砂糖には、一般に上白糖をはじめとするサトウキビから作られるものと、てんさい糖と呼ばれる甜菜を原料にした砂糖があります。
最近、このてんさい糖の成分が、体を冷やさずミネラルを含む健康的な食品であると話題になっています。
同じく「砂糖」と呼ばれるものなのに、一方の上白糖などは健康的でない食品と見られがちです。
この2種の原料から作られる砂糖には、成分や甘さの違いはあるのでしょうか。
てんさい糖とは?上白糖と比べた成分の違い
栄養豊富で体に良いとされるてんさい糖。
見た目は黄褐色で、その甘さはクセがなく上品です。
料理に使うと独特の照りやコクが出るのも特徴のひとつです。
てんさい糖の原料は、甜菜という植物の根でサトウキビと並ぶ砂糖の原料として広く利用されています。
その姿からサトウダイコンとも呼ばれますが、大根とは別の種属でホウレンソウやキヌアなどの仲間になります。
また、寒さに強い性質を持ち、ヨーロッパではドイツやフランス、ロシア、日本では北海道などで栽培されています。
この甜菜から作られる砂糖は、上白糖、グラニュー糖、てんさい糖の3つです。
「上白糖やグラニュー糖はサトウキビから作られるのでは?」と思われがちですが、そもそも「上白糖」や「グラニュー糖」という呼び名は、砂糖を原料から精製した際にどれだけ精白するかによって変わるものです。
ですから、原料がサトウキビでも甜菜だったとしても成分に違いはありません。
そして、てんさい糖には他の砂糖にはないオリゴ糖が含まれ、腸を整える働きをすると広く認識されています。
しかし、このてんさい糖という砂糖ですが、甜菜から作られた砂糖なら、どの種類でもオリゴ糖が含まれると誤解されて広まってしまっているようなのです。
実際には上記のように、甜菜からも精白した上白糖やグラニュー糖が作られており、これらの2種類についてはサトウキビから作られたものと比べても成分にはほとんど違いがありません。
健康効果を期待して選ぶのであれば、砂糖の原料だけでなく製造法まで把握して選ぶ必要があります。
上白糖・てんさい糖の製造方法
砂糖を製造するには2つの段階があります。
1つ目は原料糖の製造です。
サトウキビなど原料となる作物を収穫した産地の工場で砂糖の素となる原料糖が作られます。
2つ目の段階で、この原料糖を精糖工場が仕入れ精製糖の製造を行います。
日本での砂糖の国内生産はおよそ1割ほどで、ほとんどの砂糖は出来上がった原料糖を輸入して製造されています。
まず、サトウキビから作る砂糖の製造過程を紹介します。
【原料糖の製造法】
①サトウキビを細かく砕き汁を絞る
②石灰乳を加えて加熱し、不純物を取り除いてから上澄み液を取り出し、煮詰める
③真空結晶缶の中で糖の結晶を作り、遠心分離機で結晶を取り出す
【精製糖の製造法】
①原料糖の結晶の表面を糖蜜で洗い分離させた後、結晶を湯に溶かしてろ過する
②活性炭などを使い、さらに色素などの不純物を沈殿させてろ過し糖液を濃縮させて結晶を作る
③出来上がった結晶を取り出し上白糖やグラニュー糖に加工する
④残った糖液は再び煮詰めて三温糖などを作る
甜菜を使った砂糖の作り方は、上記の2段階の方法で作られるほかに栽培地のある工場で直接製造する方法があります。
後者の製造法について紹介します。
【直接製造】
①甜菜を細かくし温水に付けてショ糖を取り出す
②石灰乳、炭酸ガスなどで不純物を沈殿させ、ろ過する
③イオン交換樹脂でさらに不純物を取り除き真空結晶缶のなかで糖液を煮詰めて濃縮し結晶を作る
④遠心分離機で結晶と糖液に分け、結晶を取り出し砂糖に加工する
⑤残った糖液をドラムドライヤーで乾燥させて固め、塊を砕いてふるいにかけ、粒を揃える
甜菜から作られる砂糖であっても真っ白に精製されたグラニュー糖や上白糖はサトウキビ由来の精製糖と変わりありません。
甜菜特有の甘さや栄養分を求めるのであれば、結晶を取り出した後に残る糖液をつかって作られるてんさい糖を選びましょう。
甘さ控えめ!健康を考えるならてんさい糖
てんさい糖の甘さは、グラニュー糖や上白糖と比べるとまろやかで上品なものです。
そしてなにより原料である甜菜が持つミネラル成分が残っており、さらに他の砂糖にはないオリゴ糖が含まれているのが特徴です。
ミネラルやオリゴ糖を摂れる食材として、上白糖からてんさい糖に切り替える方もいるでしょう。
てんさい糖を摂ることで得られる効果を挙げてみます。
●ダイエット効果
てんさい糖のGI値(食品が体内で糖に変換され血糖値が上がるスピード)はグラニュー糖や上白糖よりも若干低いため肥満予防や糖尿病予防に効果があるといわれます。
●おなかの調子を整える
てんさい糖に含まれるオリゴ糖は、腸内の善玉菌の栄養源となります。
これにより腸内の善玉菌が増えて腸内が活性化し腸内環境を整えることができます。
●ミネラル成分を含む
精製の度合いが低いてんさい糖は、上白糖などの白い砂糖よりは含まれるミネラル成分は多めです。
しかし含有量をみると、サトウキビを原料とした黒砂糖の方がより多くミネラルを含みます。
甘さも形もいろいろ!てんさい糖以外の砂糖の特徴
この記事で取り上げているてんさい糖のほか、多くの種類がある砂糖ですが、その用途には向き不向きがあります。
形状や味、溶けやすさなどによるものですが、砂糖選びに困らないよういくつか覚えておきましょう。
●上白糖
日本で最もよく使われる砂糖です。
結晶が細かくしっとりした砂糖で、コクがあるのでいろいろな料理やお菓子に使われます。
●グラニュー糖
上白糖よりも結晶が大きいサラサラした砂糖です。
淡白な甘さで、コーヒーや紅茶などの香りを楽しむ飲み物に最適です。
●三温糖
上白糖やグラニュー糖を取り出した後の液糖を煮詰めて作った、黄褐色をしたコクのある砂糖です。
甘みが強く、煮物や佃煮などに向いています。
●粉砂糖
いわゆるシュガーパウダーです。
グラニュー糖を細かくして粉状にしたものでお菓子のデコレーションに使われます。
●角砂糖
グラニュー糖を立方体に固めたものです。
ひとつぶんの重量が決まっているので計量が簡単です。
●黒砂糖
沖縄県や鹿児島県で成育されるサトウキビを絞り煮詰めて作られる砂糖で、濃厚な甘みと風味があります。
ミネラル分が多く含まれていて、塊を砕いたものをお茶うけにしたり駄菓子の材料に使用されたりします。
●きび砂糖
サトウキビに含まれるミネラルを活かした製法で作られている砂糖です。
煮物や魚料理に使うと、臭みが和らぎます。
上白糖やグラニュー糖にはサトウキビと甜菜の両方が原材料として使われることもあります。
それぞれの原料の特徴を味わうためには精白されない砂糖を選ぶ必要があります。
上白糖は非健康的?体に良い砂糖の摂り方とは
砂糖の摂りすぎが体に悪いのは誰もが知るところです。
それでも日々の食生活の中で一切砂糖を摂らないことは難しいものですし、甘いものは気持ちをリラックスさせてくれるので、つい口にしてしまいます。
そこで、砂糖と上手に付き合うために、体に良い摂り方を知ることから始めてみましょう。
●普段使いの砂糖を変えてみましょう
普段、常備している砂糖が上白糖などの精白されたものの場合、過剰に摂り続けると体へ悪影響を及ぼします。
精白され、白い色をした砂糖はミネラルやビタミンなどをほとんど含まない栄養のないカロリーだけの食品です。
同じ甘さを持った砂糖でも、精白されず色味のあるきび砂糖やてんさい糖、黒砂糖には栄養素が含まれているためそちらを選ぶようにしましょう。
●人工甘味料を避けましょう
生活習慣病や肥満の予防を考え、低カロリーやカロリー0の食品を選びがちです。
しかし、このような食品の中には頭痛やめまいなどの症状を引き起こす成分が含まれていることがあります。
カロリーの部分だけを見て不自然な甘みを求めず、果物などの自然な甘さで補うようにしましょう。
●清涼飲料水を避けましょう
一般的なソフトドリンクには500mlあたり50~70gの砂糖が含まれます。
清涼飲料水を毎日飲んでいると、糖分の過剰摂取に陥り体調を崩したり病気になってしまったりします。
水分を補給するなら糖分の多い清涼飲料水ではなくお茶やミネラルウォーターで補給しましょう。
甘さは砂糖以外からも得られる!
前の項目で砂糖を避ける方法を紹介しましたが、それでも甘いものは恋しくなるものです。
きび砂糖やてんさい糖を普段使いの砂糖に切り替えることは前の項目でも紹介しましたが、ここでは砂糖に変わる天然甘味料をまとめてみます。
甘味料選びの参考にしてみてください。
●蜂蜜
最も手に入りやすく古くからある甘味料のひとつです。
上白糖をはじめとする砂糖の主成分はショ糖と呼ばれ、口の中に残ると虫歯の材料となってしまいますが、蜂蜜の甘さはブドウ糖と果糖からできており、虫歯になりにくいとされています。
また、砂糖よりカロリーが低く栄養素も豊富に含まれているので健康を意識しているのなら最適の甘味料となるでしょう。
●メープルシロップ
カナダが原産のカエデの樹液を煮詰めて濃縮したシロップです。
蜂蜜と同様にミネラル成分が豊富です。
また、むくみを改善する作用があるともいわれているカリウムが豊富に含まれた食品です。
●本みりん
もち米、米麹、焼酎などのアルコールでできた本みりんは、アルコール分を飛ばす(煮切る)ことでまろやかで上品な甘さのシロップになります。
料理に使う砂糖の代用品として最適です。
砂糖と上手に付き合おう
砂糖がもたらすものには、良い部分と悪い部分があります。
しかし、「体に悪いから一切食べない」とか、「体にいいのでたくさん摂る」といった偏った食べ方ではどちらにしろ健康被害につながってしまいます。
大切なのは、どのようなメリットやデメリットがあるのかを知り自分で判断することです。
毎日口にする食品ですから賢く摂り入れたいですね。