「油」というと、ネガティブなイメージを持っている人もいるでしょう。
ダイエットや、健康の敵のように思われていますよね。
しかし、本来、油は体にとって必要な栄養素です。
油について学び、正しく摂取していきましょう。
今回は、「植物油」と「植物油脂」についてお話していきます。
植物油のことを知ろう
植物油と植物油脂は、名前が似ているので、混同してしまっている人もいるかもしれません。
しかし、実は全く違う油です。
今回は、油についてお話していきます。
ひとつずつ説明していきますね。
まず、植物油についてです。
植物油とは、植物に含まれる脂肪を抽出し、精製したものです。
そもそも、油には2種類あります。
植物油と動物油です。
その植物油も、いくつかの種類に分類されます。
皆さんに最もなじみがあるのは、キッチンに常備してある、サラダ油ですよね。
サラダ油は、大豆油やひまわり油、ごま油などのことです。
このサラダ油は、体に良くない効果も報告されており、摂取のし過ぎには注意が必要とされています。
サラダ油ではない植物油もあります。
オリーブオイルや亜麻仁油などの油です。
これらの油は、健康によい効果をもたらしてくれると言われています。
この2種類の植物油、いったい何が違うのかと言いますと、脂肪酸と呼ばれる成分です。
皆さんも、聞いたことがあるかもしれません。
・飽和脂肪酸
・不飽和脂肪酸
という2種類に、脂肪酸は分けられます。
植物油は体に良いものと良くないものがある
飽和脂肪酸は、バターや牛脂由来の動物油に多く含まれています。
常温で固形になるという特徴があります。
一方、不飽和脂肪酸は、植物油に多く含まれています。
常温で液体になります。
この不飽和脂肪酸は、さらに3つに分類されます。
①オメガ3脂肪酸(魚介類・亜麻仁油・しそ油・えごま油・魚油・クリルオイル)
②オメガ6脂肪酸(紅花油・ひまわり油・大豆油・ごま油・サラダ油・トウモロコシ油・マヨネーズ)
③オメガ9脂肪酸(オリーブオイル・アボカドオイル・米油)
サラダ油が属しているのは、②のオメガ6脂肪酸です。
オリーブオイルが属しているのは、③のオメガ9脂肪酸です。
この違いが、健康的な油かどうかの違いになってきます。
ご家庭で使われている主な植物油は、ほとんどオメガ6脂肪酸に属しています。
このオメガ6脂肪酸は過剰摂取で、ガンや糖尿病、アトピー、認知症の原因となると言われています。
ですから、体に良くないと言われているのです。
しかし、実はオメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸は、体内で生成することができない必須脂肪酸なのです。
ですから、まったく摂取しないというのも、体に良くないという悩ましい問題もあります。
適度に摂取するというのがベストですが、なかなか難しいですよね。
オメガ6脂肪酸は、1日約9gの摂取量が目安ですから、それを超えるようであれば、オリーブオイルを使うなど工夫をすると良いですよ。
動物油、植物油ともに、体に必要な栄養です。
よく理解して、上手に摂取しましょう。
次項では、植物油脂についてお話します。
体に良くない油、マーガリン・植物油脂など
近年、話題になっている「トランス脂肪酸」という言葉を聞いたことがありますか。
2015年、アメリカ食品医薬品局が、トランス脂肪酸の加工食品への使用を全面的に禁止しました。
トランス脂肪酸は、部分的硬化油とも呼ばれ、植物油に水素を添加して作られた化学物質のことです。
ようするに、トランス脂肪酸は、部分的硬化油に含まれている、主要な脂肪酸の成分のことなのです。
私たちが、普段口にしている多くの食品に、この部分的硬化油(トランス脂肪酸)は使われています。
マーガリン・植物油脂・ショートニングなど、いろいろな名前で使われているので、気付いていない人もいるかもしれません。
この部分的硬化油が、大きな問題を抱えていると言われているのです。
バターとマーガリンの違いも、実はこの部分的硬化油が関わってきます。
バターは、普通牛乳から作られますよね。
バターを作るためには、多くの労力が必要になります。
乳牛を育てるために多くのエサを食べさせ、たくさんの牛乳を生産する必要があります。
多く牛乳が採れたからといって、それがすべてバターになるわけではありません。
100gのバターを作るには、2リットル程度の牛乳が必要になるのです。
多くの手間暇をかけて、バターは少ししか作れないため、高価になります。
しかし、ここで部分的硬化油が登場します。
植物油脂などの部分的硬化油とは何からできている?
部分的硬化油は、大豆やトウモロコシから絞られた油から作られます。
乳牛のエサに過ぎなかった大豆や、トウモロコシから絞って作られた油に水素を添加するだけで、まるでバターのように柔らかく、パンに塗りやすい物質が生まれました。
それがマーガリンです。
まるでバターのように売られているのに、乳牛が全く関わっていない、科学的に作られた物質なのです。
安く作れてバター同様に使え、しかもバターより少し安いくらいの値段で売れるマーガリンは、大変重宝されました。
マーガリンが問題なのであれば、マーガリンを買わないようにすればよいですが、そう簡単ではありません。
マーガリンは、名前を変えて市販されているパンやお菓子、インスタント食品にも含まれています。
お菓子のパッケージの原材料名を見てみてください。
「ショートニング」や「植物油脂」と書いてありませんか?
これは部分的硬化油のことです。
安くて扱いやすい部分的硬化油は、私たちの食生活のすみずみに浸透してしまっているのです。
「植物油脂」と表記されているので、「植物油」のことだと思っている人もいるかもしれませんが、実は全く違うものなのです。
植物油脂を摂取するリスク
しかし、部分的硬化油は、一般的に食用とされる大豆油やトウモロコシ油に水素を添加しただけなのだから、そこまで体に悪いわけではないのではと、考える人もいるかもしれません。
マーガリンなどの部分的硬化油は、もともと植物油から作られるので、バターや牛脂などの動物油よりはカロリーが控え目です。
ですから、カロリーオフで健康的と言われていました。
しかし、近年の研究の結果、部分的硬化油に含まれるトランス脂肪酸の悪影響が表に出てきました。
トランス脂肪酸の含有量が多い油は、血中の中性脂肪と悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させるというのです。
特に、トランス脂肪酸の含有量が多いマーガリンは、心臓などの循環器系のリスクが、最も高くなるそうなのです。
つまり、マーガリン・植物油脂・ショートニングなどは、心臓発作などのリスクを高め、動脈硬化などを引き起こしやすくするということになるのです。
低カロリーだから健康的というわけではないのです。
トランス脂肪酸は、自然界にも存在するので、まったく摂取しないようするのは難しいことです。
ですが、食べものに含まれているトランス脂肪酸を意識するだけでも、変化はあると思いますので、ぜひ注意をしていただきたいと思います。
トランス脂肪酸の摂取量は、その食品の持つエネルギー量の1%未満であれば、心疾患リスクを上昇させないと言われています。
農林水産省のホームページに、「食品に含まれる総脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量」というページがありますので、参考にしてみてください。
良質な植物油を摂取しよう
植物油脂が、植物油とまったく違う油であることがわかりましたね。
しかし、本来「油」は、人間の体になくてはならない栄養のひとつです。
3大栄養素は、炭水化物・タンパク質・脂肪(油)ですよね。
油は人間が活動するためのエネルギー源として、絶対に必要な栄養でもあるのです。
加工品が多く流通している現代だからこそ、良質の植物油を摂取しましょう。
前の項でお話したように、オメガ6脂肪酸は控えめに、オメガ3脂肪酸とオメガ9脂肪酸は、体に良い油と言われていますので、積極的に摂取しましょう。
特に、オメガ3脂肪酸は、体内で生成できませんので、食べものから摂取する必要があります。
オメガ3脂肪酸は、血中の中性脂肪を減らし、生活習慣病予防の効果が期待できます。
▽オメガ3脂肪酸
・えごま油
えごまとは、一年草のシソ科植物のことです。
オメガ3脂肪酸が、約60%含まれています。
・亜麻仁油
亜麻仁は、亜麻科植物の種子(仁)のことを指します。
上記の油は熱に弱く酸化しやすいため、加熱せずにドレッシングなどで食べるのが良いですよ。
▽オメガ9脂肪酸
・アボカドオイル
アボカドの実を絞って作られています。
そのため、アボカドの栄養がしっかりと入っている油です。
ビタミンEが豊富に含まれており、高い抗酸化作用が期待できます。
・アルガンオイル
モロッコにしか存在しない、アルガンの種子からとり出される貴重な油です。
美髪や美容に効果的と話題になっていますが、食用でも有益な油です。
ビタミンEが豊富で、高い抗酸化作用が期待できます。
・椿油
髪を整える油として、日本でも昔から使われてきました。
酸化しにくいので、加熱して食用にするのもおすすめです。
成分の80%以上がオメガ9脂肪酸であるオレイン酸ですので、悪玉コレステロールを下げる効果が期待できます。
もったいないようですが、椿油で天ぷらを揚げると胃もたれしにくいですよ。
学んだことを食生活に生かそう
健康のために、油を控えている人もいますね。
体に良くない油が存在しているのは、事実です。
ですが、健康のために、油は適度に摂取する必要があります。
今回、油について学びましたので、少しは健康のお手伝いができたでしょうか。
いろいろな油について知り、上手に選択して摂取していけたら良いですね。