食品に使われる着色料に虫が使われていることへの安全と弊害

食品添加物の中には、天然の添加物もあります。

特に着色料では、昔から利用されていた、ヨモギの茶葉やシソ、ウコンやくちなしの実が有名ですね。

天然の着色料の中には、植物性のものもあれば、動物性の虫から抽出したものもあります。

動物性の虫の着色料にはどんなものがあるのでしょうか。

虫から取れる食品の天然着色料①コチニールとは

動物性の着色料は「虫」から抽出されたものになります。

中でも、コチニール(和名カイガラムシ・エンジ虫)は、古くから使用されている天然の着色料です。

ウチワサボテン属のサボテンに寄生する、カメムシ目カイガラムシ上科の、まさにカメムシのような形をした小さな昆虫です。

コチニールは「ナチュラルレッド4」「カルミンレッドK」「カルミンレッドMK-40」「カルミンレッドKL-80」「クリムゾンレーキ」と明記され、繊維や食品の着色料として用いられます。

コチニール色素はルネッサンス期には、毛織物用の高級染料として使われていました。

その後、絵の具にも転用され、さらに1世紀後、スペインではコチニールの製造方法を隠して新大陸産の「カルミン」という染料としてヨーロッパで巨額の富を築くことになります。

現代では、工場で工業的に乾燥させたラックカイガラムシ、コチニールカイガラムシから温水・熱水などで色素を抽出します。

繊維の他に、清涼飲料水、酒、菓子類、蒲鉾などの着色に使われています。

リキュールの「カンパリ」がコチニール色素で着色されていたこともあります。

加熱や発酵に対して色は安定しますが、pHにより色合いが変化し、酸性側でオレンジ色に、アルカリ性側では赤紫色になります。

コチニール色素は、タンパク質の多い食品で利用すると紫色になるので、これを防止するためにミョウバンなどの色調安定剤を添加することもあります。

虫から取れる食品の天然着色料②ユーグレナとは

ユーグレナは1880年代に発見された、ミドリムシと呼ばれる、単細胞真核藻類の一つです。

ミドリムシは鞭毛運動をする動物的性質をもつために「虫」という名前がついていますね。

そのため、ミドリムシと言う名前で呼ばれていますが、光合成もする藻の一種のため、植物に分類されます。

富栄養条件の淡水に生息し、水たまりや水田に見られる藻虫です。

少数ですが、海水の領域に棲む種類もあります。

葉緑体を持つことで、緑の色が着色料としても使われるようになりました。

ミドリムシは着色料としての添加物というよりも、その中に含まれるビタミンA・B群・C・Dと15種類のビタミン、DHA・EPAという魚と同じ不飽和脂肪酸、カルシウム・マグネシウムといったミネラル、たんぱく質が含まれているため、健康のために添加されています。

ミドリムシに、大葉やケールという緑黄色野菜を混合したサプリメントや、青汁も販売されています。

ミドリムシをユーグレナという名前で、クッキーやラングドシャ、飴やかりんとうと言った菓子類、飲み物と言った食品に添加されています。

今は栄養のために添加されていますが、ユーグレナを入れた菓子類は、抹茶を入れたような色になります。

着色料としての役割も果たしています。

虫からとれる着色料が使われている食品

日本では、コチニール色素は虫から抽出された、食品衛生法の既存添加物の一つとして定められています。

清涼飲料水、酒、菓子類、蒲鉾、他に調味料など、赤い色を保つための着色料として使われています。

各種の安全性試験の結果に、現時点では問題はありません。

FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会では、コチニール色素の一日摂取許容量を、体重1キログラムあたり5ミリグラムとしています。

成人一人の体重を、50キログラムとしたら、250ミリグラムまで大丈夫ということです。

コチニール色素は虫から抽出されるため、動物由来の食品として、菜食主義の人は信仰上の理由で口にできない食物の対象となっています。

コチニールの一番の用途は、イチゴやトマトの色を鮮やかにすることです。

そのため、イチゴのチョコレートやジャム、アイスクリームのほとんどに利用されています。

たとえば、イチゴのジャムを使ったパン・ソフトクリーム・カップクリームのイチゴ味・ヨーグルト・ゼリー・ドリンク・イチゴ牛乳には、必ずと言っていいほど使われています。

同じように、トマトソースやトマトケチャップにも使われます。

ハムやウインナーの色を付けるためにも利用されています。

虫からとれる着色料を使った食品の弊害

ユーグレナは「藻」ですが、コチニールは、カイガラムシ・エンジムシという「虫」です。

コチニールは、見た目もあまり良い物ではありませんし、カイガラムシのメスをすりつぶしたということを聞いただけで気持ちが悪くなりますね。

それだけでなく、コチニール色素を使った食品や、化粧品の製造に関わる人の中で、喘息やアナフィラキシーショックを起こす、といったアレルギーの発作が起こったという報告があります。

このアレルギー反応は、添加物として食品に入れた時に起こるものではなく、原料の虫、エンジムシ由来のたんぱく質が原因とされています。

普通は、エンジムシをコチニール色素にする過程で、アレルゲンを低くする処理をしています。

しかし、2012年に消費者庁が「コチニール色素に関する注意喚起」をしたことで、コチニール色素の使用を規制する事例が増えています。

たとえば、大手のカフェでは、消費者庁の注意喚起をきっかけに、イチゴ風味のメニューでコチニール色素の着色料としての使用をやめています。

虫以外のものを使った食品の着色料とは

食品を赤や黄、青、緑にする時に使う着色料には、虫の他に植物、鉱物が使われています。

コチニールがアレルギーの原因に成り得るということですが、だからといって他のものなら絶対に大丈夫と言うわけではありません。

例えば、赤色は全部で7種類あります。

赤色、青色と書いてあるものは、タール系色素と言われて、原料は「石油」精製の際に出るナフサを原料としています。

鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィルという食品用の着色料もあります。

銅クロロフィルは、蚕のフンを原料にするので、こちらも「虫」を原料にした食品用の着色料になります。

鉄クロロフィルは健康食品にも使われますが、羊羹やキャラメル、アイスクリームなどに使われています。

鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィルは、ほとんど同じ用途で使われています。

このように、食品添加物の着色料は色々なものが使われているのです。

コチニール色素は、アレルギーの原因となるため規制がかかっていますが、タール系色素を規制している国もあります。

つまり植物の色素でもアレルギーになる人はいるそうです。

虫の着色料は口紅にも使われている

コチニールは、身体には害の少ない天然の着色料として、食品以外にも使われています。

その代表的なものが「口紅」です。

コチニール以外で赤色を添加するものには、タール系色素があります。

タール系色素の原料は、石油精製の際に得られるナフサを原料としています。

現在使われている着色料は、天然の色素以外では、このタール系色素になります。

口紅に使われているのは、コチニール色素かタール系色素のいずれかになるでしょう。

アレルギーの問題が起こってからも、ほとんどの口紅はコチニール色素を使用し続けています。

実際口紅は、食べるものではないから大丈夫と思っていませんか。

ただし女性は一生のうちに、口紅1本分を食べていると言われます。

口紅をちょくちょく付け替える人や、休みでもつける人、何度も塗っている人、唇をなめる癖がある人は、もっと多く食べている可能性があります。

タール色素の口紅の場合は添加物入りになりますが、コチニール色素の場合は原料が虫のため天然色素となり、無添加の口紅に分類されます。

そのため、無添加の口紅だから大丈夫と思っていても、コチニール色素はアレルギーの原因とされていますので注意は必要ですね。

またコチニール色素、タール系色素を使わない口紅の赤は、「酸化鉄」を使っています。

それから昔は口紅の色素に「べに花」を使っていました。

今でもわずかですが、コチニール色素、鉱物色素、タール系色素不使用のべに花のみ使用した本当の自然派口紅があります。

商品を購入する際は表示をチェックしてみよう

食品でも化粧品でも、使用される着色料は色々とあり、原料も様々です。

虫を使ったものがあると知らなかった人は、ビックリしたのではないでしょうか。

商品を購入する際は、表示をチェックしてみるようにしましょう。

もしも自分で調理して着色する際は、昔ながらのヨモギやシソなどの植物を使うと、安心して食べることができますね。