パンに塗るのに欠かせないマーガリン。
そのマーガリンには、健康に悪影響を及ぼすといわれるトランス脂肪酸という成分が含まれているため、問題となっています。
トランス脂肪酸はどうして体に良くないといわれているのか、なぜマーガリンに入っているのか、マーガリンの代用としてパンに塗るには何がいいのかなどについてお話しします。
マーガリンに含まれているトランス脂肪酸って何?
マーガリンには体に良くないといわれているトランス脂肪酸が含まれていますが、そもそもトランス脂肪酸とは何なのでしょうか?
簡単に言うと、人工の油脂です。
マーガリンは植物油を固めたものですが、本来は液体である油を固体化させるためには、水素添加と呼ばれる工程を経なければなりません。
その過程で生じるのがトランス脂肪酸です。
また、植物油や魚油など天然の油にある臭いを消すために高熱処理が施されますが、その過程でもトランス脂肪酸が生成されます。
つまり、油類を工業製品化させる過程で必然的に生じてしまう副産物のようなものです。
そのトランス脂肪酸に、悪玉コレステロールを増やして善玉コレステロールを減らす働きがあることがわかりました。
そのため摂りすぎると心疾患を招く恐れがあり、アメリカをはじめ欧米諸国は一斉に規制する方向へと向かったのです。
トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングだけでなく、コーヒークリーム、パン、クッキー、ケーキ、スナック、フライドチキンやフライドポテトなどにも入っています。
中でも、ショートニングとマーガリンに含まれる量が群を抜いて多いため、問題となっているのです。
ショートニングはサクサクと軽い仕上がりになる油脂ですが、日本の家庭ではあまり使われません。
一方のマーガリンは、多くの家庭で親しまれています。
特に毎朝食パンに塗っているというかたが多いでしょう。
植物性でヘルシーと思っていたら、実は体に良くない可能性があるとわかったのですから大変です。
もともとバターの代用として登場したマーガリンですが、さらに代用が求められるようになったというわけです。
マーガリンにトランス脂肪酸はどれくらい入っているの?
マーガリンにトランス脂肪酸はどれくらい入っているのでしょう。
100g中0.36~13gといわれています。
平均して約7g入っていると考えられます。
100gではピンと来ませんから、パンに塗る1回分である10gに換算すると約0.7g入っていることになります。
マーガリンの約7%がトランス脂肪酸というわけです。
含有量が1%未満のものが多い中、7%はやはりとびぬけて高い数値といえます。
実はトランス脂肪酸の問題が起きてから、メーカーは自主的に含有量を少なくしたり、積極的な情報公開に踏み切るなど対策をとり出しました。
その結果、現在市場で流通しているマーガリンのほとんどが、問題勃発時より含有量が大幅に減っています。
日本のマーガリンの含有量は、アメリカだと「トランス脂肪酸0%」と表示されるレベルだといわれるほどです。
それでもなお含有量の少ないマーガリンが欲しいというのであれば、一般のスーパーなどでは出回っていないマーガリンを選びましょう。
ネットショップで販売されていますし、トランス脂肪酸の含有量を詳しく調べられます。
スーパーなどに出回っている商品を見てみると、「バター風味」「べに花」とあるものは比較的トランス脂肪酸の含有量が多めです。
逆に「ケーキ用」「製菓用」とあるものは含有量が少なめです。
いずれも同じマーガリンの類なので代用になるとまではいきませんが、気になるのなら換えてみるのもいいですね。
トランス脂肪酸が入ったマーガリンの代用はバターでも大丈夫?
トランス脂肪酸が含まれたマーガリンの代用として思いつくのは、なんといってもバターではないでしょうか。
マーガリンこそバターの代用として登場したのに、そのマーガリンの代用として再びバターが登場するとは本末転倒な気もしますが、バターが今注目されているのは事実です。
バターはご存知のように乳製品です。
トランス脂肪酸は牛や羊といった反芻動物でも生成されるため、牛肉・羊肉・乳製品全般に微量ですが含まれています。
バターにも含まれており、含有量は100g中約2gです。
パンに塗る1回分10g中に約0.2g入っていることになります。
トランス脂肪酸含有量だけみれば、マーガリンよりずっと少ないのでおすすめです。
味ももともと風味豊かでおいしいですし、少し温めればパンにも塗りやすくなります。
しかし、高カロリーなのが気になる、というかたがいらっしゃいます。
確かに動物性脂肪なのでバターは高カロリーです。
その点マーガリンは植物性なので低カロリー、と思っていませんか?
しかし、そのカロリーを調べてみると意外にもほぼ差がないのです。
厚労省のデータによると、100g中の脂質含有量は、バターが81.7~84.7g、マーガリンが81.5~85.5gです。
平均でバターが約83.2g、マーガリンが約83.5gとほとんど変わりません。
ちなみに大さじ1杯のカロリーが、マーガリン約91kcal、バター約90kcalとほぼ同じです。
むしろバターのほうが低いほどです。
しかもバターにはビタミンも入っていて栄養豊富です。
安心してマーガリンの代用にバターが塗れますよね。
ただ昨今はバターが品薄で、あっても値段が高いことが多いです。
経済的なことを考えると躊躇してしまうかたもいます。
マーガリン、バターの代用となるものはあるのでしょうか。
マーガリンの代用でパンに塗っておいしいものは?
トランス脂肪酸が含まれたマーガリンの代用としてバターをパンに塗るかたが最も多いようですが、中にはオリーブオイルというかたもいます。
オリーブオイルの産地イタリアでは、おかずを食べ終えた皿に残っているオリーブオイルをパンで拭って食べる習慣があります。
また、パンにオイルをかけてトマトや生ハムをのせて食べたり、あるいはそのまま食べたりします。
そうした風習をとりいれて、オリーブオイルとフランスパンでいただくのがおすすめです。
また、オリーブオイル独特の香りが苦手というかたもいますよね。
今はオリーブオイルといってもたくさんの種類があります。
生でそのまま食べてもおいしいタイプを選ぶと香りが気になりませんよ。
オリーブオイルの次に多い意見が、話題のココナツオイルを使うというものです。
甘い独特の香りが好きというかたが多い反面、その甘い香りがイヤというかたも多く、賛否両論です。
他には、はちみつやジャムという意見も多いです。
しかし、もともと甘いのが嫌いでマーガリンを塗っていたかたからすると、なかなか受け入れられないようです。
こうしたかたから支持されているのは、カッテージチーズやクリームチーズ、サワークリームなどのチーズ系です。
マーガリンなしでもコクと風味がたっぷりありますし、タンパク質もとれると好評です。
乳製品のためチーズにもトランス脂肪酸が含まれていますが、マーガリンに比べればかなり少量なのでおすすめです。
マーガリンの代用品でおいしいお菓子が作れる!
マーガリンはパンに塗って食べる以外、お菓子作りにもよく使われます。
しかし、トランス脂肪酸が多く含まれているとあっては、他のもので代用できないかと考えますよね。
たいていの場合、マーガリンの代用としてバターが使えます。
カロリーがほぼ同じである上にビタミンも入っています。
塩分が気になるなら無塩バターを使えばOKです。
コクのある仕上がりになります。
バター以外なら、オリーブオイルも使えます。
お菓子作りには向いてないと思われるかもしれませんが、意外に合うのです。
特にバナナケーキやキャロットケーキに最適です。
またクッキーやビスケットをオリーブオイルで作ると、食事にも合います。
これにハーブやヨーグルトを混ぜると風味が増します。
普通のスポンジケーキはマーガリンもバターもなしで作ることができます。
トランス脂肪酸を考えるならマーガリン以外にも目を向けて
ここまで、トランス脂肪酸が多く含まれているマーガリンについてや、代用品を用いることについて考えてきました。
しかし、トランス脂肪酸はマーガリンに含まれているだけではありません。
以下のような食品にも含まれています。
・食パン
・ロールパン
・クロワッサン
・菓子パンなどパン類
・カップめんやインスタントラーメンなどの即席めん
・ケーキ
・パイ
・ドーナツ
・クッキー
・スナックなどの菓子類
・マヨネーズ
・カレールウ
などです。
にもかかわらず、トランス脂肪酸といったらマーガリンという情報のみクローズアップされているように見えます。
実際、マーガリンはメーカーで着々と対策がとられていますが、他の食品に関してはどうでしょう。
一部パンメーカーで対策がとられていますが、小売店までは浸透していないようです。
その他の食品に関しては、総カロリー量について対策がとられても、トランス脂肪酸に関して語られることは全くといっていいほどありません。
確かに総カロリー量を抑えれば必然的にトランス脂肪酸の摂取も抑えられるため、方向としては合っています。
しかし、企業として、トランス脂肪酸を意識しているといえるのでしょうか。
日本人はマーガリン単体での摂取より、お菓子やパン、油脂類からの摂取のほうが多い傾向にあるといわれています。
それだけに消費者である私たちのほうこそ、ふだん口にするものに対し、もっと注意深くなるようにしないといけませんね。
食生活全体からトランス脂肪酸の摂取を減らしていこう
現代は消費者の健康への関心がかつてないほど高まっています。
体に良くないといわれるトランス脂肪酸を100%なくすことはできなくとも、少しずつ量を減らしていくことはできます。
そのためには脂質全体の摂取量を減らすことが大切です。
幸い多くの消費者がカロリーについての意識をもち、できるだけ摂取を控えるようにしています。
これからもこうした姿勢を保ち続けることがマーガリンはもちろん、トランス脂肪酸を減らしていくことにつながっていくのだと思います。