トランス脂肪酸がアメリカで禁止の理由は摂取量が多いから!

摂りすぎると健康に悪影響を及ぼすといわれるトランス脂肪酸が、いよいよアメリカで禁止されることになりました。

国民1人当たりの摂取量がとても多く、このままだともっと病気が増えて大変なことになるからです。

では、日本ではどうでしょう。

アメリカと同じように規制するのでしょうか。

今回は、トランス脂肪酸をめぐるアメリカの動きと、それに対する日本の反応についてお話しします。

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アメリカでのトランス脂肪酸摂取量はどれくらいか?

アメリカと日本のトランス脂肪酸の平均摂取量を、全エネルギーに占める割合で比較すると、次のようになります。

・アメリカ 2.2%
・日本 0.3%

摂取量と全エネルギーに占める割合を、わかりやすく1日当たりでみてみると、下記のようになります。

・アメリカ・・・5.8g、2.6%
・日本・・・1.56g、0.7%

トランス脂肪酸の摂取量の世界的な目標値が、1日あたり2g以下、全エネルギー中1%未満です。

日本はどちらもクリアしていますが、アメリカは大きく超えています。

トランス脂肪酸は主に工業的に作られる油脂食品に含まれており、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす働きがあります。

そのため摂りすぎると、動脈硬化から心血管疾患を招く恐れがあるのです。

もともと脂質の多い食を好むアメリカでは、かねてよりトランス脂肪酸の摂取量の多さが指摘されており、調査結果はそれを裏付けるものとなったのです。

アメリカで摂取量の多いトランス脂肪酸含有食品は?

トランス脂肪酸は、植物油を固体化させるときに行う水素添加で生成されます。

この工程を経る食品の代表が、マーガリン、ショートニングです。

その含有量は100g中マーガリンが約7g、ショートニングが約16gです。

トランス脂肪酸はまた、植物油の臭いを消すために高熱で精製する過程でも作られます。

その代表である食用植物油のトランス脂肪酸含有量は、100g中わずか0.85gです。

マーガリンとショートニングが、いかにたくさんのトランス脂肪酸を含んでいるかがわかりますよね。

トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングを使ったパンやお菓子、揚げ物にも含まれます。

例えば以下のような食品です。

・コーヒークリーム
・クラッカー
・クッキー
・ケーキ
・冷凍パイ
・その他焼き菓子
・ファストフード
・フロスティング(ケーキやドーナツのコーティング)
・冷凍ピザ
・冷凍生地製品(シナモンロール、ビスケットなど)
・電子レンジ用ポップコーンなどのスナック食品

トランス脂肪酸含有量は、100g中下記の通りです。

・味付けポップコーン 13g
・コーヒークリーム 1.7g
・クッキー 2g
・ポテトスナック 0.8g
・ドーナツ 0.9g
・菓子パイ 3.8g

こういった食品をふだんからたくさん食べるアメリカでは、トランス脂肪酸の摂取量が必然的に多くなるのです。

トランス脂肪酸の摂取量が多いアメリカで起きている問題

アメリカでは、かなり以前から肥満が問題になっています。

肥満はコレステロールの増加や高血圧をもたらし、動脈硬化から冠動脈疾患(血流が心筋に届かず止まってしまう病気)を招く危険があります。

事実アメリカでは、死亡原因の第1位が心疾患、中でも冠動脈疾患が半数以上を占めているといいます。

冠動脈疾患は脂質の高い食事が原因といわれています。

特に人工の油脂ともいえるトランス脂肪酸は、摂取量が高いと冠動脈疾患をはじめとした心血管疾患を生じやすくなります。

さらに肥満は、今や大人だけではなく、子供の問題にもなっています。

お菓子やスナック、冷凍ピザなどの子供の好む食品にはトランス脂肪酸が多いため、子供に肥満が増加しているのです。

そのためアメリカ政府は、トランス脂肪酸の摂取量を削減するため、規制の方向へとかじを切ったのです。

トランス脂肪酸の摂取量を減らすためにアメリカが行った規制とは?

まず2006年、トランス脂肪酸含有量の表示の義務付けが始まりました。

その食品の、1人前当たりにおけるトランス脂肪酸含有量を表示するのです。

ただし、1人前あたり0.5g未満の場合は「0g」と表示されます。

0.45gでも「0g」と表示されますから、仮に0.45gのものばかり食べていたら本人に自覚はなくても、実際はトランス脂肪酸の摂取量が多いといえます。

このように、アメリカのトランス脂肪酸含有量の表示はかなり問題含みなのです。

それでもマーガリンやパン、揚げ物については大いに削減が進みました。

しかし冷凍ピザや冷凍ビスケット、ポップコーン、ドーナツやケーキのフロスティングなどに依然高い含有量があったため、2016年6月、ついにトランス脂肪酸そのものが禁止となりました。

といっても、規制されるのは水素添加で生じるものに限ってです。

高熱由来でできるものや、もともと反芻動物(牛や羊)に含まれているトランス脂肪酸に関しては、微量で健康に影響しないため規制の対象にはなっていません。

しかも、3年猶予の後の2018年からの実施です。

それでもこの規制により、数千万の命が救われるといいます。

それ程この問題は、アメリカにとって深刻なのです。

日本ではトランス脂肪酸に対しどんな対策をとっているか

アメリカのこうした動きに対し、日本は非常に敏感に反応しています。

アメリカのトランス脂肪酸規制についてマスコミが報じると、マーガリンメーカーに対する消費者からの問い合わせが、1日に150件以上も寄せられるようになりました。

しかし報道側にも問題があり、中にはトランス脂肪酸のことを化学溶剤や食品添加物といったり、強い毒性があるかのようなまちがった言い方をするものもあり、誤解が今なお続いています。

さらに、規制されたのは水素添加由来のものだけであって、高温処理された食用油や、天然の牛肉や乳製品などには問題がないのにもかかわらず、全てまとめて悪者扱いされました。

厚労省の見解としては、普段から脂質の多い食べものの摂取量が多い方にだけ留意するよう述べるにとどめています。

こうした厚労省に対し、なぜ今すぐ規制しないのかという声もありますが、それには正当な理由があるからです。

日本がトランス脂肪酸を規制しない理由とは?

日本はアメリカに比べ、トランス脂肪酸の摂取量が圧倒的に少ないです。

確かに、最近の日本の食卓は欧米化されていますが、それでも伝統的に油脂の少ない和食文化が根付いています。

それに加え、昨今の健康ブームから、食全体が低カロリー・低脂肪へとシフトしています。

日本人のトランス脂肪酸摂取量は全エネルギーの0.3%といいましたが、水素添加由来に限って言えば、0.12%しかありません。

トランス脂肪酸の問題が起きてから、日本のメーカーはマーガリンのトランス脂肪酸含有量を自主的に減らしてきました。

実際某大手メーカーのマーガリンは、パンひと塗り10g中含有量はわずか0.08gしかありません。

全エネルギー量に対しては0.04%です。

こうした努力の結果、現在の日本人のトランス脂肪酸摂取量は、かなり削減されているだろうといわれています。

しかも、日本人の死因の第1位はガンです。

第2位は心疾患ですが、そのうち冠動脈疾患は欧米の1/5ほどしかありません。

つまり、トランス脂肪酸の問題は、日本人にとって今すぐ手を打たないといけないきっきんの課題ではないのです。

そのため、普通の食生活を送っている限り、日本ではとりたててトランス脂肪酸を排除する必要に迫られていない、というのが厚労省の下した結論です。

もちろん気になるかたは、個人のレベルで摂取量を減らしていけばいいでしょう。

日本の食はアメリカとは大きく異なるため同じ規制は必要ない

アメリカではいつのまにか食の中心にトランス脂肪酸が居座るようになり、知らないうちに国民の健康を脅かしてきました。

そのためトランス脂肪酸の規制は、切羽詰まったものだといえます。

しかし日本では事情が異なります。

確かに欧米の食スタイルが入ってきていますが、それでもまだ和食は健在です。

それどころか健康食として、改めて注目を浴びるほどです。

したがって、全く同じような規制をする必要はないといえます。

しかし体に影響を及ぼすことに変わりはないので、意識して減らすように心がけましょう。