと分葱のトッピング、焼き魚、キャベツともやし・ニラの野菜炒め、かぶの浅漬け、インゲンとわかめの味噌汁を添えると、12品目になります。
不足している分は、おやつで寒天を使った水羊羹、あんみつやところてん、フルーツゼリー、冬なら肉まんやお焼きをおやつにするくらいでちょうどよくなります。
肉好きな人は、元気で長生きをするといわれています。
カロリーを気にするのも大切ですが、それ以上にバランスの良い食事が大切です。
1日に1回は肉を摂りましょうね。
60代女性の人生の残りは30年
健康なまま65歳を迎えた人の余命は、25年と言われています。
平均寿命は80歳でも、それは子どもや若い世代で寿命を迎えた人も含まれます。
そのため、60代の女性の残りの人生は30年です。
つまり人生は90年と長いのです。
カロリーと食事のバランスを考えて、健康で楽しい老後を迎えましょう。