1歳半の子が食事を噛まずに丸飲み?噛まない原因と改善方法

生後5か月頃にスタートした”離乳食”も1歳半過ぎには卒業を迎えます。

食材を柔らかくしたり裏ごししたり大変だった食事の準備からもやっと解放されると思いきや、また別の壁にぶつかります。

離乳食を卒業し幼児食へと移行する1歳半頃の子どもに多いのが、「食事を噛まない」という新たな悩みです。

1歳半ならではの食事を噛まない原因を知り、改善方法を学びましょう。

食事を噛まないのは日本人全体の問題!?

戦前の日本人は1回の食事で1400回以上噛んでいたのが、現代人は半分以下の600回ほどしか噛まないというデータがあります。
食事を噛まないというのは1歳半前後の子どもだけではなく、私たち大人にも共通した問題と言えます。

日本人全体が食事を噛まなくなった原因は食生活の変化にありました。

主食が玄米や麦ごはんから白米・パンへと変わり、おかずも根菜や乾物を使った歯ごたえのあるものから加工品を多く使った柔らかいものを好むようになってきました。
美味しいと表現する時に「なめらか」「口どけが良い」「とろける」など柔らかさを表す言葉が多いことでもその傾向が分かります。
口どけが良いものは確かに美味しいですが、噛むことで感じられる旨みがあることも忘れてはいけません。

また日本人が食事にかける時間が短くなっているのも、食事を噛まない原因のひとつとされています。
仕事で忙しく食事時間が取れない人や、そもそも早食いが癖になってしまっている人など様々ですが、わずか10分ほどで食事を終えてしまう人が増えています。
早食いでは満腹感が得られにくく、食べ過ぎ・肥満にもつながりかねません。

さらに食事を十分に噛まずに飲み込んでしまうと消化にも影響を及ぼします。
胃腸炎や体調不良ではないのにいつもおなかが痛いという人は、食事を噛まないのが原因かもしれません。

また消化不良だとおなかが痛くなるだけでなく、栄養素の吸収が上手くできない可能性もあります。
噛まずに飲み込む癖がついてしまっている人は早めに改善した方が良さそうです。

このように食事を噛まない原因と影響は色々ありますが、1歳半前後の離乳食を卒業したばかりの子どもには大人とは違う食事を噛まない理由がありました。

噛まない原因を知って正しい対策をしてあげましょう。

1歳半の子どもは食事を噛まないのではなく噛めない?

生まれたばかりの赤ちゃんは母乳やミルクだけを飲んでいますが、生後5か月頃になると離乳食で食べる練習を始めます。

1歳半頃には離乳食から幼児食になり色々なものが食べられるようになりますが、そこでお母さんたちを悩ませるのが「食事を噛まない」ことです。
近年は食事を噛めない子が増えていると言われています。

1歳半前後の子どもが食事を噛まない大きな理由は「歯」にあります。
柔らかい食べ物ばかり食べていて噛まない癖がついてしまっているケースもありますが、そもそも噛む準備が整っていないのです。

乳歯は生後5~8か月頃から下2本、上2本…と順番に生えていき、1歳半頃には奥歯(第一乳臼歯)が生え合計12本になっている子が多いようです。
乳歯20本が生え揃うのは3歳くらいとされています。
ただし歯の生え方・スピードは個人差が大きいのであくまで目安として捉えてください。
上下の第一乳臼歯が揃うとやっと”噛んですりつぶす”ことができるようになります。
それ以前は歯茎を使って食べ物をつぶすしかしかないのです。
そのためあまり固いものを与えても噛めないので無理やり飲み込んだり固いものを拒否するようになるので注意が必要です。
上下の第一乳臼歯が揃った時期に食べられるのは大根の煮物ぐらいの固さが目安になります。

お肉や繊維質の多い根菜類はまだこの頃は噛み切れず食べにくいでしょう。
噛む練習だからと無理に固いものを与えるのではなく、子どもの歯の成長に合わせて食事の固さをコントロールしてあげてください。

1歳半の食事の固さの目安は?

先ほど説明したように、1歳半の子どもは上下合わせて12本の歯しかなく、噛まないのではなく噛めない食材も多くあります。

離乳食を卒業したとはいえ、いきなり大人と同じ固さのものを噛むのは不可能です。
子どもの成長に合わせた食材の固さにすることで、自然と噛む力がついていくので目安の固さを覚えておきましょう。

まず野菜類の固さの目安を説明します。
人参や大根・ブロッコリーなどは大人用より1~2分長めに加熱し柔らかくすれば比較的食べやすく、スティック状にして出すとつかみ食べの練習にもなるのでオススメの野菜です。

ほうれん草や小松菜などの葉野菜は1~2cmくらいの幅に切り、柔らかめに茹でたものを食べさせます。
茎の部分は特に繊維っぽいので長めに茹で、指でつぶせるくらいにしましょう。

キャベツや白菜も意外と繊維が多く噛み切りにくい野菜なので、ロールキャベツのように柔らかく煮込んでからあげてください。

レンコンやゴボウなどの根菜類は指でつぶせる程度の柔らかさにします。
普通に煮込むとかなり時間がかかるので圧力鍋があると便利です。

続いて肉類ですが、1歳半頃はひき肉を使った料理がメインとなります。
ハンバーグや肉団子などは肉だけで作ると少し固すぎるため、豆腐を加えるのがオススメです。
あまり知られていませんが、お麩をすりおろしたものを入れると冷めても柔らかく仕上がるのでぜひお試しください。

薄切り肉を使う場合は筋の部分を避け小さく切ってから食べさせましょう。
肉や魚は加熱しすぎるとパサパサして飲み込みにくくなるので気を付けてください。

1歳半でも噛みやすい・食べやすい固さが基本ですが、のどに詰まらせるのが心配だからと柔らかすぎるものばかり与えていても噛む力が育ちません。
固いor柔らかいだけでなくパリパリ・サクサク・ふわふわなど色々な食感を楽しめるような食事を心がけましょう。

食事を噛むことで得られるメリット・噛まないことのデメリットは?

昔から「食事はよく噛んで食べるように」と言われてきましたが、噛むとなにがいいのか、噛まないとどんな問題があるのか考えたことがありますか?

毎日何気なく行っている「噛む」という行為は単に食事の消化吸収だけでなく、実は全身の健康に関わっています。
その中でも興味深いものをいくつか見ていきましょう。

1つ目は脳の発達です。
しっかりと噛むことで脳への血流が増え、脳の働きが活性化すると言われています。
特に1歳半頃は言葉を覚えたり手先が器用になってきたりと成長が著しい時期です。
よく噛むことと頭が良くなることの直接的な因果関係は分かっていませんが、日々の遊びだけでなく食事でも脳を刺激してあげましょう。

2つ目は歯への様々な影響です。
食事をよく噛まないとアゴの骨や筋肉が十分に成長しないため、アゴが小さくなり歯並びが悪くなってしまいます。
歯がガタガタだと見た目が悪いだけでなく、余計な隙間や溝があるため磨き残しが起こりやすく虫歯になりやすいとされています。
逆によく噛むことでアゴが大きく育ち歯並びがよくなる、唾液が多く出るため虫歯も予防してくれると一石二鳥です。

3つ目は肥満予防です。
食事をよく噛むことで脳の満腹中枢が刺激され、おなかがいっぱいだと感じられるのです。
これは子どもだけでなく大人にも共通して言えることですが、食事を噛まないと満腹感が得られにくく食べ過ぎ・肥満に繋がります。
子どもの肥満も社会問題になりつつあるので、食事内容やカロリーだけでなく噛むことで肥満予防を心がけましょう。

上記3つ以外にも味覚の発達、消化吸収を助ける、発音が良くなったり表情が豊かになるなど色々なメリットがあります。
小さな頃からしっかりと噛む習慣をつけ、健康な身体を手に入れましょう。

1歳半の子どもに効果的な改善方法 その①

1歳半の子どもは歯が生え揃っていなくて食事によっては噛むのが難しいですが、主食であるごはんや柔らかくした野菜などは子どもの歯でも十分に噛むことができます。
それでも丸飲みしてしまったり、3~4回モグモグしただけで飲み込んでしまう子は噛む練習が必要です。

歯の成長の関係で「噛めない」のではなく「噛まない癖」がついている子どもには、敢えて大きめ・固めの食事を出してみましょう。
ただし急に固くし過ぎると拒否される危険性もあるので、少しずつ変化させるのがポイントです。

食事だと噛む練習がうまくいかないという場合は、おやつを変えてみるのも1つの方法です。
子どものおやつは3食の食事だけでは足りない栄養を補うための「補食」の意味合いが強いので、甘いお菓子や市販のお菓子ではなく、おにぎりや野菜スティック、果物が理想とされています。
果物だとりんごや梨などが噛む練習にはいいでしょう。

市販のお菓子の場合は食べる目安の年齢が書かれているので、成長に合わせて選んでください。
大きくなってもベビーせんべいやボーロなど口どけのよいものばかりではなく、おせんべいなどちょっと固めのものを選ぶのがオススメです。

噛む練習にと固いものを食べさせたくなりますが、1歳半では気を付けなくてはいけない食材もあります。
例えばナッツ類は誤って飲み込んでしまうと窒息の恐れがあるため、そのまま食べさせるのは3歳を過ぎてからがよいとされています。
同じようにお餅も噛みにくくのどに詰まらせる危険性が高いので、1歳半ではまだ早いでしょう。

食事を噛まない子どもの練習として使う食材は普段食べ慣れているものにし、大きさや固さだけ変化をつけ、様子を見ながら少しずつステップアップしてください。

1歳半の子どもに効果的な改善方法 その②

先ほどは食事の内容や固さを工夫して噛む練習をする方法を説明しましたが、次は子どもの「真似したい」という気持ちをうまく使った方法です。
すでに食事の大きさや固さを変えてみたけどうまくいかないという方はぜひ試してみてください。

1歳半過ぎの子どもは少しずつ自我が生まれてきます。
今まではお母さんにお世話されるがままだったのが、”自分でやってみたい””大人と同じことをしたい”などの気持ちが育つのがこの時期です。

例えば今まで食べさせてもらってばかりだったのが、スプーンやフォークを使って食べようとしたり、自分で着替えにチャレンジしてみたりと色々な場面で真似が始まります。
もちろん最初からうまくはいかず泣いたり怒ったりしますが、出来る限り見守ってあげたいですね。

その1歳半の真似したい欲求を逆手にとって、大人がよく噛んでいる姿を見せるのが2つ目の改善方法です。
一緒に食事をする時に大袈裟なくらいモグモグして「○○ちゃんも一緒に噛んでみよう」などと声掛けをしてみてください。
大人が見せても興味を示さない場合、好きなキャラクターのぬいぐるみなどを使ってみるのもいいかもしれません。

今まで食事を噛まないで飲み込む癖がついてしまっていた子どもは、そもそも「噛む」ということを理解できていない可能性もあります。
食べ物を口に入れて噛んでから飲むという一連の流れを覚えさせるには、実際に食べている姿を見せるのが一番効果的でしょう。

家族みんなで食事をするというのは単に楽しいだけではなく、食べ方や食事のマナーを教えるチャンスでもあります。
できるだけ子どもの食事の時間に合わせて一緒に食べられるといいですね。

親子で噛む力を育てよう!

子どもだけではなく大人にとっても「食事をよく噛む」というのは大切なことです。

一度ついてしまった噛まない・早食いの癖を直すのは簡単ではありませんが、時間を掛けて親子揃って噛む力を育て健康な身体を手に入れましょう!