2018年6月にアメリカでは、トランス脂肪酸の使用の規制が始まりました。
日本でもトランス脂肪酸の危険を感じる人たちが、色々なニュースや雑誌、ネット上で情報を提供したり、情報を集めています。
その中に、「マーガリンが危険だからバターを使っている」という意見もあります。
バターにはトランス脂肪酸は、含まれていないのでしょうか?
バターにもトランス脂肪酸フリーというのはあるのでしょうか?
それでは、バターとトランス脂肪酸の関係をご紹介しましょう。
トランス脂肪酸フリーへの取り組み
2003年にトランス脂肪酸の危険性が発表された当時、欧米では1人当たり1日に5g以上摂取をしている、という国もありました。
当時の日本は平均摂取量が0.5gで、欧米の10分の1でした。
しかし、危険性が指摘されたことから、この10年間でイギリスやアメリカを中心に、トランス脂肪酸の食品への表記や規制が始まり、2018年には全面的に規制をする国も出てきています。
WHOでは、目標基準としてトランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるように提示しています。
日本では、トランス脂肪酸はどのように取り扱われているのでしょう。
日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー量の0.3%と言われており、WHOの目標値を下回っています。
そのためか、日本ではトランス脂肪酸が特に規制されていません。
食品事業者に自主的な取り組みをすすめるのみです。
欧米ではすでに、マーガリン・ショートニングのトランス脂肪酸の規制が開始されています。
マーガリンやショートニングを使用したお菓子や食品の生産にも、規制がかけられています。
そのために、マーガリンからバターへと移行しているものもあります。
バターや牛脂に含まれてるトランス脂肪酸は天然のものなので安全という人もいますが、トランス脂肪酸には変わりはありません。
バターのトランス脂肪酸を減らした、トランス脂肪酸フリーのバターというものを探している人もいます。
バターのトランス脂肪酸は自然に作られるものですが、それを取り除くことはできるのでしょうか。
トランス脂肪酸以外の脂肪酸の危険性
そもそも、トランス脂肪酸が身体に悪いと言われているのは、トランス脂肪酸の摂りすぎで血管性の病気の一つの心疾患や認知症になりやすいと言われているからですね。
認知症は今でも色々な説があり、遺伝説や糖質の摂りすぎ説、飽和脂肪酸の摂りすぎ説などが上げられますので、飽和脂肪酸のせいとはいいきれません。
それでは、具体的に脂肪酸が体内でどのような働きをするのかご説明します。
飽和脂肪酸はコレステロール値を上げる効果があると言われています。
コレステロールは細胞膜や胆汁酸、ビタミンD、ホルモンの成分にもなりますので人間の身体には必要な栄養素です。
人間の身体では毎日1gの新しいコレステロールを必要としていますから、飽和脂肪酸を摂ることはとても大切です。
しかし、飽和脂肪酸を摂りすぎると、悪玉のLDLコレステロールを増やす原因となってしまい、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞といった血管の病気になる可能性が高くなります。
脳血管性の病気になると、脳血管性認知症の原因にもなるため、コレステロールの摂りすぎはよくないと言われています。
糖質の摂りすぎが認知症に結びつくのも、糖質を摂りすぎると身体の中で脂肪になって蓄積されてしまうためですね。
一方、植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸はコレステロール値を下げる働きがあります。
そこで、国が発表している食生活指針では「飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸」の摂取比率を「3:4:3」にしましょうと言っています。
日本ではマグロやカツオ、サンマなどの魚を食べる人が大勢いますし、バターや牛脂を欧米型の食事ほど使用しません。
しかし、日本でも欧米型の食事を摂る人が増えてきたため、生活習慣病になる人が増えています。
以前は、バターよりも不飽和脂肪酸を含むマーガリンの方が良いと言われていましたが、今ではトランス脂肪酸の問題が明るみになり、バターを使う人が増えています。
マーガリンには天然のものではなく人工的なトランス脂肪酸が含まれるからです。
しかし、バターにも天然のトランス脂肪酸は含まれています。
そこで、さらにトランス脂肪酸フリーに近いバターを探す人も増えています。
トランス脂肪酸フリーのバターは自然?
トランス脂肪酸が0だから安心、ということで最近「ココナッツオイル」や「パームヤシ油」を使ったマーガリンを購入する人がいるようですね。
しかし、ココナッツオイルは飽和脂肪酸を多く含みますので、摂りすぎはコレステロール値を上げることになります。
アメリカやカナダではトランス脂肪酸の全面的な規制をしています。
トランス脂肪酸を含む食品の輸入も禁止されました。
しかしながら、トランス脂肪酸はマグロや牛肉にも入っています。
そもそも天然の脂肪酸には、シス型のものがあり、リノール酸やアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸といったシス型の脂肪酸はトランス脂肪酸です。
牛肉の肩ロースには100g中、和牛で068g、輸入牛で0.77gのトランス脂肪酸が含まれています。
私たちの食生活から、天然のトランス脂肪酸まで0にすることはかなり難しくなります。
完全な和食でも、魚からトランス脂肪酸を摂取してしまいます。
バターも同じです。
バターにも100g中1.7~2.2gのトランス脂肪酸が含まれています。
バターは天然のトランス脂肪酸を含みますので、バターを購入する際に「トランス脂肪酸フリー」のバターを探す方が、不自然な感じがします。
それでも、トランス脂肪酸フリーにこだわる人のために、トランス脂肪酸を減らしたバターが製造販売されています。
しかし本当にトランス脂肪酸フリーのバターは自然なのでしょうか。
自然に作れるトランス脂肪酸フリーのバターが存在するのでしょうか?
トランス脂肪酸フリーに近いバターをご紹介
国内で販売されている、トランス脂肪酸フリーと言われるバターでもわずかにトランス脂肪酸は含まれています。
やはり全く0にするということは難しいですよね。
それでは、私たちが現在購入できる、トランス脂肪酸の量が少ないバターをご紹介しましょう。
雪印の「コクと香りの北海道バター」「雪印北海道バター」はいずれも、100g中のトランス脂肪酸量は1.9gです。
よつ葉乳業「パンにおいしいよつ葉バター」と、帝国ホテル「特選発酵バター」はいずれも100g中1.6gです。
カルピスの「カルピス特選バター」「カルピスバター有塩」はいずれも100g中2gの含有量です。
高級バター、トランス脂肪酸が少ないバターと人気のフランスのバター「エシレ発酵バター有塩、すべてにこだわったセレブバター」は100g中1.8gです。
数値で比較すると、日本のバターは決してトランス脂肪酸が多い方ではありません。
よつ葉乳業のバターは、他の商品も1.6gですので、私たちが購入できるバター&マーガリンの中では、かなり少ないと言えます。
欧米でマーガリンの代わりにバターを使っています、というニュースがありますが、バターを食べてもトランス脂肪酸がフリーになることはありません。
油脂を摂る以上は、天然のトランス脂肪酸が入っているということを忘れないでください。
発酵バター入りマーガリンはトランス脂肪酸フリーに近い
トランス脂肪酸問題が始まってから、日本国内ではマーガリンのトランス脂肪酸の含有量がかなり減っていることをご存知ですか?
バターのトランス脂肪酸量が100g中1.6g~2.2gですが、マーガリンは0.3~0.8gのものが増えています。
数年前の調査を発表しているサイトでは、マーガリンの中のトランス脂肪酸量はバターの5倍以上というのもありましたが、2018年には当時の10分の1くらいになっています。
トランス脂肪酸が少ないマーガリンは、「発酵バター入り」というものが多くあります。
アメリカのリッツカールトンホテルでは、マーガリンを全面的に規制し、バターに変えています。
しかし、日本の帝国ホテルが販売しているマーガリンは、トランス脂肪酸が0.5gでバターの半分以下です。
確かに天然と人工的な物の違いはありますが、量だけを見たら帝国ホテルのマーガリンの方が、トランス脂肪酸フリーに近いですね。
天然だから大丈夫、人工的だから怖いという人もいますが、トランス脂肪酸に違いはありません。
本当にフリーにするなら、人工的も天然もありません。
自然なものでトランス脂肪酸が少ないものを探して、さらに不飽和脂肪酸を含むものでバターにできたらいいですね。
トランス脂肪酸フリーにこだわったバターのお菓子
日本では、まだドーナツやケーキ、揚げせんべいなどのお菓子にトランス脂肪酸が含まれています。
原料のマーガリンやショートニング、食用油を使っているから、ということで最近はバターに変えているものもあります。
アメリカでは、マーガリンやショートニングの使用が規制されていますので、原料に入っているお菓子は製造されなくなりますね。
アメリカだけでなく、イギリスやオーストラリアなど、世界中でトランス脂肪酸を減らす傾向があります。
日本に輸入されるお菓子にも、バターを使ったものが増えるのではないでしょうか。
お菓子の原料でマーガリンの代わりに、バターを使用していればトランス脂肪酸フリーという表示になり、アメリカでは販売されているようです。
しかし、マーガリンと比較してバターはどうしても高額になります。
今後、成城石井やソニープラザ、コストコで扱うお菓子は、値上がりするかもしれませんね。
これからトランス脂肪酸フリーにこだわったお菓子が増えていきます。
ドーナツやカップケーキ、揚げせんべいなどの食用油やマーガリンの規制が始まりバターを使うようになれば、お菓子の価格は値上がりすることが考えられます。
さらに、バター以上にトランス脂肪酸が少ない油として、ラードを使ったお菓子が増えるかもしれませんね。
和食を食べればトランス脂肪酸フリーは気にならない
パンにはバターが含まれます。
パンには、バターやマーガリンを付けます。
欧米型の食事ではトランス脂肪酸をフリーにすることはできません。
しかし、和食や和菓子なら脂肪そのものが少ないものがたくさんあります。
元々、日本の食卓ではWHOの規制内のトランス脂肪酸量しか摂取していませんでした。
欧米では、健康とその味の良さから和食が注目されています。
トランス脂肪酸フリーの食品を探す以前に、和食や和菓子を中心の食生活を取り戻しましょう。