酵母って何をしてくれるの?発酵とフルクトースの関係

「健康にいい食べ物」といった話題の中で度々登場する「酵母」というワード。
きっと一度や二度、それ以上に見かけたことがある方は多いはず。

けれどその実態や、どんな働きをするかについては、普段の生活ではなかなか触れないものですよね。

酵母を生み出す「発酵」の仕組みは?
「発酵」と密接に関係する糖質、「フルクトース」とは?

今回は、そんな酵母について深堀りして、その正体を解き明かしていきたいと思います。

どんなところに住んでるの?酵母の正体

そもそも、酵母とは一体どんな物質なのでしょう。

酵母とは、簡単に言うと私たちが生活している環境の中に広く生息していて、カビやキノコと特性がとても似ている微生物のことを指します。

酵母やカビ、キノコは学術的には同じ種類として分類されていますが、有機物、主にグルコースやフルクトース、ショ糖などの糖類を人体にとって有益な形で分解したり、分解産物として有益な物質を産生したりする、「発酵」という人間にとって有益な働きをするのが酵母の最も大きな特徴です。

自然環境では果物の果汁や果皮、樹木から分泌される樹液や、土壌、海水などにも存在しています。
具体的な食品ではジンジャーエール、サトウキビ、ブドウ果汁、ワイン、シェリー酒(発酵の過程でアルコール度数を上げて作られたワイン)、ビールなどに含まれています。

カビは熱に弱く、過度に加熱をするとすぐに死滅してしまいますが、特製の似た酵母も例に漏れず、60度を超える環境下に10分も置くと死滅してしまいます。

なので、酵母を効率よく摂取、採取するならば、酵母の生育に適温とされる20度前後(室温の平均値)で保管された新鮮な果物や、上に記した飲料を用意することがベストであると言えるでしょう。

酵母は、人体にとって有益な働きをする微生物です。
人類は酵母のその働きを大昔から現代まで、様々な形で利用してきました。

次の項目では、酵母の働きで私たちが得られるメリットを、より詳しく解説していきます。

酵母にはどんな効果があるの?

近場のドラッグストアへふらっと立ち寄ってみて、サプリコーナーを見渡してみてください。
それだけでも「ビール酵母」、「分解酵母」、「植物酵母」など、酵母が配合されたサプリメントが沢山見つかるはずです。

なぜこんなにも「健康にいいもの」として、酵母が猛プッシュされているのでしょうか?
その答えは、酵母自体に含まれる栄養素や、酵母の働きに大きな秘密があります。
酵母には食物繊維やたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンD、葉酸などの人体に大切な栄養素が多く含まれているのです。

そんな栄養素たっぷりの酵母は体内で活発に活動し、人体に様々な効果をもたらします。
酵母はグルコースやフルクトースなどの、腸内に存在する糖質を吸収される前に分解するため、過度な糖質の吸収を抑えて太りにくい体質にしたり、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。

酵母に含まれる食物繊維も腸内で糖質の吸収を抑える働きをし、また、食物繊維が発酵されて生成される短鎖脂肪酸は善玉菌の餌となり、善玉菌の働きを活発にさせて免疫力を高めたり、下痢や便秘を防ぐなど腸内環境の改善にも作用します。
そして、酵母中のビタミンB群は疲労回復、ビタミンDはカルシウムの吸収促進、葉酸は赤血球の形成を助けるなど、酵母に含まれるビタミン類だけでもこんなに様々な効果が見込めるのです。

一口に酵母といっても、そこに含まれる栄養素や、栄養素ごとに期待できる効果は様々。
酵母は定期的に、且つ継続して摂取することで効果が現れるようになるため、血糖値を抑えたい方、腸内環境の改善を期待する方などは、酵母を摂取できるように日々の食生活を見直してみることも有効な手段であると言えるでしょう。

酵母と発酵、フルクトースの関係

「発酵」とは、酵母が糖質を中心とした有機物を分解したり、それらを原料にして分解物質としてアルコールや二酸化炭素などを産生する過程のことを指します。
この発酵が腸内で起こったり、食品中でうまく発酵が起こることで、人類は酵母がもたらす効果の恩恵を受けられるのです。

この重要な過程である発酵を促すには、糖質が深く関わってきます。

発酵で酵母に利用される糖質の中でも、リンゴやモモなどの果物やイチゴなどのベリー類やメロン、スイカなどに含まれるフルクトースは、健康の面から見て特に注目したい糖質であると言えるでしょう。

自然環境において、酵母は果物の皮や果汁に宿っており、そして酵母が発酵するための材料であるフルクトースも果汁にたっぷりと含まれています。
そのために、果物一つで天然の酵母を、天然の糖で活発に働かせることができるのです。
酵母を積極的に摂取したい。
また、酵母を活発に働かせたいならば、新鮮な果物をたっぷりと摂ることがベスト。

そして、酵母の働きは体内のみに留まりません。
酵母と糖質を上手く活用すれば、美味しくて、健康にも嬉しい食品が自宅で簡単に楽しめます。

次の項目からは、その活用術を紹介していきたいと思います。

発酵パワー!飲む点滴って?

近年、「飲む点滴」とも呼ばれているドリンクをご存知でしょうか?

美肌や便秘解消、疲労回復にも効くと言われている、栄養価満点のドリンク…それは「甘酒」です。

甘酒には酵母に含まれている栄養素と同じ、ビタミンB群、葉酸、食物繊維がたっぷりと含まれています。

製法は米麹と米だけを原料として発酵させるもの、酒粕と砂糖を原料とするものの2種類が一般的で、前者、後者両方の製法の甘酒の中には身体に優しい糖と、それを餌に発酵を進める酵母が住んでいます。

甘酒で酵母が餌にする糖は、前述したフルクトースではなく、グルコースやマルトースと呼ばれるお米由来の糖ですが、こちらも100%天然由来のものであるため、甘酒を飲むだけでも果物の摂取と同様に体内で優しく酵母を働かせることができます。

夏は冷蔵庫でひんやり冷やして、冬はほっこり温めて楽しむことのできる柔らかい甘さの「飲む点滴」、甘酒。
そんないつの時期にも楽しめる甘酒は、健康の強い味方として冷蔵庫に常備しておくのもいいかもしれませんね。

天然フルクトースで発酵促進!自宅でできてしまうこんなこと

前述のように、果物には天然の酵母や天然のフルクトースが豊富に含まれています。
この果物の性質を活かして、自宅で簡単に天然酵母を培養することができます。

今回は、リンゴを使った酵母の培養方法について紹介したいと思います。

まず、さっと洗ったリンゴ1/2個を、皮と芯を残して5mm~1cm程度の厚さになるようにカットして、ティースプーン1杯分の砂糖か蜂蜜と一緒に、密閉できる容器に敷き詰めます。

容器を水で満たして1日1回、蓋を開けて空気を入れ替えながら冷蔵庫に3~4日置けば、発酵ししゅわしゅわと泡立って、蓋を開けるとふわっといい香りのする酵母の種の出来上がりです。

酵母がしゅわしゅわと少しずつ生まれていく様子を、毎日見ることも楽しいもの。
自家製酵母は、パンを作るときに使うドライイーストと水分をそっくりそのまま置き換えれば、美味しい天然酵母パンを作ることができます。
ほんのり甘くて果物由来の優しい香りの自家製酵母パンは、おもてなしにも最適ですよ。

フルクトースと酵母は仲良し!自家製お洒落ドリンク

今流行のお洒落ドリンクも、酵母と糖を上手く活用すれば自宅で簡単に作れます。

リンゴ果汁が主原料の「シードル」はしゅわしゅわとした喉ごしが嬉しい、リンゴの天然酵母と果汁に含まれる天然フルクトースを利用して作る美味しい果実酒です。
前の項目で書いた、天然培養酵母の種を活用すれば簡単に作れてしまいますよ。

密閉容器で培養した酵母の種を100ml程瓶に注ぎ入れて、200ml程のリンゴジュースを加え、様子を見ながら常温で4~7日間程放置します。
しゅわしゅわと泡立ってから、発泡が弱まったら追加でティースプーン1杯分の砂糖か蜂蜜を加え、更に様子を見ながら常温で3~4日放置。

瓶を開けたときに、甘いリンゴの香りと共に爽やかなアルコールの香りが仄かに立っていれば成功。
身体に優しくて、美味しいドリンクの出来上がりです。

注意したい点として、発酵させたドリンクのアルコール濃度が1%を超えてしまうと酒税法に抵触してしまいます。

けれど、このレシピは酵母が優しく働いて微発酵に留まってくれるので安心。
天然素材だけでここまでできるの?と驚いてしまう程に美味しい自家製シードル、是非お試し下さい。

酵母&発酵パワーで美味しく健康な毎日へ

よく耳にはするけれど、その実態も扱い方もぼんやりしがちな酵母。

けれど定期的に、継続して摂取すれば肌の調子や腸内環境をしっかり整える、健康にとっても力強い味方になってくれます。

そして、酵母とお米由来の糖や、果物由来の天然酵母と天然フルクトースの力で起こる発酵のエネルギ―を上手く利用すれば、健康的で美味しい、一味違う食品も自宅で簡単に楽しめます。

メリット盛り沢山で、摂取も簡単にできる酵母。
日常的に取り入れれば、美味しく、健康的なライフスタイルも夢ではありませんね。