味噌の発酵はアルコールを含む?その香りや仕組み、安全性も

味噌の発酵にアルコールの存在は欠かせません。

おいしい味噌を作るために必要な成分です。

商品裏に書いてあるアルコールは、どれくらい入っているのか気になりますよね。

発酵の仕組みを通して、アルコールについてお話します。

味噌のアルコール発酵とは

味噌は麹を発酵させて作った発酵食品です。

麹というと、日本酒をイメージします。

味噌も日本酒と同様に、アルコールが関わっているのでしょうか。

結論は、味噌も、アルコールと発酵に関係があります。

では、どのように発酵するのか、過程を見ていきましょう。

蒸した大豆を(麹で発酵)します。

デンプンがブドウ糖を生成します。

その後、(酵母による発酵)を経て味噌が完成です。

アミノ酸がタンパク質を生成します。

簡単にご説明すると、このような作り方です。

麹、酵母の2種類の発酵です。

最終的に味噌の味は、どれだけタンパク質を生成するかによって決まります。

それは、酵母によるアルコール発酵が関係しています。

アルコール発酵が未熟であれば、白味噌ができます。

逆に、アルコール発酵が活発であれば、赤味噌ができるのです。

白味噌は、甘みのある味で、色が白いです。

赤味噌は、塩辛い味で、茶色い色をしています。

なぜ味噌にはアルコール発酵が必要?

ご説明の通り、味噌はタンパク質の量で味が決まります。

その前に、アルコール発酵について具体的に知らなくてはなりません。

タンパク質の生成をもう少し詳しく見ていきましょう。

アミノ酸は酵母菌の発酵によってタンパク質を生成します。

そのほかにも、酵母菌の発酵でアルコールを生成します。

このアルコールが、味噌の熟成において、重要な役割を果たすのです。

熟成しているということは、食品を常温で手つかずにしたままの状態です。

本来であれば、食品は冷蔵保存をします。

なぜならば、常温下では雑菌が繁殖しやすいからです。

しかし、味噌を冷蔵してしまったら温度が低すぎしまい、うまく発酵しません。

そのため、アルコールの持つ殺菌効果を利用するのです。

酵母によるアルコール発酵をして、味噌が腐らないようにしています。

このように、酵母は、

・タンパク質の生成
・アルコールの生成

の2種類の作用があります。

また、アルコール発酵は殺菌のほかに、大切な役目があります。

デンプンの糖をアルコールがエステルという成分を生成します。

エステルは味噌の香りをよくしてくれる効果があるのです。

白味噌のアルコール発酵が少ない理由

アルコール発酵の大切さが分かりました。

次は本題の、味噌の味とアルコール発酵の関係です。

アルコール発酵が未熟であれば、白味噌ができるとお話しました。

アルコール発酵が十分でなければ、殺菌効果は薄いのです。

つまり、熟成をあまりできないので、タンパク質が少ないのです。

熟成をしていない=麹の働きが残っているので甘みがあります。

タンパク質が少ないので、旨味は控えめです。

そして、タンパク質が少ないと褐色化(茶色くなる)しません。

味噌の色は、大豆そのままの、白色です。

実は、この熟成の短さを逆手に取ったのが白味噌なのです。

甘みや色の白さをあえて残しています。

アルコール発酵を控えめにするために、ほかにも工夫があります。

赤味噌は大豆を蒸して作りますが、白味噌は大豆を茹でます。

茹でて、大豆が持つ水溶性のタンパク質を、熟成前に予め流しているのです。

赤味噌のアルコール発酵が多い理由

赤味噌は、白味噌とは逆にアルコール発酵が多いです。

白味噌は甘い味に、色が白い味噌にしたいので熟成を短くします。

赤味噌は味を濃く凝縮させて、長く保存したいのです。

味を濃くするには、タンパク質をなるべく多く生成させなくてはいけません。

つまり、熟成を長くする必要があります。

そのため、アルコール発酵を続けて、雑菌やカビから味噌を守ります。

タンパク質が多いと、もうひとつの現象が起こります。

味噌の色が褐色化するメイラード現象です。

メイラード現象は、タンパク質が多ければ多いほど、茶色く黒くなります。

ところで、赤味噌よりもさらに色が黒い八丁味噌があります。

メイラード現象が赤味噌よりも進んでいて、黒い味噌になっています。

八丁味噌は愛知県三河地方で作られる豆味噌のことです。

豆味噌は、米麹を使いません。

大豆を蒸して潰したものに、直接麹を付けます。

米麹を使わない分、水分が少ないので雑菌が付きにくいです。

そのため豆味噌は、アルコール発酵をあまり必要としないので、その分、豆味噌の酵母菌はタンパク質の生成に集中できるのです。

こうして豆味噌は、色が黒くなります。

赤味噌は、エステルのもとデンプンをタンパク質に生成しています。

よってアルコール発酵によるエステルの生成がありません。

赤味噌の香りが少ないのは、このためです。

味噌に入っている酒精はアルコール?

味噌によっては、「酒精」という添加物が入っています。

商品裏の食品表示欄に、「酒精」や「アルコール」と表記されています。

酒精は、エチルアルコールともいわれる、アルコールの一種です。

酒精をなぜ入れるかというと、製品出荷前に発酵を止めるためです。

出荷後も発酵を続けてしまうと、メーカーが作りたい味とはかけ離れていきます。

また、酸味が増して酸っぱくなってしまうからです。

発酵によるガスの発生が原因で、味噌の袋やパックが破裂してしうことを防ぐ効果もあります。

酒精について、もうひとつ気になることがあります。

アルコールが入っていると、子供や妊娠中の人も味噌を使えるのかどうかの心配です。

アルコールの人体への影響は、個人差がありますが、一般的には問題ありません。

酒精は、アルコール度数が1~3%です。

味噌汁1杯で20gほどと微量です。

さらに、加熱すればアルコールは揮発します。

それでも気になる人は、酒精が入っていない無添加味噌を使いましょう。

無添加味噌も出荷前に加熱していて、発酵を止めたものが多いです。

宗教上アルコールを摂取できないムスリムの人にも、「ハラル食品」として無添加味噌を使えます。

味噌のアルコールの香り

味噌がお酒のようなアルコール臭がしたことはありませんか。

酒精が入った味噌なら、発酵をしていないのでアルコール臭はありません。

無添加味噌であれば、発酵が進んでいる可能性があります。

発酵を止める加熱処理をしない生味噌も、発酵しすぎているかもしれません。

発酵が進みすぎると、酸っぱくなって味が劣化してしまいますが、品質に問題はありません。

火を通せば、アルコール臭や酸味は抑えられます。

できれば、味噌は開封後3ヶ月以内に使い切りましょう。

危険なのは、食中毒です。

アルコール臭以外の嫌な臭いがすれば、口にせずに廃棄してください。

次に、手作り味噌のアルコールの香りです。

熟成中にアルコールの香りがよくしていたら、発酵が活発な証拠です。

夏など、気温が高いとアルコールの香りは強くなります。

気になる方は、12月頃から味噌作りをはじめて6月には熟成を終えましょう。

手作り味噌といえば、アルコール消毒です。

容器や手にアルコールを吹き付けて消毒します。

清潔な環境で作らなければ味噌に雑菌が生え、食中毒の原因にもなります。

念入りに消毒を行いましょう。

消毒はアルコール度数の高い焼酎がおすすめです。

口に入っても構いませんし、熟成中の匂いもそれほどありません。

味噌のおいしい味や香りを作るアルコール

味噌のアルコールについて、お話しました。

アルコールは、味噌の殺菌や香りについて必要な成分で、アルコール発酵は、醤油も日本酒も酒粕の甘酒にも行われます。

発酵食品で重要な役割を担っているのです。

アルコール発酵の違いが分かれば、赤味噌や白味噌などの使い分けにも関心が高まりますね!