日本に住む私たちの食卓には欠かせない存在である醤油。
ところで、醤油を飲むとどうなるのかと考えたことはありますか?
戦時中は、徴兵逃れや、国に帰るため何人かがまとまって醤油を飲んで強制送還を狙うなど、体調不良になるアイテムとして利用されてきた歴史があります。
しかし、学校や会社を休みたいからと、安易に醤油を飲むのは大変危険です!
今回は、醤油を飲むと危険な理由から、飲んでしまった際の対処法まで、盛りだくさんの内容でご紹介します。
醤油を飲むと危険な理由とは?
塩分は、私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です。
暑い季節は汗と一緒に流れ、不足しがちになりますので、意識して摂らなければなりませんが、もちろん摂りすぎは禁物です。
醤油を飲むと危険なのは、急激に体内の塩分濃度が上昇することによって、細胞が脱水を起こし、破壊していくからです。
「水分が外に出たわけでもないのに脱水?」
と思うかもしれませんが、急激な塩分摂取により、体内の水分に対し塩分が多くなった状態というのは、言い換えると水分が不足しているということになるのです。
ちなみに、塩辛いものを飲んだり食べたりすると、いつも以上にのどが渇く経験は誰にでもあるでしょう。
それは、身体の中の高い塩分濃度を下げるため、水分を補給するように脳が指令を出しているからです。
つまり、塩分濃度が高い状態というのは、身体にとってそれだけ非常事態だということです。
よって塩分は、多すぎず少なすぎず、適量を守ることが何より大切なのです。
醤油を飲むとどのような症状が出るの?
体内の塩分は約0.9%濃度に保たれており、それよりも塩分濃度が高いものを摂取すると、当然ながら体内の塩分濃度が上がってしまいます。
こうした身体の水分に対して塩分濃度が高くなる状態のことを、高ナトリウム血症と言い、呼吸器、消化器、神経、循環器、泌尿器など様々な箇所に症状が現れます。
醤油を飲むと数時間ほどで、口の渇き、下痢、嘔吐、頭痛、脳や末梢のむくみ、発熱、過呼吸の症状が現れ、さらに症状が進んでくると脳が脱水を起こし脳症になりますので、痙攣やめまいなどのほか、クモ膜下出血が起こることがあります。
また、さらに症状が進むと、血管の中に水分がたまります。
その水分が肺の中にたまり呼吸ができなくなるほか、尿管が壊死し、急性腎不全になることもあります。
よって、高ナトリウム血症は、大人の場合であっても40%~60%の確率で死に至る、非常に恐ろしいものなのです。
醤油はどの家庭にもありますので、非常に簡単に手に入りますが、発熱させて学校や仕事を休みたいという考えで醤油に手を出すのはリスクが大きすぎるでしょう。
飲むと命にかかわる醤油の量はどれくらい?
では、実際にどれくらいの醤油を飲むと、命にかかわるのでしょうか?
醤油には大きく分けて下記の6種類あり、塩分には多少の違いがあります。
濃口醤油 16%前後
薄口醤油 18%前後
再仕込み醤油 14~16%
白醤油 18%
たまり醤油 15~17%
生醤油 16%前後
あのしょっぱいと感じる海水の塩分濃度が3%ですので、醤油の方が5倍ほど塩分が高いことになりますね。
醤油の致死量は、体重1Kgにつき2.8ml~25mlですので、日本人の平均体重である、男性66Kg、女性53kgに当てはめてみると、男性の致死量は185ml~1.65L、女性の致死量は149ml~1.32Lになります。
大人でも、少なくともコップ1杯程度で命の危険があるということですから、子供ならもっと少ない量で致死量に達する危険があるということです。
例えば、10Kgの子供なら、計算上28mlで命の危険があるということになります。
醤油を飲むことは危険!過去には瀕死状態になった人も!
アメリカでは醤油を飲むことで、危うく命を落としそうになった人が実際にいます。
19歳の少年は友人たちとふざけてその場の勢いで、1リットルの醤油を一気に飲み干してしまいました。
少年は、飲んでまもなく痙攣を起こして手足をバタバタさせ、昏睡状態になりました。
すぐに救急搬送された少年は、6リットルものブドウ糖の投与により、何とか一命を取り留め、3日後には意識が回復、さらに1か月後には元通りの生活ができるほどになったのです。
体内の塩分濃度は、135~145mEq/l(ミリイクイバレント・パー・リットル)までが正常、145mEq/l以上で高ナトリウム血症の診断が下ります。
※mEq/L : 溶液1L中に溶けている溶質の当量数
少年の体内からは、160gほどのナトリウムが検出され、正常の範囲を大きく超えており、高ナトリウム血症と診断されました。
致死量に近い醤油を飲んでしまったわけですから、助かったのは奇跡だと言って良いかもしれませんね。
高ナトリウム血症になるのは醤油を飲むだけではなかった!
先述の通り、高ナトリウム血症はかなりの高確率で死に至る、とても恐ろしいものです。
しかし、高ナトリウム血症になるのは、醤油を飲んだ時にだけなるものではありません。
高ナトリウム血症は、身体が脱水状態になった際にも起こり、頻度としては脱水によるものが一番多くなっています。
また、醤油より塩分濃度は低いものの、海水でも高ナトリウム血症になることがあります。
過去に海水浴へ行った際、誤って海水を飲んでしまった経験がある人は少なくないでしょう。
醤油を大量に飲むのは故意であることが多いですが、海水は、誤って飲むことは少なくないですよね。
よって、高ナトリウム血症を発症するリスクは、醤油よりも海水のほうが高いのです。
飲む量にもよりますが、海水を飲むと異様にのどが渇きます。
これは前述の通り脳の指令によるものですが、間違っても水分補給のため、海水を飲まないようにしましょう。
海水では水分補給にならないどころか、さらに体内の塩分濃度が高まり、高ナトリウム血症が進んでしまいます。
海水を飲んでしまったら、至急、水を飲み、身体の塩分濃度を薄めることが大切です。
醤油を飲んでしまった時の対処法は?
醤油を飲むと言っても、一気飲みした場合と、時間をかけて飲んだ場合とでは対処法が変わります。
まずは、時間をかけて飲んだ場合の対処法を見ていきましょう。
時間をかけて飲んだ場合は、飲んだ量にもよりますが、身体がだるさやむくみなどの比較的軽い症状であることが多いものです。
数日は、塩分を控えるように努め、水など塩分の入っていないもので水分を摂り、様子を見ます。
しかし水分の摂りすぎは、血液の量を増やし高血圧につながりますので、ほとほどにしましょう。
実は腎臓は、摂りすぎた塩分を排出させるのをとても苦手としています。
つまり塩分は、水分のみを摂ったからといって、速やかに排出されるわけではないのです。
食べ物を口にできるならば、体内の塩分を排出させる効果のあるカリウムが含まれる食材を摂るのも良いでしょう。
カリウムは、ほとんどの食品に含まれていますが、特にキュウリやスイカなどの夏野菜、バナナやキウイフルーツなどの南国の果物に多く含まれています。
続いて、一気飲みした場合を見ていきましょう。
一気飲みをしてしまった場合は、吐き出すのも、飲んでから30分~2時間の間であれば有効な手段です。
何らかの症状が出ている人はもちろんのこと、特に気になる症状が出ていない人も、速やかに救急病院を受診し、医師の診断を煽りましょう。
醤油を飲むのは命を脅かす行為です
今回は、「醤油を飲むとどうなるのか?」ということにスポットを当て、飲んだ際に出る症状や実例、飲んでしまった際の対処法などを紹介しました。
醤油は、非常に塩分の高い調味料です。
その塩分の高さゆえに、飲むと私たちの身体にさまざまな影響を及ぼし、取り返しのつかないことにもなりかねません。
学校や会社を休みたい、もしくは悪ふざけなどの、安易な考えから醤油を飲まないようにしましょう。