phって聞いたことがありますか?
正しくはpHと表記しますが、ここではあえて、phと書いていきますね。
食品だけでなく、医療・化粧品・水質・工業・環境など、様々な分野にわたってphが測定され、その値が研究・開発や改善のために活用されています。
今回は、そもそもphとは何なのか、どうしてphの測定が必要なのか、どのような測定方法が採用されているのかについてご説明します。
食品のphとは何だろう?なぜ測定する必要があるの?
phとは、水溶液の性質を示す単位です。
学校でリトマス試験紙を使って、phの実験をしたことがあると思いますが、覚えていますか。
例えば、レモン汁に青のリトマス試験紙を浸すと赤く変化し、石鹸水に赤いリトマス試験紙を浸すと青くなります。
この実験は、試験紙が赤くなったレモン汁は酸性であり、試験紙を青く変化させた石鹸水はアルカリ性であることを示しています。
phは液体などが、どの程度「酸性」もしくは「アルカリ性」なのかを示す単位なのです。
食品には、最もふさわしいとされるphの値があります。
その値を基準として、それより値が高くなったり低くなったりすると、味や風味が落ちている可能性や、異物が混ざっている恐れが予想されます。
そのため、定められた測定方法によりph測定が行われ、均一な質や味の食品作りが行われています。
phの数値は、1から14までで、真ん中が7で中性となります。
数値が7より小さいなら酸性、大きいとアルカリ性となります。
食品のphの測定方法は?phの読み方について
食品のphを測定する方法がいくつかありますが、ここでは一般的なガラス電極による測定方法について、ご説明します。
ガラス電極法とは、phガラス電極と比較電極を使って、この2つの電極の間に生じた電位差を知ることで、phを測定する方法です。
ガラスの薄膜の内側と外側に、phの異なる液体があると起電力が生じます。
溶液が25℃の場合、phが1違うと59mVの起電力が生じます。
一般的に内側にはph7の液体を入れますので、それを基準にして生じた起電力を測定すれば、サンプルのphの値を割り出すことができます。
起電力を測定するために、もうひとつの電極が必要です。
こちらは「比較電極」と呼ばれ、phの差による起電力が生じないよう、工夫されたものです。
ガラス電極法は、電位の平衡時間が早くて再現性が良いです。
さらに、酸化剤や還元剤の影響を受けることが少なく、色々な溶液について測定できることから、phの測定方法の中では最も多く使われています。
ちなみにphの読み方は、発見者がデンマーク人で「ペーハー」と読まれることが多かったのですが、昭和32年に日本工業規格化の際、「ピーエッチ」で統一されました。
phは日本語では、水素イオン指数と訳します。
固形食品・粘度のある物のphの測定方法
ガラス電極法以外に、半導体を用いたphセンサーがあります。
半導体シリコンセンサーはガラスを用いないため、割れにくいという特長のほかに、小型化・微小化が可能というメリットがあります。
小型化・微小化は、より少ない試料での測定や微小な空間での測定、さらには固体表面の測定が可能になるのです。
それゆえに、固形食品のph測定に用いることができます。
半導体を用いたphセンサーの中で、よく使用されているものをご紹介します。
「フラットISFET電極」…わずかな水分とか肉、布や紙などのシート状材料の表面測定に使用できます。
「ニードルISFET電極」…果物や野菜、パン生地などに適しており、固体に突き刺して使用します。
「スリーブToupH電極」…可動スリーブのため、洗い流せるので、高粘性試料の詰まりを防ぎ、安定した性能を維持できます。
ジャムなど粘度のあるサンプルの場合は、セラミック液絡部が詰まってしまいます。
一度詰まってしまうと、洗い流すのが難しいため、スリーブ形液絡部の電極の使用がおすすめです。
サンプルに合わせた電極と測定方法を、よく選んで使用することが大切です。
phメーターやph計はどういったものがあるの?測定方法は簡単?
前項でご紹介したもの以外にも、水質検査や食品用・土壌用に突き刺してphの値を計れるペンタイプ型や卓上型、ポータブル型などがあります。
例えば、佐藤商事の「突き刺し型PHテスタースピア」はペンタイプなので、測定方法も簡単です。
果物や肉やチーズなどに、直接突き刺して使用します。
片手で楽に持てる大きさ、センサー部の交換も可能で、洗浄も簡単な構造をしています。
ですが、残念ながら自動温度補正機能はついていません。
テストー(メーカー名)のtesuto205は防水性で、自動温度補正機能を備えており、やわらかい食品全般に使用可能です。
頑丈で、液漏れなどの心配は要りません。
人間工学に基づいた設計がされており、握りやすく、片手でも測定可能です。
佐藤商事の食肉用ph計HI99163N「ハンナ」は、電極に温度センサーが付いており、温度補正機能を備えています。
電極の先にステンレスの刃がついており、食品に突き刺しやすくなっています。
食品サンプルに合わせた電極を選ぶことが大切です。
食品のphの測定方法・コツは?
食品のph測定方法のコツですが、できるだけ正確な温度管理が必要となります。
温度補償電極が内蔵されている、複合電極を使う場合、浸漬部分全部が一定の温度になるようにすることが大切です。
なぜなら、その温度補償電極は、比較電極内部の温度を測っているためです。
恒温槽と温度補償機能を使って想定する場合、恒温槽を用いて、校正時と測定時を同じ液温で行いましょう。
それぞれメーターの温度補償機能を用います。
恒温槽にて測定する場合、標準液とサンプルを恒温槽で25±0.2℃に保ち、校正後測定します。
この場合、温度補償や温度換算をする必要はありません。
室温にて測定する場合、校正するときと測定するとき共に、温度補償機能を用いましょう。
できるだけ、校正のときと測定のとき、液温は統一します。
電極は、サンプルのpHを電位差という指標に変えて測定していますが、電位差は温度によって微妙に変化します。
また、サンプルのph自体も温度によって変化しますので、温度管理が大切になってきます。
ph測定に誤差が生じる原因は何だろう?
同機種の2台を用いて、同じ測定方法で測定しても誤差が生じる場合があります。
原因として考えられるのは電極の汚れ・劣化、または内部液とサンプルの組成が異なり、その間で生じる電位の差、もしくは標準液の変質です。
対処の方法としては、洗浄・標準液の確認を行います。
電極は測定のたびに純水で洗い、きれいなろ紙やガーゼを使って、ぬぐいます。
電極の液絡部が汚れていたら、電極洗浄液などを用いて洗浄しましょう。
食品がサンプルならば、色々な性質のもの、例えば、粘着質なものや油っぽいものなどがありますね。
特別な汚れならば、説明書どおりに対処してください。
測定時は、比較電極の内部液補充口を開けておきます。
標準液の保管は、開栓後pH4.7は約6ヶ月、pH9は約3ヶ月が目安となります。
また、一度ボトルから出した標準液は、再利用できないので注意しましょう。
それでも誤差が出る場合は、電極の交換をしましょう。
同じサンプルなのに異なる拠点で測定した場合、値が一致しないこともあります。
これは測定環境の違いにおける、サンプルの測定温度差が原因であると思われます。
機器によっては、サンプルの温度によってphの値を修正してくれる機能が付いているものもあります。
ですが、より正確さを求めるならば、この機能を使うのではなく、恒温水槽などを用いてサンプルと容器と電極と温度計を、同じ温度へ調節して測定することが必要です。
電極を保存するときの注意点ですが、保護キャップ必ずはめておきましょう。
キャップ内の水の量は、保護キャップのスポンジが湿っている程度で十分です。
ph応答ガラス膜とスポンジは接触せず、離した状態で保存するのが正しい方法です。
ph測定は暮らしに密接に関係がある
食品のph測定について、簡単なことから専門的なことまでお話してきましたが、おわかりいただけましたか。
毎日私たちが食の安全を楽しめているのは、ph測定に励んでくださる方たちがいるからです。
ヨーグルトはph4.4,スポーツ飲料はph3.0-4.0、りんごはph3.0、レモンはph2.5というように、食物にはそれぞれのph値があります。
今度何か口にする際には、ph値について思い出してみてください。