日常的に使う硬貨の十円玉。
ピカピカなものと真っ黒になったものがあり、黒いと汚れているようで嫌ですよね。
台所用洗剤などで十円玉を磨いてもあまりきれいになりませんが、実は、十円玉に醤油をつけることでピカピカにすることができます。
今回は、なぜ醤油で十円玉がきれいになるのか、十円玉と醤油の成分から、きれいになるメカニズムをご紹介したいと思います。
十円玉の成分と汚れの正体は?
十円玉は銅とスズの合金ですが、スズの割合は少ないため純銅に近く、十円玉の成分は銅と考えてよいです。
ちなみに、その他の硬貨の成分は、一円玉はアルミニウム、五円玉は黄銅(銅と亜鉛の合金)、五十円玉と百円玉は白銅(銅とニッケルの合金)、五百円玉はニッケル黄銅(銅、亜鉛、ニッケルの合金)となっています。
では、十円玉が黒くなる汚れの正体は一体何でしょうか。
もちろん多くの人の手に触れるため、手あかなどの脂分やたんぱく質の汚れもあります。
しかし、醤油では手あかの汚れをきれいにすることはできません。
実は、十円玉が黒くなる一番の原因は、十円玉の成分である銅の酸化なのです。
酸化とは、空気中にある酸素と物質が結びつくことを言います。
十円玉の場合、酸素と銅が結びつきます。
十円玉が使われる時間が長いほど空気に触れるため、古い十円玉ほど黒く汚れてしまいます。
醤油の成分とは?
十円玉をきれいにすることができるといわれている醤油ですが、そもそも醤油にはどのような成分が含まれているのでしょうか。
醤油の主な原料は、大豆、小麦、食塩、水で、これらを混ぜ合わせ発酵させることで醤油ができあがります。
また、醤油の味を決めるためにその他にも様々な成分が入っています。
甘味として「グリコース」「アラビノース」などの糖類、また少量ですが「グリセリン」「アラニン」などの甘味アミノ酸も含まれています。
さらに、旨味成分として「グルタミン酸」が原料の大豆や小麦から抽出されます。
また、醤油を舐めて酸っぱいと感じないかもしれませんが、酸味として「乳酸」も含まれています。
人間の舌は、酸性の度合いがpH4~5だと最もおいしく感じると言われているため、醤油にも酸味を入れているそうです。
さらに、隠し味として少量ですが苦み成分も入れられており、苦みアミノ酸やペプチド類が含まれています。
醤油が十円玉の汚れに効果的な理由
醤油が十円玉の汚れに効果的な理由は、十円玉と醤油の成分を見れば分かります。
十円玉の黒くなる汚れは、十円玉の成分である銅の酸化によるものだとご紹介しました。
つまり、水と洗剤で手あかの汚れを落とすことはできますが、酸化による汚れは落とすことができないため、十円玉をピカピカにすることは難しいです。
酸化した銅を溶解して落とすのに効果的な成分は「酸」と言われています。
ただし、これは酸化物から酸素が取れる「還元作用」のためではなく、酸によって酸化物を溶解して汚れを落とす仕組みとなっています。
また、酸だけでも溶解作用はありますが、実は酸だけでは効果を十分に発揮することはできません。
この溶解効果を十分に発揮するためには、触媒として食塩の塩素イオンが必要となります。
つまり、乳酸をはじめリン酸や酢酸など数種類の酸を含み、食塩も入っている醤油は、酸化した十円玉をきれいにするのに効果的だと言うことができます。
醤油で十円玉をきれいにする方法
醤油で十円玉をきれいにする方法はとても簡単で、小学生や中学生の自由研究にもおすすめです。
挑戦してみましょう。
まずは以下のものを準備します。
【準備するもの】
・黒く汚れた十円玉
・醤油
・綿棒
・ティッシュ
・ポリ手袋
【方法】
①綿棒に醤油をつけて十円玉の表面を擦ります。
②ポリ手袋を手にはめて、ティッシュで十円玉の表面をふき取ります。
汚れがどれくらい落ちたか分かりやすくするために、十円玉の表面の半分だけ醤油をつけて擦るようにすると良いです。
この方法が面倒な場合は、十円玉を醤油に約10分間つけて、取り出して同じくティッシュでふき取る方法でも大丈夫です。
また、自由研究で実験をする場合は、醤油以外の液体でも試して結果を比較することをおすすめします。
例えば、同じ調味料のソース、ケチャップ、マヨネーズなどです。
また、酢だけにつける場合、食塩水だけにつける場合と比較しても面白いです。
さらに、調味料だけではなく、お風呂用洗剤、トイレ用洗剤など、様々な種類の洗剤でも試してみると良いでしょう。
十円玉がきれいになった液体に含まれる共通の成分を探してみると、興味深い自由研究になりますよ。
醤油以外に十円玉をきれいにできるものは?
醤油などで十円玉をきれいにする自由研究をしようと思っている方には少しネタバレとなってしまいますが、醤油以外にも十円玉をきれいにする効果があるものをいくつかご紹介します。
醤油で十円玉がきれいになる理由は、十円玉の成分である銅が酸化してできた十円玉の汚れが、醤油の成分の酸と塩によって溶解されて剥がれ落ちるためです。
つまり、醤油と同じように酸と塩が含まれたものであれば十円玉をきれいにすることができるということです。
例えば、同じ調味料であるケチャップは、主にトマト、酸、塩が含まれているため十円玉をきれいにすることができます。
その他には、ソース、マヨネーズ、タバスコ、レモン汁、酢などが十円玉をきれいにする効果があります。
また、日用品である台所用洗剤は中性か弱アルカリ性などが多いため十円玉の酸化銅の汚れをきれいにする効果はありませんが、トイレ用洗剤は酸性の洗剤のため、十円玉をきれいにすることができます。
しかし、ご紹介してきたものはあくまでも十円玉をきれいにする効果があるというだけで、完全にピカピカにできるものもあれば、少しだけきれいにできるものもあり、その度合いは異なります。
また、擦るだけなのか、液体につけておくのか、液体にどのくらいの時間つけておくのかによっても結果が異なります。
自由研究をする場合は、条件を変えて様々な角度から結果を比較するとより深い自由研究ができるため、おすすめです。
十円玉が劣化してしまう欠点も
十円玉をきれいにすれば、気持ちよくピカピカな硬貨を使えるため良いことだらけな気がしますが、実は醤油で十円玉をきれいにする方法には欠点があります。
醤油で十円玉を擦ると、酸化による十円玉の汚れが醤油の成分によって溶解されて剥がれ落ちるため、一見未使用の硬貨のようにきれいになります。
しかし、この方法は十円玉硬貨の酸化を早めてしまうことにもなります。
十円玉に緑色のカビのようなものがついているのを見たことがあるという方もいらっしゃると思います。
これは緑青(ろくしょう)という銅が酸化することで生成される青緑色の錆で、醤油に十円玉をつけると、緑青を発生させてしまいます。
また、酸化した銅を溶解して落としているため、単純に十円玉の質量が減ってしまいます。
つまり、醤油で十円玉をきれいにする方法は、十円玉硬貨を劣化させてしまうという欠点があるのです。
自由研究などで有意義な使い方をするのであれば問題ないですが、遊びでやるのは控えるようにしましょう。
日常生活のなぜを大切にしましょう!
醤油で十円玉がきれいになる理由を科学的に考えると、とても興味深いです。
このように私たちの日常生活には、なぜと思うことが数多くあると思います。
その疑問を大切にして、自ら調べたり実験したりすることが重要です。
ただし、十円玉がきれいになるメカニズムのように、十円玉を劣化させてしまう問題がある場合もあるため、遊びではなく自由研究として有意義な考察をするようにしましょう。