どこかで「グリコーゲン」や「グルコース」という単語を、耳にしたことはありませんか?
聞いたことのある方は、ダイエット本を読んだことがあったり、健康志向の高い人かもしれませんね。
しかし、耳にしたことがあっても、この似ている2つの単語、実際は体の中でとても重要な働きをしているものなのですが、違いはご存知でしょうか。
全然分からない、何となくしか分からないという方のために、これから詳しくお話していきます。
グリコーゲンとグルコースの糖質の違いとは
まず、グリコーゲンとグルコースの共通するところは、どちらも「糖質」のひとつだということです。
糖質=炭水化物と勘違いされる方もいますが、炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものを指しますので、覚えておきましょう。
糖質には、単糖類・二糖類・多糖類などがあり、グルコースは単糖類、グリコーゲンは多糖類に分類されます。
単糖類とは、糖質の最小単位のものを指し、グルコース(ぶどう糖)やフルクトース(果糖)、ガラクトースがあります。
二糖類とは、単糖が2つ結合してできたものを指します。
例えば、グルコースとガラクトースが結合してできた、フルクトース(乳糖)は二糖類のひとつです。
多糖類とは、単糖類が様々な形で結合したものを指します。
これには、1種類の単糖で構成されるグリコーゲンやデンプン、セルロースなどがあり、2種類以上の単糖で構成されるものにヒアルロン酸などがあります。
このように、グルコースは単糖、グリコーゲンは多糖という違いがあることが、お分かりいただけたでしょうか。
グルコースから構成されるグリコーゲン
グリコーゲンは1種類の単糖からなる、多糖類ということをお話しましたが、何から構成されるかご存知でしょうか。
それは、グルコースです。
グルコースの中でも複数の種類がありますが、このときに使われるのが、α-D-グルコースです。
この、多数のα-D-グルコースがグリコシド結合によって、枝分かれしながらくっ付いたものを、グリコーゲンと呼びます。
この枝分かれは、8~12残基(結合部分以外のこと)に1回の分岐となります。
直鎖部分は12~18残基ありますが、分岐の先にさらに分岐が続き、網目状の構造をしているのが特徴です。
グリコーゲンは、動物の体内に貯蔵される多糖と知られていて、動物デンプンとも言われます。
グルコースから構成される、グリコーゲンですが、同じようにグルコースから作られる「デンプン」というものがあります。
次項で、デンプンとの違いを見ていきましょう。
構造が似ているグリコーゲンとデンプンの違いとは
グリコーゲンと同じように、グルコースのみで構成される「デンプン」。
デンプンには、枝分かれしないアミロースと、枝分かれのあるアミロペクチンがあります。
この違いをお米で例えると、アミロースとアミロペクチンが含まれるものがうるち米、ほとんどアミロペクチンでできているものがもち米となります。
そのため、粘りが強いお米ほど、アミロペクチンが多く含まれます。
グルコースが結合するときの枝分かれが、粘りに関係しているのですね。
このように、2種類の結合の仕方のあるデンプンですが、特にグリコーゲンと構造が似ているのがアミロペクチンです。
どちらも結合するときに枝分かれをしているのに、なぜ、同じものにならないのでしょうか?
それは、分子量の違いによります。
アミロペクチンが数十万の分子量に対し、グリコーゲンは数百万にも上ります。
アミロースは数万ですので、アミロペクチンと合わせても、グリコーゲンの分子量には全く及びません。
また、合成される場所にも違いがあります。
先にも述べた通り、グリコーゲンは動物の体内で合成されるのに対し、デンプンは植物中で合成されるという違いがあります。
グルコースが増えると血糖値が上がる?
これまで、構造についてお話してきましたが、次にグルコースの働きについてご説明します。
食事を摂った後の糖類の多くは、人の体の中で消化吸収され、最終的にはグルコースに分解されます。
このグルコースは血液によって、体の各細胞に運ばれて、エネルギーとして使われます。
糖質は同じエネルギー源の脂質と違い、消化吸収が早いため、短時間のエネルギー補給に適しています。
逆に、過剰に摂取したグルコースはグリコーゲンになりきれず、中性脂肪となり体に蓄積されてしまうので、肥満傾向の方は摂り過ぎに注意しましょう。
このように、グルコースは血液によって運ばれるのですが、この血液の中にあるグルコースの量が血糖なのです。
よく、健康診断の血液検査の項目で、血糖値を目にすることはありませんか?
健康診断の直前では、食事を抜くようにと言われることも多いかと思います。
その理由のひとつが、この血糖値です。
グルコースの吸収はとても速いため、食事した後に健康診断を受けると、血糖値が高く出てしまうので、食事を抜くよう指導されるのです。
それでは、グルコースを効率的に燃焼させるには何が必要でしょうか?
それは、ビタミンB群やマグネシウムなどのミネラルです。
これらは、グルコースが燃焼されてエネルギーを作り出す、クエン酸回路という過程で活躍してくれるので、食事からも不足しないように摂りましょう。
筋グリコーゲンと肝グリコーゲンの違いとは
食事から摂った糖質は、小腸から吸収された後、肝臓で代謝されてエネルギーを作ります。
必要なエネルギーが作られた後、余分になったグルコースはグリコーゲンに合成されて、体内に一時保存されます。
このときに保存される場所が、肝臓と筋肉です。
肝臓に蓄えられるグリコーゲンを肝グリコーゲンと言います。
これの働きは、主に血糖値の調整になります。
糖質を貯蔵するには、脂肪やアミノ酸という形もありますが、分解に時間が掛かります。
それに比べ、肝グリコーゲンは、血糖値の調整に必要なグルコースに素早く分解できるので、瞬発力を使うような運動に必要です。
肝グリコーゲンの通常の貯蔵量は300~400Kcalなので、8時間くらいで無くなります。
人間は血糖値が下がると脳や体の働きが落ちて、場合によっては、昏睡状態のような危険な状態になることもあります。
そうならないように、適度に糖質を摂ると良いでしょう。
次に、筋肉に貯蔵されるグリコーゲンを筋グリコーゲンと言います。
こちらは肝グリコーゲンとは違い、運動や日常生活で体を動かしたときの筋肉の収縮などで、必要なグルコースが不足したときに利用されます。
肝グリコーゲンが一度に多く貯蔵できないのに対し、体内のグリコーゲンの約8割は筋グリコーゲンとして、存在しているのも特徴です。
グリコーゲンを使い切る?正しい糖質制限ダイエットの方法
近年、注目されているダイエット法のひとつに「糖質制限ダイエット」があります。
糖質をある程度摂らないと、体に必要なエネルギーが摂れないのではないかと心配になりますが、正しい知識を持って行うと、それが可能になります。
糖質制限をすると、糖質を貯蔵するグリコーゲンも使い切ることになり、このままだと危険です。
ですが、グリコーゲンがなくなると、今度は体内にある中性脂肪を分解し、脂肪酸とグリセロールになります。
グリセロールは糖新生によってグルコースに変えられて、エネルギーになります。
脂肪酸はグリセロールとは違い、そのままでもエネルギーとして使われますが、肝臓でケトン体に変えられて様々な臓器で使われます。
糖質制限ダイエットは、このケトン体を作り出す状態を生み出して、どんどん中性脂肪を分解することを目的としているのです。
ただし、糖新生の際にタンパク質を分解してできるアミノ酸を使うので、良質なタンパク質をしっかり摂ることが必須になります。
このダイエットには、厳しい食事制限と運動を行っていくので、それなりの覚悟が必要です。
実践したい方は、しっかりと勉強してから取り組みましょう。
グルコースとグリコーゲンの働きで、私たちは支えられている。
グルコースとグリコーゲンの違いは、お分かりいただけたでしょうか。
どちらも、糖質のひとつで、体内の代謝に大きく関わっているところが似ていましたね。
ですが、グルコースはそのまま代謝に使われるのに対し、グリコーゲンはエネルギーとして使われるまで、体内に蓄える働きをします。
両者がうまく働くことで、私たちの日々の活動を支えてくれるのですね。