簡単に作れて、効果が高い肥料はないでしょうか?
今回は、家庭で簡単に作れてしまう、それも米ぬかと納豆という、手に入りやすい材料でできる肥料についてご説明します。
どうやって作るのか、どのように使ったらよいのかも、具体的にみていきましょう。
納豆菌と米ぬかで作るぼかし肥料を作るメリット
効果が高い肥料に、ぼかし肥料というものがあります。
納豆菌で米ぬかを発酵させて、米ぬかの栄養分の塊を分解し、植物が吸収しやすい形にします。
納豆菌により、養分はイオン化し、植物が吸収しやすい質の良い肥料になるのです。
また、土の中に住む微生物の栄養分となり、土壌の改良もできます。
納豆菌を使ったぼかし肥料は、比較的簡単にできるとも言われています。
米ぬかは「コイン精米所などにご自由にお持ちください」と、書いて置いてあったりしますので、簡単に手に入りやすいものです。
以上のように、納豆菌と米ぬかで、ぼかし肥料を作るメリットは、たくさんあります。
ちなみに、ぼかし肥料と呼ぶ理由は、有機肥料を微生物によって、発酵させて原型から「ぼかす」からです。
ここでの「ぼかす」という語は、「色をぼかす」というときの、ぼかすと同じ意味合いがあると言われています。
そして、ぼかし肥料は、好気性発酵させて作る方法と、嫌気性発酵させて作る方法があります。
嫌気性発酵の場合は、ビニールなどに入れて、密封して作ります。
反対に、好気性発酵の場合は、空気に触れさせた状態で作ります。
嫌気性発酵は切り返し、つまり混ぜ返すことをしなくてよいので、面倒が減ります。
しかし、発酵が低温になるので、出来上がるまで時間が掛かります。
好気性発酵は、熱が上がりすぎないように、ときどき切り返しが必要になります。
今回ご紹介するのは、米ぬかと納豆菌を使った、好気性発酵のぼかし肥料の作り方です。
作り方をみる前に、まずは納豆菌についてみていきましょう。
納豆菌の力とは
朝食などでも、よく食べられている納豆パックの納豆を使って、肥料が作れます。
これにより、わざわざ納豆菌を苦労して手に入れなくても大丈夫です。
いつものスーパーなどで買えますし、とても安く手に入ります。
低コストで、ぼかし肥料ができてしまうのも、納豆を用いる魅力のひとつです。
そんな納豆菌の力をみていきましょう。
納豆菌は、30種類以上の植物病原菌の働きを抑制するための抗菌物質を、作り出してくれるそうです。
病原菌の栄養物質となる鉄分を与えないよう働き、病原菌の活動を抑制する効果があります。
そして、ぼかし肥料を作る際には、米ぬかを発酵させる菌として働いてくれるのです。
しかし、そもそもなぜ、米ぬかを発酵させる必要があるのでしょうか。
また、米ぬかを、そのまま肥料として使ってはいけないのでしょうか。
米ぬかはそのまま畑に撒けないの?
米ぬかは、玄米を精米した後に残る粉なので、栄養をたくさん含んでいます。
栄養たっぷりなので、そのまま畑に撒いても良いのではと思いますが、実際はどうなのでしょうか。
そのまま畑に米ぬかを撒いてしまうと、ぬかの中の糖質や脂質が微生物によって、分解されてしまいます。
すると、その活発化した微生物が窒素を土から奪い取り、植物が吸収する窒素を減らしてしまうのです。
そのため、植物や作物に窒素不足と、同じ症状が出てしまいます。
また、土に米ぬかをそのまま混ぜると、速いスピードで分解して熱や炭酸ガスを出し、土の酸素を欠乏させます。
こうなると、根がダメージを受けてしまうのです。
こうした理由のため、米ぬかをそのまま肥料として撒くことは、おすすめできません。
上記に述べたような問題が出ないようにするために、納豆菌や別の菌を使って、米ぬかを発酵させるのです。
ちなみに、好気性ぼかし肥料を作る場合は、空気にさらすわけですから、米ぬかを発酵させる時期は秋から冬がベストです。
夏に作ると雑菌が入ったり、虫がわく恐れがあります。
つまり、失敗につながる確率が高くなるということです。
冬に米ぬかを発酵させておくと、春に肥料を使うことができますので、タイミング的にはおすすめです。
次項でご紹介しますが、ぼかし肥料は、もちろん夏場でも作ることはできます。
その場合は、納豆菌は好気性菌なので、別の菌を用いて嫌気性発酵の方法で作ってみるのものも、よいですね。
納豆と米ぬかで作るぼかし肥料の作り方
では、具体的に、どのような方法で米ぬかと納豆で、ぼかし肥料を作ったらよいのでしょうか。
作り方をみてみましょう。
【用意する材料】
・米ぬか 10kg
・納豆 1パック
・水 3リットル
・大きめの園芸用桶、または衣装ケースのようなもの
【作り方】
①まず、桶に米ぬかを入れて、水を2.5リットル入れて、よく混ぜます。
撹拌が終わるまで10分くらいは掛かりますが、米ぬかと水がよくなじむまで、混ぜましょう。
②残りの水で納豆を溶かし、この水入り納豆を、①に混ぜ込みます。
③この後は、発酵作業に入ります。
布をかけて発酵させましょう。
④発酵熱が出てからは、1日に1回は、酵素を行き渡らせるために撹拌していきます。
発酵が完了するまで、夏場は5日から1週間ほど、冬場は10日ほど掛かります。
発酵中は温度がどんどん上がるので、温度計で温度を計りながら、発酵の様子をみましょう。
温度が下がり、味噌のような香りがするようになったら完成です。
使用するときは、温度が安定するまで待ってから使いましょう。
納豆米ぬかで発酵中のぼかし肥料の温度が上がらない場合
納豆と米ぬかを仕込んだ後で発酵に入ります。
発酵の際、温度が上がりにくいことがありますが、それにはどういった原因があるのでしょうか。
好気性発酵は酸素が必要ではありますが、反対に、混ぜすぎないようにしてください。
菌がまだ増えていない段階で、混ぜすぎてしまうことは、よくありません。
ある程度、菌が増えてから、混ぜるようにします。
混ぜすぎると温度が下がってしまい、温度が上がるまで、また時間が掛かってしまいます。
40~50℃の発酵熱が出るまで、暑い時期は3~4日に1回、冬場は1週間に1回混ぜます。
発酵熱が安定したら、毎日1回混ぜると良いでしょう。
こうすると、温度が上がりすぎないようにできます。
また、温度が上がりにくい原因として、水分の量が足りていないことも考えられます。
水分量を40~50%は保たせないと、発酵がなかなか進みません。
ですから、混ぜるときによく観察し、水分が足りないようなら、水分も足しましょう。
ただ、夏場は水分が必要になることは、まずありません。
水は、多すぎてもいけません。
水が多すぎると、腐ってしまいます。
肥料の材料を握って固まるけれど、指で押すとパラパラと崩れるほどの硬さに、調整しましょう。
納豆と米ぬかで作ったぼかし肥料の使い方
米ぬかと納豆で作ったぼかし肥料は即効性があり、窒素も多く含みますので、少量ですぐに効果が出ます。
この特徴を考えると、追肥として使うのがおすすめです。
やり方のコツは、量を少なめに撒くことです。
撒きすぎてしまうと窒素過剰になり、失敗の原因になってしまいます。
ぼかし肥料は、少量ずつ与えることを心掛けましょう。
また、いつ追肥をするかは、作物の葉色をみて決めましょう。
ぼかし肥料の窒素は、撒いた後の早い段階で6割は放出されるため、即効性があります。
しかしながら、残りの4割の窒素は、分解されにくい有機物になっていて、ゆっくりと放出されます。
そのため、ぼかし肥料の窒素が全部出るまでは、数ヶ月から半年ほど掛かります。
もし「元肥として使いたい」というのでしたら、肥料を畝の上部1/3くらいに混ぜ込んで使います。
全体に混ぜ込むと、効果が減ってしまいますので、気をつけましょう。
その他の注意点です。
米ぬかを発酵させた肥料は家の中で使うと、コバエやゴキブリが寄ってくる恐れがあります。
そのため、室内の観葉植物などに使うのは、なるべく避けましょう。
簡単に・手軽に・低コストでぼかし肥料を作ってみよう
納豆と米ぬかで、簡単にぼかし肥料が作れます。
決して適当に作るのではなく、きちんと勉強して、正しい知識に基づいて作ってみてくださいね。
そうすれば、失敗することも少なくなります。
効果が高く、即効性のある質の良い肥料を作ってみましょう。