酒粕の甘酒は、米麹のものと比べてそれほど飲まれていません。
砂糖が入っている、アルコールが含まれている、味にクセがあるなど、飲む人や時間が限定されるからです。
しかし、酒粕の甘酒は、知る人ぞ知るダイエットに効果的な飲み物です。
米麹の甘酒にはない栄養がカギです。
そして、酒粕の発酵方法が関係しているのです。
それでは、酒粕の発酵方法や栄養を見ていきましょう。
酒粕の甘酒の発酵方法
酒粕の甘酒はどのようにして発酵が行われるのでしょうか。
作り方から発酵の過程を見ていきましょう。
・蒸した米に麹をつけて米麹を作ります。
・(発酵)した米麹を、酵母でさらに(発酵)させ、もろみを作ります。
・もろみを搾って日本酒ができ、搾ったあとの残りを酒粕といいます。
・その酒粕を溶いて甘酒を作ります。
このように、麹の(発酵)、酵母の(発酵)、合わせて2回の発酵があります。
ですが、酒粕の甘酒は、甘酒を作るだけのために2回発酵をするのではありません。
もともとは、もろみの搾りカスである酒粕の再利用のために甘酒が作られたのです。
昔、農業の閑散期である冬に、農家は副業として酒蔵で日本酒の仕込みを手伝っていました。
新酒のシーズンの11月には、多くの酒粕が出ます。
そして年の瀬に寺社で、残った酒粕で作った甘酒をふるまったのです。
そんな昔とは違って、現在では酒粕の甘酒は時季を問わず1年中飲まれています。
なぜなら酵母の発酵による豊富な栄養が着目されているからです。
酒粕の甘酒、発酵から生まれる栄養
2回の発酵によってどのような栄養が含まれるのでしょうか。
効果からいうと、酒粕の甘酒=ダイエット効果です。
米麹の発酵でブドウ糖が生成します。
その後、酵母の発酵でブドウ糖はアルコールやタンパク質、食物繊維などを生成します。
多くの人が成功させたいダイエットに必須な栄養価のひとつは、食物繊維ですね。
そして注目すべきは、酒粕独自の栄養価です。
それは、酵母の発酵によって発生するタンパク質の一種、レジスタントプロテインです。
直訳すると、レジスタント(抵抗する)プロテイン(タンパク質)です。
どのように抵抗しているかというと、胃や腸に留まらずに、脂質を吸収したまま便と一緒に排出されるのです。
また、レジスタントプロテインは食物繊維の働きを活発にするため、代謝がよくなります。
レジスタントプロテインを含む食品は少なく、酒粕は数少ないうちのひとつです。
同じ甘酒でも、米麹の甘酒には含まれません。
酵母の発酵がある酒粕の甘酒にしか含まれないのです。
以上のことから、酒粕の甘酒はダイエット効果が高い飲み物といえますね。
米麹と酒粕の発酵の違い
では、酒粕と比べて、米麹の甘酒の発酵はどのように違うのでしょうか。
さきほど酒粕の甘酒は2回の発酵とお話しました。
対して、米麹の甘酒は1回の発酵だけです。
米麹を(発酵)させてブドウ糖が生成されます。
この1回の発酵のみで、米麹の甘酒は完成します。
また、酒粕の甘酒は、ダイエットに効果的であることもお話しましたね。
米麹の甘酒を一言でいうと、「エネルギー補給」です。
ブドウ糖はエネルギー源になります。
甘酒は「飲む点滴」ともいいますが、まさに疲れた体にこの1杯だけで元気になれます。
酒粕の甘酒は、もろみの残りを再利用するために作られていました。
米麹の甘酒はというと、夏場の暑気払いとして作られていたのです。
甘酒といえば、冬に飲む温かい飲み物というイメージがあります。
しかし、当時の米麹の甘酒は夏バテを防ぐ、今でいう栄養ドリンクとして人気だったのです。
酒粕に甘さがないのは発酵による?
酒粕自体には、アルコールの風味を除いて、ほとんど味がしないため、単にお湯で溶いただけではおいしくありません。
そのため、酒粕の甘酒には、砂糖やショウガで味付けをしています。
なぜ、味がしないのでしょうか。
これも発酵が関係しています。
麹、酵母の発酵で、ブドウ糖はアルコールに分解されます。
甘みのもとである、ブドウ糖がなくなってしまうのです。
反対に、米麹の甘酒は、麹の発酵1回だけなのでブドウ糖の糖化による甘みがあるので、甘さ控えめの甘酒を作れます。
酒粕の場合は、酒粕をひとつまみちぎってコップに入れ、砂糖の量を調整してお湯で割ればお好みの甘さに作ることが出来ます。
カロリーが気になる方や夜に甘酒を飲みたい人は、ぜひ酒粕で甘酒を作ってみてください。
ちなみに、米麹と比べて酒粕の甘酒の方がカロリーが高めといわれていますが、それは誤りです。
砂糖を加えることでカロリーが高くなるのであって、本来は酒粕の方がカロリーは低いのです。
これも、酒粕の甘酒がダイエット効果がある理由です。
酒粕の甘酒、発酵で生まれる栄養
酒粕の甘酒には、先程説明しましたレジスタントプロテインや食物繊維の他に、発酵による酵素を多く含んでいます。
この酵素とは、体内で栄養を素早く吸収する分子です。
レジスタントプロテインや食物繊維に酵素、これらを一度に摂ると、最強のダイエットドリンクになります。
効率よくこういった栄養価を吸収したいですが、冷たくして飲むのも代謝のことを思うとよいとも言えません。
そこで発酵による酵素の働きを最大限にするために、ぜひ酒粕の甘酒を少しだけ温めて飲んでください。
加熱しすぎると死滅しますが、40℃近くまで温めると発酵による酵素は活性化します。
また、少し温めるとアルコールがわずかですが減ります。
お酒が苦手な人には、若干ですが甘酒が飲みやすい味になるのでおすすめです。
まら酒粕の甘酒には多くの方がショウガを入れますが、ショウガも温めると新陳代謝が活発になります。
代謝がよくなればなるほど、体内の老廃物を流してくれて美容、ダイエットに効果があるでしょう。
甘酒以外の酒粕の利用法
板粕がひとつあれば、甘酒以外にもいろいろな料理に使えます。
板粕は、シート状に伸ばして使いやすくした酒粕です。
鍋やみそ汁などに入れて、手軽に発酵食品を摂れます。
酒粕を発酵させて酵母を作ったら、パンも作れますよ。
酵母液にして使うと、強いアルコール臭は飛んでお米のようなよい香りのパンが作れます。
酒粕のよいところは甘くないため、味にほとんど影響しません。
和食にとらわれず、ケーキやクッキーにも入れてもおいしいですよ。
栄養があり、発酵食の酒粕を使った甘酒を使いたいけど、味が苦手という人は多いです。
そんなときは思い切って70℃以上加熱し、アルコールを飛ばして使ってみてください。
本来は酵母の栄養を摂るために、40℃で摂取するのが理想的です。
しかし、高温で加熱してもタンパク質がなくなるわけではありません。
食物繊維も熱に強いです。
1㎏買っても、500円前後とお値打ちです。
甘酒以外でも、ぜひいろいろなレシピにトライしてみましょう。
酒粕を毎日のレシピに取り入れましょう
酒粕の甘酒は微量のアルコールが含まれているなど、米麹の甘酒と比べてハードルがあります。
しかし、酒粕にしか含まれないレジスタントプロテインがあります。
甘酒は発酵によって酒粕と米麹、それぞれ栄養が大きく分かれるのです。
まずは板粕1袋から試してみて、甘酒を飲んだり料理に使ってみましょう。
酒蔵によって味が違うのが、酒粕のおもしろいところです。
栄養はもちろん、味から興味を持ってリピーターになるかもしれませんね。