醤油は今、国内だけでなく世界中で、大切な調味料として多くの人に使われています。
国内の醤油メーカーは、国内外の人達のニーズに合わせた新しい醤油の研究にも取り組んでいます。
地方では昔ながらの製法で、自然の醤油造りを守り続けているメーカーもあります。
今回は、様々な醤油メーカーの特徴と取り組み、今まであまり知られていなかった新しい醤油メーカーをご紹介します。
醤油の歴史
和食に欠かすことができない醤油。
原料の大豆は、中国から日本に伝わりました。
醤油の歴史は古く、弥生時代には大豆の栽培が行われていたと言われています。
また、肉醤・魚醤・草醤というものが作られえいたという記録もあります。
1249年に禅僧である覚信が宋に渡って修行し、紀州で作り方を教えたのが、金山寺味噌の起こりと言われています。
味噌をつくる過程で桶の底に溜まった液体、醤油の元となったと考えられる「たまり」を調味料として使用しました。
1478年から続く、奈良興福寺多聞院の僧英俊に記された「多聞院日記」には、醤・味噌・唐味噌という記述があります。
その後、理科学的な手法の研究進歩に伴い、醸造技術及び企業形態の近代化が徐々に進んでいきました。
現在では、日本の伝統製法でつくる無添加の醤油が見直されています。
メーカーや地域によって、醤油の味は異なるので、消費者は自分の好みに合った醤油を選ぶ楽しみがあります。
また、海外でも日本食ブームにより醤油の需要が増えています。
醤油メーカーの歴史
1645年、濱口儀兵衛は、江戸時代初頭に現代の千葉県銚子市で、現在のヤマサ醤油を創業しました。
濱口儀兵衛は、醤油醸造業者の当主に代々受け継がれる名前です。
同じく銚子市発祥のヒゲタ醤油は、1913年田中家のヒゲタ印と濱口家のジガミサ印、そしてカギダイ印の深井家の三蔵が合弁して作られたメーカーです。
一方、国内最大手のキッコーマンは、1661年、花輪村名主19代高梨兵左衛門が野田で醤油醸造を始めたメーカーです。
その後、亀屋市郎兵衛、高梨兵左衛門、粕屋七郎右衛門、茂木七左衛門、大塚弥五兵衛、杉崎市郎兵衛、竹本五郎兵衛の7家が野田醤油仲間を結成しキッコーマンの基礎となります。
野田醤油仲間は、次々と新しい食品事業を展開し、1917年高梨家と茂木一族七家が野田醤油株式会社を設立します。
さらに同年、彫切家が野田醤油の出資により万上味醂株式会社を設立します。
戦後、1961年に吉幸食品工業株式会社(日本デルモンテ株式会社)、1962年に利根飲料株式会社(利根コカ・コーラボトリング株式会社)を設立と、日本の食品業界大手の発祥となっていきます。
醤油メーカー キッコーマン
キッコーマンは醤油の原点キッコーマン醤油の他に、キッコーマン特選丸大豆しょうゆ・キッコーマン減塩しょうゆ・丸大豆GABAしょうゆなどを展開しているメーカーです。
卓上ボトルやだし醤油を入れると全部で34種類、ヒゲタ醤油を含めると37種類の醤油を作っています。
キッコーマンは「おいしい記憶を作りたい」をコーポレートスローガンに「食文化のWA!をつくろう!」や「誰かといっしょにご飯を食べたくなる物語」「醤油使い分けグランプリ」といった映像やエッセイの募集、食育・食文化の取り組みを行っています。
キッコーマン醤油の公式サイトでは、料理にあった醤油の使い分けや、料理の基本の映像配信をしています。
今、社会全体が食の大切さを認識し、学校教育でも、主要五教科以上に食の大切さを重要視しています。
キッコーマンは、こういった学校教育にも食育教室を提供し、次世代の子どもたちへ日本の食文化を伝える活動を行っています。
また、海外で働く邦人のために1957年アメリカで現地販売を始めたのをきっかけに、現在ではアメリカ・オランダ・シンガポール・台湾に現地工場を持ち、生産販売を広げています。
醤油メーカー ヤマサ
キッコーマンに並ぶ醤油の老舗メーカーのヤマサは現在、国内の醤油消費量第二位を誇ります。
パウチを使った醤油のエコ容器商品も展開し、大小様々な量を含めると50種類以上の醤油商品を展開しています。
ヤマサ醤油は昔から板前さんなどのプロからの評価が高く、業務用として多く利用されています。
ヤマサはアメリカオレゴン州の現地工場を持ち、世界で販売を行っています。
2016年に開催された「BENTO世界グランプリ」には日本国内だけでなく、世界30か国から、創意工夫されたお弁当のレシピがエントリーされました。
醤油の他に、だし・鍋つゆ・調味惣菜などの商品も展開していますが、ヤマサでは品質の開発中で培われた技術を元に、医薬・化成品事業も展開しています。
他社でも、うまみ成分のアミノ酸が様々な医療とつながりがあることが発見されています。
このような研究から、食品添加物の開発、化粧品原料、医薬品原料、ジェネリック医薬品の開発を行っています。
まだある!国内の魅力ある醤油メーカー
日本には醤油メーカーだけで大手と呼ばれるものが18社、地方の小さい醤油メーカーを含めると、1,000社以上あります。
醤油メーカーのほとんどは千葉県の銚子市、野田市にあり、千葉県は醤油メーカーの発祥の地となっています。
他にも愛知県、石川県にも古くからの醤油メーカーがあります。
西日本を中心に販売されているマルキン醤油・ヒガシマル醤油、九州のフンドーキン醤油、東北のワダカンなどがあります。
関東では、美智子皇后の実家本家の群馬県正田醤油が有名ですが、野田市が埼玉県に隣接しているということもあり、埼玉県にも醤油メーカーが多くあります。
埼玉県では坂戸市の弓削田醤油、川越市の松本醤油、川島町の笛木醤油など、県内全域で5社の醤油メーカーがあります。
弓削田醤油が展開する「彩の国醤遊王国」では工場見学や醤油しぼりの体験ができます。
奈良県には醤油メーカーが多く、組合に入っているメーカーだけで県内に19社あります。
鳥取県14社、福岡県14社、和歌山県も多く9社あります。
奈良県の醤油メーカーはそれぞれが独自の味にこだわり、微妙に味の違いのある醤油を販売しています。
奈良市内は、井上本店のイゲタ醤油、天然醸造醤油の片上醤油、向出醤油の宝扇濃口と醤油の醸造元が12カ所あり、醤油の蔵巡りができます。
海外展開をしている醤油メーカー
世界中で愛されている調味料の醤油ですが、英語で醤油を「ソイソース」(大豆のソース)と訳します。
しかし、このソイソースは、日本の醤油と中国の生抽・老抽の両方を指します。
しかし、中国のソイソースはドロッとしていて甘味があり、味も濃いのが特徴です。
そのため、日本の醤油と同じ感覚でソイソースを購入すると、大失敗してしまいます。
ソイソースには中国やインドネシアの醤油のように色々な添加物が配合された「Chemical Soy Sauc」と、天然醸造醤油「Naturally Brewed Soy sauce」があり、日本の醤油は後者になります。
海外で天然醸造醤油を扱っているのは、ほとんどキッコーマンで、アメリカはキッコーマンとヤマサになります。
その中で頑張っていてタイに販売の拠点を置く醤油メーカーが、三重県のヤマモリ醤油です。
ヤマモリ株式会社は、タイで利用される醤油の50%を売り上げています。
他にも同じ三重県の福岡醤油店がシンガポールに、香川県のヤマロク醤油はアジアだけでなく、ドイツやフランスで販売を展開しています。
安心で美味しい醤油を提供してくれている
醤油のメーカーは日本の各都道府県にあり、それぞれのメーカーが「安心で美味しい醤油」を開発してくれています。
醤油メーカーは今、醤油を作るだけでなく、町おこしや和食文化の伝承、食育活動などの活動も行っています。
大手メーカーの醤油も良いですが、地元の醤油を購入して、昔ながらの手作り醤油や独特の風味を味わうのも良いですね。