植物性の油を原料とするマーガリンは、加工の過程で部分水素添加油というものを添加します。
これによって発生するのが、トランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸には自然のものと人工的なものがあります。
バターに含まれるトランス脂肪酸は自然なものですが、マーガリンに含まれるものは人工的なものです。
今回は、マーガリンやショートニングに含まれる、人工的なトランス脂肪酸についてのお話です。
トランス脂肪酸を含むマーガリンと含まないマーガリンについてご紹介しましょう。
トランス脂肪酸を含まないマーガリン
2018年6月から、アメリカではいよいよトランス脂肪酸の使用が全面的に禁止になりした。
すでに、オーストラリアやコロンビア産のマーガリンは、部分水素添加油というものを添加する必要がないマーガリンが販売されています。
トランス脂肪酸を含むマーガリンには、原料がべに花油やコーン油・綿実油が原料に使われています。
しかし、トランス脂肪酸を含まないマーガリンは、ほとんどがパーム油を使っています。
オーストラリアやコロンビ産のトランス脂肪酸フリーのマーガリンは、パーム油を原料としています。
トランス脂肪酸の問題が明るみになり、2005年ころから世界の各国で規制が始まりました。
それによって、欧米ではマーガリンやショートニングに含まれているトランス脂肪酸の量を明記することが義務付けられます。
使用そのものに対しても欧米で規制が始まり、いよいよ2018年にはアメリカで完全な規制が始まりました。
日本では、まだ国からの規制はなく、メーカーが徐々に使用料を減らしています。
規制がないことを懸念している人が大勢いますが、それについてお話をしていきましょう。
マーガリンで日本人が摂るトランス脂肪酸の量
アメリカやイギリスを初めとする欧米では、トランス脂肪酸の摂取量が日本の5倍以上の量になります。
これは、牛肉やバター、チーズに含まれる自然のトランス脂肪酸から摂取する量が、日本人と比較すると多いからです。
それだけでなく、ケーキやピザが好きな欧米の人は、日常の食生活でバターやマーガリン、ショートニングを摂る量そのものが圧倒的に多くなります。
日本の食生活では、欧米と比較すると脂質そのものを摂取する量が少なくなります。
世界保健機関では、トランス脂肪酸摂取量を一日に摂取するエネルギー量の1%未満にするように勧告しています。
現在の日本人のトランス脂肪酸摂取量の平均値は、0.5%未満です。
日本人の食べる和食では、焼き魚や炒め物、揚げ物から油を摂取しますが、主食のごはんに脂質が含まれていません。
しかも、野菜を炒める植物油や魚の油は不飽和脂肪酸で、トランス脂肪酸をほとんど含まないものばかりです。
パンやピザ、パスタなどを主食にする国と、その点で差が出ます。
間食も、せんべいや饅頭・羊羹・焼き芋・あんみつ・かき氷と油脂を使わないものがたくさんあります。
欧米の人が食べるチョコレート・スコーン・ケーキ・アイスクリームとでは、間食一つとっても含まれる油脂の量が違います。
天ぷらやおかき・かりんとうに油を使っても、菜種油やべに花油・ごま油を使います。
煮物や野菜炒め、天ぷらをバターやマーガリン、ショートニングを使って揚げたり炒めるということもありません。
和食中心の食生活では、そもそもトランス脂肪酸を摂ることが少ないのです。
もちろん、現代の日本人の食卓はとても多様化していて、こういった和食が中心の人もいれば、和洋折衷の人も多くいます。
平均して和洋折衷の人をみても、欧米と比較すると圧倒的に、トランス脂肪酸を摂る機会が少ないのです。
毎日パン食でマーガリンを使用している人、ケーキが大好きで毎日食べている人は、多くなることがあります。
しかし、日本人がトランス脂肪酸を摂るには、マーガリンを使う時くらいです。
そのため国が厳しく規制をしなくても、国際基準で決められているトランス脂肪酸の摂取量を、ほとんどの人が下回っています。
市販のマーガリンに含まれるトランス脂肪酸
現在、スーパーや小売店で販売されているマーガリンのトランス脂肪酸の量をご紹介しましょう。
日本は、国指導のトランス脂肪酸の量の規制を厳しく行っていません。
しかし、メーカーがしっかりと規制をしています。
日本で作られているマーガリンという概念に当てはまるスプレッドでは、トランス脂肪酸を全く含まない「0」というものはまだありません。
その代わり、一日に摂取する量が規制の範囲内になるくらいに減らしたマーガリンがあります。
日本で販売されているマーガリンで、トランス脂肪酸が少ないものには次のようなものがあります。
100g中のトランス脂肪酸が0.5g以下、1回の使用10gでは0.05g以下のものは、意外とたくさんあります。
雪印ネオソフトでは、「ネオソフトべに花」は10g中のトランス脂肪酸の量は0.03gになります。
トップバリューのマーガリンでは、「キャノーラソフトカロリーハーフ」のトランス脂肪酸の量が10g中0.023g、「キャノーラソフトバター風味ソフト」が0.04gになります。
小岩井マーガリン「ヘルシー芳醇仕立て」は10g中のトランス脂肪酸の量が0.034g、創健社の「べに花ハイプラスマーガリン」は0.03gです。
市販されているマーガリンの中には、他にもトランス脂肪酸の量が100g中1gを下回るものがたくさんあります。
トランス脂肪酸の量が紹介されているサイトの中には、雪印や明治は公表していないとうものもありますが、現在はきちんと公表しています。
ご自分が普段使用しているマーガリンのトランス脂肪酸の量を知りたいときは、公式サイトを見てみましょう。
トランス脂肪酸を含まないマーガリンの原料
できれば日本でも、トランス脂肪酸を含まないマーガリンが購入できれば良いですね。
私たちの周りで販売されているマーガリンには、食品メーカーや乳製品のメーカー、油を取り扱うメーカーがマーガリンを製造販売しています。
最近は、そこにプライベートブランドと呼ばれる、大手スーパーやコンビニ業界が、オリジナルのブランドのマーガリンを販売しています。
プライベートブランドによっては、大手の食品メーカ―の共同工場製のものもあり、トランス脂肪酸の量が多いものもあれば、少ないものもあります。
日本のマーガリンは、原料にべに花油やコーン油・綿実油を使います。
どうしてもトランス脂肪酸を含まないマーガリンを製造するのは、とても難しいです。
べに花油を使っているマーガリンは、比較的トランス脂肪酸の量が少なくなります。
海外のトランス脂肪酸フリーのマーガリンは、ココナッツオイルやオリーブオイル、パーム油を使います。
日本では、ココナッツオイルやパーム油を作っているところはありません。
そのため、オリーブオイル以外の油を使う時は、海外からの輸入になってしまいます。
それだけではありません。
トランス脂肪酸を含まないことにばかり気を取られていると、ココナッツオイルやパーム油のデメリットを見落としてしまいます。
トランス脂肪酸を含まないマーガリンを製造することは大切なことですが、他の健康被害が起こっては本末転倒ですね。
トランス脂肪酸を含まないマーガリンの代用品の危険性
私はバター派だから大丈夫、という人がいますが、バターには飽和脂肪酸が含まれています。
人間が一日に摂取する脂肪酸は「飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸」で「3:4:3」の比率で摂ることを理想としています。
飽和脂肪酸はバターや牛肉、チーズなどの動物性食品に多く含まれる脂です。
一価不飽和脂肪酸は、オリーブオイルやひまわり油・菜種油・マカダミアナッツなどに入っています。
多価不飽和脂肪酸は、魚油やえごま油に入っています。
マーガリンではなく、バターを変わりに使うと、一価不飽和脂肪酸よりも飽和脂肪酸を多く使ってしまうこともあります。
飽和脂肪酸はコレステロール値を上げる働きがあります。
若くてコレステロール値に問題がない人は、バターを多く食べてもホルモンの原料になったり、新陳代謝で排泄する量が多いので、あまり問題はありません。
しかし、コレステロール値に問題がある50代、60代の人にとって、バターを多く摂ることは、あまり良いことではありません。
マーガリンの代用でバターを多く摂ってしまう人にもリスクはあるのです。
トランス脂肪酸を含まないマーガリンの原料によく使われるパーム油にもリスクはあります。
パーム油は飽和脂肪酸の含有量が多いです。
そして、菜種油に含まれるリノール酸よりも、大腸がんや糖尿病のリスクが高いと言われています。
社会問題では、パーム油の使用増加は、森林破壊につながっていることを問題視している人もいます。
トランス脂肪酸を減らすだけに注目をしていると、違う危険性を見落としてしまうことがあります。
そのために日本のマーガリンは、できる限りトランス脂肪酸が作られにくいべに花油や、オリーブオイルを使うようにしています。
マーガリンやバターを使わないという選択
ご飯好きの人は、本当においしいお米ならご飯だけで充分と言います。
それはパンも同じで、美味しいパンなら何もつけずに食べても美味しいです。
しかし、パンは生地を焼く前に材料にバターを練り込んでいます。
乳製品のアレルギーでバターを使えない場合は、ラードやショートニングを使います。
パンは油を使わずに作ることはできない、ということですね。
そのため、同じ穀物でもご飯とパンなら、ご飯の方がカロリーが低いと言われます。
さらにご飯には、ふりかけや納豆・漬物といった脂質や糖質をあまり含まないおかずが合います。
パンは、ジャムやバター・マーガリンといった、脂質や糖質を含むスプレッドと呼ばれるトッピングを使うことが多いです。
野菜のサンドイッチを作る時も、野菜の水分がパンにしみこまないように、バターを塗りますね。
そしてバターには自然のトランス脂肪酸が含まれています。
菓子パンやクロワッサン、デニッシュのように生地そのものにたくさんのバターが含まれている場合は、そのままで食べることができます。
しかし、いずれにしてもパンは脂質や糖質を含む、バター・マーガリン・ジャムなどをトッピングします。
それでは、マーガリンやバター以外では、美味しくパンを食べることができるものはないのでしょうか。
最近、フレンチのレストランやイタリアンのレストランでは、肉やパスタのソースをパンにつけて食べることもありますが、オリーブオイルを出すお店もあります。
オリーブオイルはバターと違い不飽和脂肪酸で、しかもそのままならトランス脂肪酸を摂る心配もありません。
そのため、バターやマーガリンのリスクを防ぐことができるので、使用する人もいます。
トランス脂肪酸を含まないマーガリンの増加
日本では、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の量が、年々減っています。
国が規制をすることがないため、心配をしている人もいますが、各メーカーではしっかりと改良をしています。
市販されている、マーガリンのトランス脂肪酸量は、かなり少なくなっています。
海外のトランス脂肪酸フリーと明記しているマーガリンと比較しても、含有量は遜色ありません。
消費者の意識が高くなれば、日本では自然と商品が良い方へ開発されます。
いずれはトランス脂肪酸を含まないマーガリンが、開発されるかもしれませんね。