健康ブームもあいまって、減塩思考の方が増えてきましたね。
流通している塩は、精製塩と天然塩に大別されます。
その違いは塩分濃度で、精製塩の方が20%多いです。
その原因や食塩(精製塩)の選び方・扱い方について見ていきましょう。
精製塩とは
精製塩とは、イオン交換膜製塩法によって、海水から抽出された塩を示します。
また市販の食塩は精製塩を示し、同義です。
日本の塩の90%以上が、イオン交換膜製塩法によって作られた塩です。
イオン交換膜製塩法について、詳しく見ていきましょう。
塩の源は海水で、汲み上げた海水から不純物を取り除く為にろ過します。
限りなく不純物が取り除かれた塩水になったら、イオン交換膜透析槽で塩水を濃縮します。
イオン交換膜透析槽は、電気の力で塩の主成分を集め、濃縮出来る水槽です。
これにより高濃度と低濃度の塩水を精製、分割が可能です。
ところで、イオン交換膜とは、編み目が10μm(マイクロメートル)という細かいフィルターです。
これは超高精度浄水器のようなイメージで、水や塩の主成分である、ミネラルやナトリウムのみの抽出を可能にします。
こうして精製された塩水は加熱濃縮され、塩になるのです。
これを精製塩(食塩)と呼びます。
天然塩の方が食塩より塩分が少ない
天然塩とは、自然界から採れたもの、もしくは自然の力のみで抽出した塩のことです。
精製塩のような、機械や工程処理はありません。
天然塩にカテゴライズされるのは、天日塩、岩塩、湖塩です。
特に岩塩は、世界で生産されている塩全体の、60%以上と言われています。
岩塩とは、長い年月を経て、陸地に含まれた海水が蒸発し、塩分が結晶として残ったものです。
もっとも日本は、地形や地殻変動の影響で、岩塩と湖塩が殆ど採れない環境でした。
そのため古くから、海水を資源に塩を作るのが一般的でした。
その製法は、汲み上げた海水を砂に撒き、日光で乾かして天日塩を作るのが古くから伝わるものです。
その歳月は1~2年とも言われ、大変手間のかかる方法です。
現在でも古来の製法を踏襲し、商品化しているメーカーが多々あります。
自然の力を借りて作り上げる事で、塩分に加えミネラルが含まれます。
現代の市販されている天然塩には、より自然に近い塩の味にすべく、にがりを加えています。
味の工夫を常に行う事で、美味しい食塩が私たちの食卓に届けられるのです。
精製塩の安全性
時々聞かれる精製塩の安全性について見ていきます。
理屈で検証すると、精製塩の方が天然塩よりも塩分濃度が高いです。
そのため、闇雲に使っていると、高血圧などの健康被害を及ぼしやすくなるのです。
しかし、使用量を控えるなどすれば問題ありません。
その理屈を詳しく見ていきます。
精製塩は塩化ナトリウム含有率が全体の99.5%以上で、サラサラしているのが特徴です。
一方、天然塩の塩化ナトリウム含有率は全体の約80%で、粒がパラパラしています。
なお、残りの20%はミネラル分です。
ミネラル分が塩に含まれる理由は、海水や地面に含まれていたものが、残存しているためです。
ここから、精製塩の方が天然塩に比べてミネラルが無く、塩分濃度が高いことがわかります。
海水魚の飼育のために、塩分濃度調節の為に食塩を混ぜた事例があります。
この際、塩を規定量入れたにもかかわらず、残念ながら魚が死んでしまったそうです。
この事例からも、塩は量でなく塩分濃度を意識しなければならない事がわかります。
料理に関する精製塩・天然塩の使い方
先の考察から、精製塩の多用は、生活習慣病の温床になることが分かりました。
食塩を使う際は、使用量を減らす事がベターです。
精製塩の方が天然塩よりも約20%、塩化ナトリウム(塩分)が多く含まれています。
つまり、レシピ通りに塩3g入れても、天然塩より多くの塩分を摂る事になります。
これを続けていれば、血圧の上昇などに繋がり易くなるのです。
確かに、食塩の方が安価ですから、財布に優しいのは事実です。
しかし、万が一通院する事になれば、通院費・治療費が発生します。
治療費を食塩代に加算すれば、天然塩の金額を上回るのは想像にたやすいでしょう。
経済的な理由があるならば、食塩の量を減らすこと。
そうでなければ、天然塩の使用や、減塩商材への切り替えが大切になります。
塩気を出したければ、出汁を取ったりするなどして対応しましょう。
最も良い結果は、薄味に舌が慣れる事です。
減塩開始直後は、料理に味気なさを感じるかもしれませんね。
ですが、薄味に慣れてくれば、食の持つ本来の風味や香り、複雑さを謳歌出来るようになるでしょう。
食塩・天然塩の選び方
塩を買う際には、パッケージをしっかり読む事をオススメします。
必要な情報は、ここにすべて記述されています。
袋の表面には、主に以下4つの情報が明記されています。
公正マークは、協議会から認定を受けた場合に明記可能で、裏面に貼られているケースもあります。
原料の産地と、生産地が異なる場合、その両方が同一視野内に明記されます。
含有される塩化ナトリウムが50%以下の場合、「減塩」表記されることがあります。
塩化ナトリウム以外の塩が25%以上含まれる場合、「低ナトリウム塩」と表記されます。
精製塩の原材料、製造所が共に国内の場合に限り、「国産塩」の表記が許されます。
裏面には栄養成分や、製法の表示が義務づけられています。
特に、栄養成分の中に、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル分が含まれているか、確認しましょう。
またナトリウムは、塩のしょっぱさを示す指標になるので、含有量に注意しましょう。
ナトリウムは、食塩100gあたり39mgと言われているので、これを基準にできますね。
食塩・食卓塩が多様化した背景
日本は調味料に恵まれた国です。
世界でも類を見ないほどの種類が販売され、愛用品も千差万別です。
これだけ多くの調味料・塩が販売されるようになったのは、ある理由があります。
それは塩の専売制度です。
塩の専売制度は、1905年に始まりました。
当時、外国の安価な塩が台頭し、国産の精製塩が売れなくなる危機感にさらされていました。
収益と、日本の塩文化の存亡を賭け、安く良質な塩作りをすべく、この制度が制定されたのです。
ただこの収益は、日露戦争の資金に充てるためという目的もあったのです。
しかし1919年になると、収益主義は一転します。
塩は生活必需品にも関わらず、税収的位置づけである事に、国民から不快感を買う事になりました。
世相を加味し、塩の専売制度は、良質で安価な塩を国民へ提供する、「公益専売」にシフトしました。
この流れが1997年まで引き継がれたのです。
1985年頃になると、行政改革の一環で、たばこの専売制が廃止されました。
その煽りもあり、この頃から塩の専売制にも議論が行われました。
そして1997年に塩の専売制が完全に撤廃、食塩の自由化が始まったのです。
塩選びの重要性
精製塩・食塩・天然塩の違いや、扱い方、歴史など総合的にお話ししました。
科学技術の進歩と共に、塩だけが含まれる塩の販売が盛んになりました。
結果的に高濃度すぎて、天然物が支持される現状がありますが、摂取の仕方次第で、健康を維持することは出来るのです。