塩を選ぶとき、売り場に行くとその種類の多さに驚きます。
天然塩、岩塩、海塩、精製塩とあまりの数に、どの塩を選べばよいか迷ってしまします。
そして、塩と言えば減塩です。
塩分の摂りすぎに目が行きがちですが、人間の体にとっては塩分不足も大きな影響を与えてしまうことをご存知ですか?
現在、日本で販売されている塩は「天然塩」、「再生加工塩」、「精製塩」の3種がありそれぞれ体に与える効果が異なります。
こちらでは、この3種の塩の成分の違いや体への影響についてご紹介していきます。
精製塩とは?塩の種類と栄養成分について
塩と名の付く商品は数多くありますが、製法・原料によりそれぞれ3つに分けられます。
【製法】
●精製塩
海水に電気分解を施してナトリウムイオンを抽出した、より濃い塩水をさらに煮詰めて作られた塩です。
「食塩」または「食卓塩」として販売されています。
大規模生産により安価で、品質が安定しています。
製造の過程でミネラルなどの成分が取り除かれていて、ほぼ塩化ナトリウムのみの状態です。
●再生加工塩
メーカーにより加工法や成分量は変わりますが、主に輸入した塩や精製塩にミネラルやにがりを添加して成分調整した塩です。
精製塩と差別化するために「〇〇の塩」などといった名称で販売されています。
●天然塩・自然塩
主に塩田などで自然に濃縮されて作られた塩のことです。
塩化ナトリウムの純度が低い分マグネシウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルを多く含んでいます。
天日干しで作る「天日塩」、天日干しの途中で煮詰める「平窯塩」のほか「岩塩」「湖塩」などがあります。
【原料】
●海水塩
海の水から採られた塩です。
製法はいくつか種類があります。
電気分解して取り出す方法、太陽の光と風を利用して水分取り除く方法、窯の中で海水を煮詰めて作る方法などです。
日本では湿気が多いため天日塩を作ることは難しく、海水をくみ上げて窯で煮詰める製法のものが多くみられます。
また、ミネラル成分が含まれているものは、電気分解でナトリウムを取り出す精製塩以外の塩になります。
●岩塩
海水がもとになっているのは海水塩と同じですが、こちらはおよそ3億年以上も前に海だった場所に岩塩層とよばれる層ができ、そこから採れるものを岩塩と呼びます。
世界各地で採取されていて淡いピンクや黄色、黒色など、色が付いているのが特徴です。
この色味は岩塩に含まれる鉱物によるもので、鉱物の含有量が多いものは食用ではなくボディーケアに使われることが多いようです。
ミネラル成分は少なく、海水塩より塩辛いものが多くあるのも特徴です。
●湖塩
塩湖から採れる塩のことです。
塩湖とは、海水が岩塩に変化していく過程でできる海水の湖のことで死海やカスピ海、ボリビアにあるウユニ塩湖などが有名です。
これらの製法と原料の組み合わせなどで多くの塩が作られています。
比べてみよう!ミネラル成分によって変わる塩の味
一般に市販されている塩には、そのパッケージに原材料や原産地、製造方法、栄養成分などの多くの情報が記載されています。
手に取った塩がどのようにして作られたか、何を含むものなのかが分かるので、どの塩を買うのか迷ったときには参考になります。
塩の主な成分は塩化ナトリウムです。
その他にマグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラルを含みます。
ナトリウムの割合が高いほど、しょっぱい味がします。
含まれる成分によって味に変化があるので、ミネラル分もチェックしてみるようにしましょう。
このミネラルの量や各ミネラル分のバランス、産地や粒子の大きさによって溶け方が変わり、味わいに変化が生まれます。
【ミネラル分による味の傾向】
・カルシウム…甘味
・カリウム…酸味
・マグネシウム…苦味
【粒子の大きさによる傾向】
・大きめ…口の中で塩辛さが長く残る
・小さめ+酸味が強い…てんぷらや白身の魚、肉などの油脂と合う
・小さめ+苦みが強い…トマトなどの野菜に合う
ちなみに、精製塩は電気分解によりナトリウムのみを抽出しているため、ミネラルをほとんど含みません。
これらのことをもとに、改めて料理に合わせる塩を選んでみてはいかがでしょう。
天然塩は湿気大敵!成分によって固まる塩の扱い方
塩は毎日の料理に使うものです。
使う度に出し入れしていくうちに、保存容器の中の塩が固まってしまったりしませんか?
これは、容器の中に入り込んだ水分を、塩が吸収してしまうためにおこる現象です。
塩は腐ることがないとされ、法令等で賞味期限や保存法の記載を省略できる食品となっています。
ですが、湿気で固まったり周りの食品の匂いが付きやすい性質があるため、高温多湿の場所を避けて、強い匂いのものと一緒に置かないようにします。
そして、湿気に触れさせないよう、タッパーや蓋つきの容器に入れて保管しましょう。
精製塩は、塩化ナトリウムの量が多いためサラサラした塩ですが、その他のミネラルを多く含む天然塩は、水分を吸収しやすくすぐに固まってしまうため注意が必要です。
塩が固まるのは水分を含んでしまったことが原因ですので、水分を取り除けばサラサラな状態に戻すことができます。
フライパンで焦げ付かないよう乾煎りしたり、電子レンジで加熱(目安:500Wで30秒ほど)して水分を飛ばしてみましょう。
使いやすいサラサラの塩になるはずです。
フライパンで加熱するときに少量の酒を加えると風味の良い塩になります。
身近な精製塩だけど…塩に含まれる成分の体への影響を知ろう
精製塩をはじめ、多くの塩の主成分であるナトリウムは、必須ミネラルのひとつとされ塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどといった様々な形で体内に存在しています。
ナトリウムの働きは主に4つあり、1つ目がカリウムと共に体液の浸透圧を調整すること、2つ目は体内をhp7.35~7.45の寂アルカリ性に保つこと、3つ目が他の栄養素の消化・吸収を助ける働きをすること、4つ目には筋肉の動きを神経伝達をサポートすることです。
体内でこれだけ重要な働きをするナトリウムですので、過剰に摂りすぎたり不足したりすると体調を崩すことにつながってしまうのです。
一日の塩分摂取量は目安として、男性が8.0g以下、女性が7.0g以下と定められています。
この量を超えて取り続けると高血圧症や腎臓病、不整脈や心疾患といった症状を引き起こしてしまいます。
塩分量を考えるうえで、摂りすぎによる健康被害を回避するために摂取量をコントロールするのはもちろんですが、それだけではなく排出とのバランスを取ることが大切です。
塩分の排出は、汗などで体の外へ出ていきます。
汗のかき始めは、そのほとんどが水分です。
水分を除くと、鉄分やカリウムなどの成分が少量含まれています。
その後、汗をかきつづけると水分の割合が減っていき、塩分は約10倍に濃縮されてしまいます。
スポーツをする方や汗をかくことの多い仕事をしている方は、水分の補給と同時に、塩分補給をする必要があります。
こうして塩分が出てしまったあと、体内ではどんなことが起こっているのでしょうか。
●めまいやふらつきを起こしてしまいます。
塩分が減ると体内の塩分濃度を保つために、汗や尿が体外へ出ていくのを制限します。
このため体内の水分量(血液を含む)が減り、血液による脳への酸素供給が減るため、めまい・ふらつきを起こしやすくなります。
●食欲減退・脱力感にみまわれます。
塩分不足になると、当然血液や消化液も少なくなっていきます。
胃の中の消化液が減ると、消化できる量も減るため食欲もなくなっていきます。
体の機能は衰えていき、ダルくなったり脱力感を感じるようになります。
●脱水症状や筋肉異常を起こします。
大量に汗をかくと、塩分も体の外へ排出されてしまうため、体内の塩分濃度が低くなります。
十分な塩分が保たれない状態で水分だけを取り入れると、低い塩分濃度に合わせて多量の水分を体外へ出そうとするため、脱水症状や熱中症をおこします。
また、運動中は発汗による水分排出への対応や血流配分の変化から腎臓機能が低下すると言われています。
そのため、塩分補給を怠ると体内の少ない塩分は排出される一方になりやがて筋肉からもナトリウムが奪われてしまいます。
この状態が長く続くと、筋肉の収縮信号に異常が出て筋肉に痙攣の症状が出てしまいます。
これらのことから、塩分を控えることばかりでなく、水分と塩分のバランスを考えた取り入れ方を知る必要がありそうです。
減塩なのに塩…?食塩(精製塩)との成分の違いと効果
最近は店頭で「減塩しお」をよく目にするようになりました。
そのほとんどがナトリウムでできている食塩(精製塩)と比べて体にいいイメージがありますが、そもそも「塩」なのに減塩とはどういうことなのでしょう。
各メーカーが販売しているいわゆる「減塩しお」には、塩化カリウムという成分が含まれています。
高血圧症の人やそれを予防するためには、塩分(ナトリウム)を制限することで血圧への悪影響を防ぐ効果があるとされています。
そのため、ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた「減塩しお」が登場しました。
塩化カリウムも、ナトリウムと同様にしょっぱい味をしているため、このような置き換えができたのです。
「減塩しお」を使うことは、ナトリウムの摂取を抑えることには役立つと言えそうです。
では、置き換えられた塩化カリウムを取り続けても良いものなのでしょうか。
人間の体内では、ナトリウムは細胞の外、カリウムは細胞の中に多く存在しています。
この濃度関係が崩れてしまうと、体内の水分の動きに異変が起きてむくみが生じたり、高血圧の原因になります。
特に高血圧はカリウム不足が原因になる場合があり、患者の食事療法として食塩を減らすとともにカリウムの摂取を増やす指導をすることもあります。
しかし、そのカリウムも摂りずぎれば害になります。
カリウムの過剰摂取が原因で不整脈などの症状を起こし、命に係わるような事例もあります。
また、腎臓が悪い方には「減塩しお」は禁忌となります。
体内の血液をろ過して尿を作る器官である腎臓が悪いと、ろ過すべき血液中のナトリウムやカリウムの濃度が高い場合に、腎臓にかかる負担が大きくなってしまします。
自然の食品から摂る分には、過剰摂取になるようなことはまずありませんが、サプリメントなどで摂り入れた場合には注意が必要です。
同じように「減塩しお」もカリウムの含有量が高いので要注意です。
血圧が高いために「減塩しお」の利用を考えている方は「減塩になるから」という理由だけで安易に手を出さず、医療機関で腎臓の状態を確かめてから減塩法を考えるのが良いでしょう。
塩分を控えよう!精製塩を「減らす」以外の減塩法
健康な体を維持するためには、毎日の食事に減塩された料理を摂り入れることが不可欠です。
前の項目で触れた「減塩しお」は、食卓に置く食塩(精製塩)と取り換えるだけなので、とても手軽で簡単な方法です。
しかしコスト的にはそれほど安いものではなく、また味も食塩(精製塩)よりも含まれる成分(塩化カリウム)独特の苦みがあり、続けることが辛くなってしまう方もいるかもしれません。
せっかく減塩しようとしても、辛くてやめてしまうのはもったいないことです。
そこで、減塩商品に頼らずに塩分を控える方法をご紹介したいと思います。
●ハーブを活用しましょう。
タイムやバジル、オレガノなどで料理の香りを高めます。
洋食にはハーブを、和食には薬味や香味野菜を加えると味、風味の幅が広がって食事もより楽しめます。
●スパイスを活用しましょう。
パプリカやクミン、チリペッパーなどを肉に揉みこむことで、味に深みが出ます。
●酸味のあるものを使いましょう。
レモン、ライム、すだち、柚子などの柑橘類で酸味を足します。
新鮮なものを準備して切って、仕上げに振り掛けるだけなので手軽に使えます。
●ナッツやシート類を活用しましょう。
ローストしたナッツや炒りゴマ、クルミはそのまま食べても香ばしく美味しいものです。
サラダやパスタなどに加えて風味を足します。
●食卓にペッパーミルを常備しましょう。
食卓の料理に物足りなさを感じたとき、塩を振り掛けるのではなく挽きたての胡椒を掛けていただきます。
胡椒の香りで満足感が得られます。
塩にこだわることは、食へのこだわりである
自然塩や天然塩には、多くのミネラルが含まれています。
また、ほとんどがナトリウムでできた精製塩と比べて、人間の体液組成元素に近いとも言われています。
これから新たに塩を選ぶときには、原産国や製造法に注目して自分に合ったものを探してみるのも良いでしょう。
また、塩を選び直すことは普段の食生活を見直すことにもつながっていきます。
塩は素材の良さを引き出してくれる調味料ですから、こだわって選んでみてはいかがでしょうか。