日本人であるなら、毎日の食卓に欠かせないのが味噌汁。
だしのひき方や具材の組み合わせなどのレシピが豊富で、単純だけれど奥が深い料理です。
その中でも、「いりこ」を使っただしのひき方はご存知ですか?
鰹節や昆布のだしのひき方はよく耳にするものの、いりこまでは手が回らないというあなたのために、解説しますね!
味噌汁のレシピ色々
味噌汁を美味しく作るレシピの秘密は、だしの素材と具材の掛け合わせにあります。
鰹節やいりこ、昆布などには旨味成分のアミノ酸が豊富に含まれており、これを組み合わせることで味に深みと奥行きがでます。
三大旨味成分は「グルタミン酸」と「イノシン酸」、「グアニル酸」と言います。
昆布だしにはグルタミン酸が豊富に含まれています。
「旨味」というものが初めて発見されたのは1908年のことで、それは昆布に含まれたグルタミン酸がきっかけだったと言います。
グルタミン酸は昆布の他には、トマト、玉ねぎ、アスパラガス、ブロッコリー、グリーンピース、チーズ、緑茶、マッシュルーム、ビーツ、味噌などに含まれています。
鰹節の旨味成分「イノシン酸」が発見されたのは1913年のことです。
イノシン酸はカツオ、イワシ(煮干し、いりこ)、鯖、鶏肉、豚肉、牛肉などに含まれています。
グアニル酸は1957年に発見された旨味成分で、干し椎茸、のり、ドライトマト、乾燥ポルチーニ茸などに含まれています。
旨味というのは掛け合わせれば掛け合わせるだけ美味しくなるので、グルタミン酸を含んだ味噌とイノシン酸を含んだいりこの味噌汁は美味しいこと間違いなしの組み合わせなんですね。
いりこから出汁をとる方法
いりこから味噌汁のだしをとるレシピをふた通りご紹介します。
まず、いりこは頭とワタを取り除いておきましょう。
こうすることで、雑味が抑えられて旨味のみを抽出しやすくなります。
いりこは銀色で、形の崩れていないものを選びましょう。
さらにフライパンや鍋で乾煎りすると、香ばしさが加わります。
水出しと火入れの両方のやり方があります。
材料は共通です。
【材料】
・水 500ml
・いりこ 10g(水に対して2%)
【水出しのいりこだしの取り方】
①下処理をしたいりこを水の中に入れ、ラップなどをして数時間冷蔵庫で寝かせておきます。
一晩たてば旨味がしっかりと出た澄んだだしになります。
この方法はいりこの雑味が出にくく、すっきりと上品なだしがとれます。
【火入れしたいりこだしの取り方】
①いりこを水に入れ、30分以上つけておきます。
こうすることでスムーズに旨味がでます。
②鍋をじっくり火にかけます。
5分以上経ってから沸騰する火加減にします。
沸騰してきたら火を弱めてアクをすくいとり、いりこを5分ほど煮出して完成です。
火入れしてとるいりこだしは、いりこの旨味や風味がしっかり引き出されたパンチの強いだしになります。
煮ている最中に箸などでつつくと旨味が出やすいですが、その分雑味も増えてしまうので気をつけましょう。
これらのだしに具材と味噌をいれてさっと煮れば、美味しい味噌汁になります。
いりこだしを取れるようになるとこんな楽しみも
味噌汁にはいりこだし!というご家庭も少なくないと思いますが、こんなに手軽にいりこだしが取れるならば、他のレシピにも活用できると思いませんか?
例えば昆布だしと組み合わせて、野菜の揚げ浸しのタレなどに応用してみてください。
鰹節でとっただしよりやや力強いだしになりますが、すっきりした味わいなので野菜の旨味を引き立ててくれます。
揚げ出し豆腐などのタレにするのも良いですね。
ちょっととろみをつけた餡に、干し椎茸などを使用したきのこたっぷりの具材を入れれば、いりこの風味も引き立ちます。
また、土佐酢にして酢の物を作っても美味しいです。
土佐酢は三杯酢に鰹節のだしを加えたものですが、これをいりこだしにするだけで、普段と違った旨味が楽しめます。
酢の物にするのはキュウリやワカメ、カニカマなどが一般的ですが、トマトなどを漬け込んでもとても美味しいですよ。
トマトにはグルタミン酸が含まれていますし、いりこだしのイノシン酸と相乗効果で味に奥行きを与えてくれます。
味噌汁だけでなく洋風のスープにもとてもよくあいます。
いりこだしとホールトマトで作ったスープは、夏は冷たく冷やして、冬はホットで楽しめるので是非チャレンジしてみてください。
味噌汁のレシピが広がる「旨味」の世界
味噌汁だけでなく、いりこだしがどのように料理にあうかをご紹介しました。
でもやはりおいしい味噌汁のレシピが気になるところですよね。
トマトの産地では、「トマトの味噌汁」が飲まれていることはご存知ですか?
トマトはグルタミン酸たっぷりの植物なので、実は味噌汁にもとてもあうんです。
カツオやいりこでとっただしならば、その旨味はもっと奥深くなります。
さらに、アスパラガス農家ではアスパラガスを味噌汁にいれます。
アスパラガスには「アスパラギン酸」という旨味成分が含まれているので、それが味噌汁に溶け出して非常に美味しく仕上がります。
「アスパラギン酸」にはイライラをもたらすアンモニアを体外に排出してくれる作用や、美肌効果、抗酸化作用などがあります。
一杯の味噌汁で健康になれるなんて素晴らしいですね。
いりこだけのだしも美味しいのですが、旨味の掛け合わせが味を奥深いものにするというお話を踏まえて、だしに昆布を加えることを提案します。
先ほどご紹介したいりこの半分のグラムを昆布に変更するだけです。
火入れで作る場合は、沸騰した段階で昆布を引き上げるのが良いですね。
こうすると、昆布のグルタミン酸といりこのイノシン酸が交わり、大変に美味しいだしになります。
いりこだしを使用した味噌汁レシピ
ここで、いりこだしを活用した味噌汁のレシピをご紹介します。
【わらびといりこだしの味噌汁】
わらびのぬめりが面白く、いりこだしで旨味が補助された美味しい春の一品です。
【材料】
・水 200ml
・いりこ 4g
・味噌 大さじ1
・わらび(下処理したもの) 好きなだけ
【作り方】
①いりこの頭と内臓を取り除き、水につけて一晩待ちます。
②鍋にだしを張り、味噌を溶いてわらびを入れ、味をなじませたら出来上がりです。
【玉ねぎと油揚げの味噌汁】
玉ねぎにはグルタミン酸が含まれています。
いりこだしのイノシン酸と美味しさのハーモニーを奏でてくれます。
油揚げも旨味たっぷりの食材なので、これは三重奏ですね。
【材料】
・玉ねぎ 1/2個
・油揚げ 1/4枚
・いりこだし 500ml
・味噌 大さじ1.5
【作り方】
①玉ねぎはスライスしておきます。
油揚げは油抜きして、短冊に切っておきます。
②鍋にいりこだしを張って沸騰したら、①を入れて煮ます。
火が通ったら味噌を溶き入れて完成です。
実は味噌汁には「ちゃんとした」レシピが存在しない?
味噌汁には「基本の形」は存在するものの、決まったレシピはありません。
いりこでも鰹節でも昆布でも好きなものでだしをとっていいですし、具材も何をいれても大丈夫なオールマイティー料理なのです。
ある料理研究家の先生は、だしすらも必要ないという話をしています。
野菜をたくさん入れて煮込めば、野菜から旨味が出て十分美味しいだしになると言うんですね。
でも、だしが全くない味噌汁を作るのはちょっと不安…という方こそ、いりこだしを活用してみてください。
水出しの方法であれば、一晩待つだけで簡単に美味しいだしがとれますし、だしがなくてもいいといっても、あった方が美味しいに決まっています。
冷汁などを参考に鯖缶ときゅうりをいれた味噌汁だって美味しいですし、そうめんや練り物をいれた味噌汁もメジャーではないもののちゃんと地域によっては存在します。
ご家庭によっては、前の日の残り物の天ぷらが入っていたりするんだとか。
想像力と構成力が鍛えられる味噌汁を、是非毎日の食卓に取り入れてみてくださいね。
毎日を彩る「味噌汁」をきちんと摂取しよう
味噌には体を温める効果があり、ミネラルが豊富なことから夏場や冬場には是非摂取してほしい食材です。
味噌汁にすることで塩分を控えめにできますし、味の組み合わせも多数あり、作るのも楽しいです。
外国の方が日本の食べ物で一番感動するのが「味噌」なんだとか。
味噌を口にすると、温かい気持ちになるそうです。
毎日いりこでしっかりだしをとって、自分だけの味噌汁レシピの開発をしてみるのも楽しいかもしれませんね。