牡丹鍋は味噌味が最強!その歴史と分布・作り方をご紹介

近年はジビエが流行したりと、ちょっと変わったお肉を食べるのがブームですね。

テレビ番組で、特定外来種を食べて駆除する企画などもあります。

そんな中、伝統的な食べ物なのに今だに「ちょっと変わった料理」扱いされるものがあります。

そのひとつが牡丹鍋です。

イノシシのお肉を使った鍋料理で、醤油味や味噌味で煮込んで作ります。

牡丹鍋が気になる方のために、作り方やその歴史などをご紹介しましょう。

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イノシシの肉を使った鍋「牡丹鍋」

イノシシの肉を使用した醤油や味噌味の鍋料理を、日本では「牡丹鍋」と呼びます。

これは盛り付ける際に、牡丹の花に似せるところからついた名前だそうです。

牡丹鍋と呼ばない場合は、「猪鍋(シシナベ)」という呼び方をします。

日本各地で牡丹鍋は食べられていて、郷土料理として定着していますよ。

兵庫県では2007年に、農林水産省主催の「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれました。

岐阜県を走っている樽見鉄道では、牡丹鍋を利用したイベント列車である「しし鍋列車」が運行しています。

神奈川県の一部では、牡丹鍋を参加者で囲むという婚活イベントまで開催されていますよ。

これだけ定着しているのに、世間一般では「ちょっと変わったお肉料理」扱いなのは不思議ですよね。

イノシシ肉は縄文時代から食べられている食材で、その美味しさは折り紙つきです。

どんぐりなどを食べて育つので、イベリコ豚にも匹敵する脂肪の旨みがあります。

それを煮込んで食べるのですから、脂肪が口の中でとろけ出して甘みを強く感じますよ。

この脂が付着したほかの具材も旨みが増し、実際に食べるとぺろりと平らげらげてしまいます。

気になる獣臭さは、イノシシの場合ほとんどありません。

よほど敏感な人でなければ、気づかないレベルといってもいいでしょう。

醤油や味噌で濃く味付けする作り方なので、それで臭いが消されるのですね。

牡丹鍋は味噌味?伝統の作り方

牡丹鍋は醤油や味噌で味をつけますが、江戸風では両方を使用した作り方をします。

具材は好きな野菜と根菜、きのこや里芋、こんにゃくや麩、豆腐、そしてイノシシ肉です。

昆布や鰹節でとった出汁に味をつけて割り下にし、煮込んで作ります。

豚や牛ですき焼きをするときのように作るのですが、江戸風はこの割り下に秘密があります。

たっぷりの醤油とたっぷりの砂糖で甘辛くし、さらに八丁味噌を加えるのです。

この濃厚な割り下で作った牡丹鍋は、とにかく濃厚で旨みが強いですよ。

江戸っ子好みにキリッと塩辛く、砂糖をたっぷり使うことで獣特有のクセを消しています。

溶き卵につけてすき焼き風に食べたり、粉山椒をふりかけて食べたりします。

江戸時代の人々は、茶碗を山盛りに4杯は一食で食べたといわれていますので、濃い味付けが好まれたのでしょう。

実際に作る場合は、焦げ付かないように出汁を多めにすると現代的ですね。

獣臭さの原因は血抜きがしっかりされていないことなので、流水で綺麗に洗ってあげると良いです。

また、割り下に日本酒を加えると、獣臭さが風味に変化して美味しくいただけます。

それでも臭いが気になる方は、味噌を多めにしてみてくださいね。

味噌味の牡丹鍋はこんな作り方をするとより美味しい!

江戸風の作り方の牡丹鍋も美味しいのですが、濃すぎる味付けは現代人の口に合いません。

簡単なレシピを記しておきますので、参考にしてください。

【材料】

・出汁 1200cc
・みりん 大さじ5
・酒 大さじ10(150cc)
・味噌 大さじ2
・めんつゆ 大さじ2
・塩 少々
・好きな具材
・イノシシ肉

【作り方】

①塩以外の調味料と出汁をよく混ぜておきます。

②鍋に①を入れ、煮えにくい具材から加えましょう。

③塩で味を整えて、肉の色が変わったら完成です。

こちらのレシピでは、砂糖の代わりにみりんで甘みを出しています。

すき焼き風に作りたいときは、鍋に砂糖を敷いてから肉を焼き、割り下と具材を入れて煮ると良いですよ。

イノシシ肉は先に入れても後に入れてもいいのですが、先に入れると脂の旨味が他の具材に染み込みますし、後に入れると柔らかいお肉の食感を楽しめます。

好みで調整してみてください。

ピリ辛の牡丹鍋にする場合は、豆板醤を加えても美味しいですよ。

どうしても臭みが気になるという方は、カレー粉を加えることをおすすめします。

カレー粉がない場合は、削ったルゥでもOKです。

ポークカレーのような風味になって食べやすくなりますよ。

牡丹鍋の作り方の変移!昔はこうやって食べていた

牡丹鍋が料理として定着したのは、明治時代だといわれています。

縄文時代から食べられていたイノシシ肉ですが、実は江戸時代後期まで、獣の肉は「ご禁制」でした。

山間部の猟師などは獣肉を口にしていましたが、京都や奈良、大阪、江戸などでは肉食が禁じられていたのです。

これは仏教が伝来してからの考え方で、「殺生を禁ずる」というところから来ています。

地方には仏教が浸透していなかったので比較的食べられていたようですが、物騒などは魚すら口にできない時代が続きました。

江戸時代の後期に肉食がOKになると、江戸の郊外で捕獲された獣の肉が利根川を利用して運ばれてくるようになります。

そして明治に「牛鍋」が定着し、それと同時に肉食が文化として浸透したのです。

明治の末期に、日本軍が銃の訓練をした際に捕獲したイノシシを具にした味噌汁を配給し、それをヒントに作られたのが「いの鍋」です。

これが今の牡丹鍋の源流なのですね。

作り方も当時から味噌を使用したものだったようです。

こうなると牡丹鍋の発祥は明治のようですが、先ほど紹介した江戸風はどこからきたのでしょうか。

これにもきちんと、秘密があったのです。

牡丹鍋をはじめとする「ももんじ料理」とは?江戸時代の「薬食い」

イノシシ肉は牛肉と比べるとビタミンB1が豊富で、カルシウムは2倍以上含まれています。

さらに食べると体温が上昇し、味噌と肉の力で温まることから俳人の与謝蕪村は、

「静々に五徳にすえにけり薬食」

という俳句を詠みました。

肉食が解禁されたのは江戸時代後期からですが、それまでにも「山くじら」という名前でイノシシ肉は流通していました。

寒さが厳しい冬の栄養補給源となっていたのです。

歌川広重の「名所江戸百景」では「びくにはし雪中」という一枚で、左側に大きく「山くじら」という看板が描かれています。

当時は庶民の味として、イノシシ肉は親しまれていたようです。

こういった獣肉を出す料理屋を、「ももんじ屋」と呼びました。

漢字では「百獣」と書いて「ももんじ」と読みます。

獣肉は当時おおっぴらに食べられるものではなく、ももんじ屋などの専門店でしか口にはできませんでした。

こういった獣肉を食することを「薬食い」といい、体のために食べるものとされていたのです。

江戸風の醤油と砂糖、八丁味噌で味をつける牡丹鍋の作り方は、ももんじ料理のひとつだったのですね。

獣の肉を味噌で煮るのはいつの時代から?

江戸時代にはすでに、江戸風の八丁味噌をいれる作り方の牡丹鍋がありました。

ということは、それ以前から獣肉を味噌で煮込む料理があったことになります。

「薬食い」は実は、飛鳥時代から存在していました。

肉食がはっきりと禁じられたのは、675年に天武天皇が勅令を発してからです。

「摂政肉食禁止の詔(みことのり)」と呼ばれたこの勅令では、牛、馬、犬、猿、鶏を食べることが禁じられました。

この肉食禁止は、以後1200年以上続くこととなります。

しかし、禁止された動物以外は口にしても、咎められることはありませんでした。

味噌が生まれたのが飛鳥時代ですから、当時から料理に味噌を使うことはあったようです。

なんと7世紀から、日本人は味噌味のお肉を食べていたんですね。

江戸時代になると「肉食は禁忌」という意識はだんだんと薄れていきます。

イノシシやシカなどをおおっぴらに食べることができなくても、「薬食い」はひっそりと存続し続けました。

特に身分が高く、体が弱い人物には「薬食い」をよくさせていたようです。

お肉は栄養豊富なため、養生が必要だったり病気を回復させるために食されていたのですね。

このとき、普段はお肉を食べ慣れていないため、獣臭さが気になるという人が大勢いました。

それを打ち消すために、味噌が重用されたようです。

ジビエの入門に!味噌味牡丹鍋の魅力

イノシシ肉は豚肉に似ているという話を聞いたことはありませんか?

野生のお肉を食べたいけれど、あまり変わったものは手を出しにくいというジビエに興味がある方にもぴったりな牡丹鍋です。

特に、味噌や醤油などの日本人好みである味付けの作り方が嬉しいですね。

今は牡丹鍋セットなどが通販でも手に入りますので、ぜひ食べてみてください。

とろとろの甘い脂肪を一度味わったら、クセになること間違いなしですよ。