お菓子作りやパン作りが趣味の人にはなじみのある「ショートニング」。
実際、どんなものなのか、同じくお菓子作りに欠かせないバターと、何が違うのかなど知っていますか?
ショートニングをバターで代用するときの注意点や、バター以外の代用品について確認してみましょう。
ショートニングの特徴をおさらい
お菓子やパンによく使われているショートニングは、元々ラードの代用品として作り出されました。
大豆油や菜種油などの植物性の油が主な原料で、乳化剤などを添加し作られています。
ショートニングの特徴は、真っ白であることと無味無臭であることです。
例えば、白いパンを焼きたいというとき、バターやマーガリンだと黄色くなってしまいます。
ですが、ショートニングを使えば、色付くことなく焼き上げることができます。
動物性のラードやバターと違い、他の素材の風味を邪魔することなく、油脂の特性だけを食品に与えることができるため、お菓子やパン以外にも幅広く食品に利用されています。
ショートニングの働きのひとつに、お菓子やパンにサクサク感を与える役割があります。
クッキー生地やデニッシュ生地にショートニングを使うと、サクサク・ホロホロとした食感になり、バターよりも安価なので、市販のお菓子にはよく使われています。
また、パンのしっとり感を長持ちさせる効果もあります。
ショートニング自体には味がなく、小麦など素材の味が損なわれません。
そのため、シンプルな配合のパンには、バターよりもショートニングが適している場合もあります。
他にも、揚げ油に使用すると時間が経っても、カラッとした食感を保つ働きもあり、ファストフード店やお弁当屋さんで使われている例もあります。
お菓子やパンだけに留まらず、様々な食品でショートニングは活躍しているのです。
ショートニングの正しい保存方法とは?
ショートニングを買ってみたのはいいものの、お菓子作り以外に使い道がなくて、困っている人も多いかもしれません。
せっかく買ったショートニングを無駄にしないように、正しい保存方法を覚えておきましょう。
ショートニングは大きめのスーパーや製菓材料店、通販で買うことができます。
お店では、バター売り場(冷蔵)か製菓材料コーナー(常温)のどちらかに置かれていることが多いです。
バターと同じような箱入りの他、チューブタイプ・カップ入り・缶入りなど様々です。
頻繁にお菓子作りをしない人は、なるべく少ない容量のものを選ぶと良いでしょう。
ショートニングの賞味期限は6ヶ月~約1年と長く設定されています。
しかし、あくまでも未開封の状態での期限のため、封を開けたものは、なるべく早めに使い切ってください。
ショートニングの保存方法欄には『冷暗所で保存』と書かれているものが多いようです。
冷暗所とは低温(15℃以下)で温度変化が少なく、直射日光の当たらない場所を指します。
昔と違って、現在の住宅では冷暖房設備が整っており、1年を通して冷暗所と言える場所が少なくなりつつあります。
心配な場合は、冷蔵庫で保存すると良いでしょう。
ただし、冷えすぎると固まってしまい、作業性が落ちます。
ですので、比較的温度が高めの野菜室で、冷気が当たらないように保存するのがおすすめです。
温度と一緒に気を付けたいのが『酸化』です。
油脂類は空気に触れると酸化し、変色したり、嫌な臭いがしてきます。
使いかけのものは蓋やラップで、できる限り密封に近い状態にしてから保存しましょう。
一度開封したショートニングは、1ヶ月を目安に使い切ると良いですよ。
余ってしまいそうなときは、いつものレシピのバターをショートニングで代用してみて、風味や食感がどう変化するのか試してみると、新たな発見があるかもしれません。
バターの特徴をおさらい
バターは、牛乳(クリーム)の脂肪分だけを集め固めたものです。
市販の生クリームを瓶などに入れ振り続けると、黄色い固体と液体に分かれますが、この塊がバターで家でも作ることができます。
料理に使うバターは食塩を加えた有塩バターが一般的ですが、お菓子作りやパンには、無塩バターが多く使われます。
また、原料であるクリームを乳酸菌で発酵させてから作る発酵バターも、最近よく目にするようになりました。
発酵バターは独特の香りがあり、焼き菓子などに使うと風味が良くなると、じわじわと人気を集めています。
日本にバターが広まり根付いたのは、明治時代以降と言われています。
今では一般家庭でも当たり前のように使われていて、なくてはならないものと言っても過言ではありません。
バターの最大の特徴は、なんと言っても風味の良さです。
料理にほんの少し加えるだけで風味が増し、コクもアップします。
クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子を始め、お菓子作りやパン作りに欠かせない材料のひとつです。
ショートニングと同様に、お菓子にサクサク感を与えたり、パンをしっとりさせる働きがあります。
その違いは、なんと言っても、香りと味わいです。
バターの代用としてショートニングを使うことは可能ですが、少々物足りなさを感じるかもしれません。
逆に、小麦や卵の味を前面に出したい場合には、バターよりもショートニングを使うほうが向いていると言えます。
ショートニングは植物性油から作る人工油脂、バターは牛乳から作られるものなので風味だけでなく、栄養価などにも違いがあります。
どちらが優れているということではなく、うまく使い分けができると、よりお菓子作りの幅が広がるでしょう。
ショートニングをバターで代用するときの注意点
ショートニングは植物性、バターは動物性の食品ですが、主成分は脂質で常温で固体という共通点があります。
どちらもお菓子作りやパン作りによく使われる材料で、クッキーをサクサク・ホロホロの食感にしたり、パンに弾力を持たせ、ふくらみをよくするなどの働きがあります。
そのため、お互いに代用することが可能です。
このように、似ている点も多くありますが、違いもあるので注意点をいくつか確認しておきましょう。
まず、ショートニングをバターで代用するときの注意点について説明します。
ショートニングは無味無臭で真っ白ですが、バターは独特の香りがあり、色も黄色っぽいのが特徴です。
そのため、パンのレシピにあるショートニングをバターで代用すると、風味や色に変化が起こります。
基本的にはバターの風味が加わるので、マイナスな印象は受けませんが、レシピによっては、その風味が邪魔をしてしまう可能性もあります。
もうひとつ注意すべきは、食感の変化です。
水分量の違いによって、ショートニングで作るクッキーはサクサク、バターで作るクッキーはしっとりとした食感になると言われています。
これは好みの問題なので、実際に作り、食べ比べてみると良いでしょう。
最後の注意点は塩分です。
ショートニングには塩分が含まれていないので、代用するときは無塩バターを使うことをおすすめします。
有塩バターの塩分は2~3%とメーカーによって違いがあるため、一概に何g減らしたら良いと言うことができません。
お菓子やパンでバターの割合が高めのレシピの場合、変に甘じょっぱくなったり、ふくらみが悪くなったりと影響が出るかもしれないので、できる限り無塩バターを使うことをおすすめします。
バターをショートニングで代用するときの注意点
逆に、バターをショートニングに置き換えて、お菓子やパンを作るときの注意点も確認しましょう。
バターとショートニングの一番の違いは、味や香りの有無です。
バターは牛乳が原料なので、コクがあり香りも豊かです。
一方のショートニングは、植物油を加工した油脂なので、基本的に無味無臭です。
そのため、バターをショートニングで代用し作られたパンやお菓子は、やや物足りなさを感じるかもしれません。
バターの割合が高いパウンドケーキなどは、ショートニングでの代用はあまり向いていません。
風味の物足りなさの解決策として、砂糖をハチミツに換えてみる、ココアや抹茶などで香りをプラスしてみるなど、ちょっと工夫してみると面白いですよ。
他には、焼き色にも若干の影響があるかもしれません。
バターには、タンパク質が含まれているため、加熱すると美味しそうな焼き色がつきます。
しかし、ショートニングは成分のほぼ100%が油脂のため、焼き色がつきにくく、クッキーやパンは白っぽい仕上がりになります。
白っぽいパンを作りたいときはショートニングを使うと、表面だけでなく、生地そのものにも色がつかないのでおすすめです。
この違いを知らずに、焼き色がつかないからと焼く時間を長くしてしまうと、生地中の水分が余計に飛び、固い食感になってしまうので気を付けましょう。
風味の差はあっても、どちらも油脂なので、パン生地の伸びを良くしたり、サクサク感を出す効果は得られます。
用途や求める味によって、使い分けられると良いですね。
ショートニングの代用として他に使えるものは?
ショートニングが手に入らないときや買い置きがない場合、バター以外にも代用できるものが、いくつかあります。
1つめは、ラードです。
そもそもショートニングは、ラードの代用品として生まれたものなので、代用可能です。
実際、スペインの伝統的なクッキー『ポルボロン』は、ラードを使って作ります。
ラードは豚の脂なので、独特のクセが気になることもありますが、レシピによっては使うことができます。
2つめは、オリーブオイル・グレープシードオイルなどの植物油です。
お菓子作りの場合、代用するのは少し難しいですが、パン作りであれば代用しやすいでしょう。
ただし、ショートニングは常温で固体、オリーブオイルは液体という違いがあるので、分量に注意が必要です。
パンの場合、多少ふくらみにくくなるなど影響はありますが、油の風味が加わり、新たな味わいのパンになるでしょう。
3つめは、マーガリンです。
マーガリンは元々バターの代用品として作られたもので、原料はショートニングと同じ植物性の油です。
水分量や香料の有無など違いはありますが、原料や常温で固体であることなど、共通点が多くあります。
マーガリンで代用するときに気を付けたいのが、ケーキ用マーガリンを使うという点です。
パンに塗る用のマーガリンは塩分が入っているので、味わいが変わってしまうので、確認してから使ってください。
代用するものによって、出来上がったお菓子やパンの風味に違いが現れます。
分量の微調整など難しい点もありますが、新たな発見があるかもしれません。
ぜひ、色々な代用品をお試しください。
お菓子作り&パン作りの腕を上げるチャンス!
知ってるようで知らないショートニングとバターのこと、お分かりいただけましたか?
それぞれの特徴を踏まえた上で作ると、スキルアップにつながります。
同じ油脂でも風味や食感に差が出て面白いので、ぜひ作り比べて、自分だけのベストレシピを見つけてみてくださいね。