醤油を薄めるには水よりお酢?知って得する料理と醤油の知識

煮物に使った醤油が濃すぎて、薄めるべくついつい水など足したくなります。

そうすることによって確かに塩分濃度を下げられますが、香りや味を薄めかねません。

そんな時の注意点と、減塩醤油や麺つゆなど、塩分少な目で味は据え置きの調味料や醤油の違いを紹介します。

煮物の味が濃くなったら水で薄めるのは間違い

煮込みすぎて塩辛くなりすぎた煮物の味付けを薄めるべく、料理に水分を加えたことがあると思います。

しかし、それはNGです。

料理の失敗ではよくあることですが、味気ないからと言って塩や醤油など足すと味のバランスが崩れてしまいます。

味の濃さを重視する方達ならこれでも満足いくかもしれませんが、味覚の繊細な日本人たるものそうもいきませんよね。

多様な食物が混在する日本の強みを活かして、この難局面を乗り切りましょう。

それでは、実際にどうすればよいのでしょうか。

まずは、水気の多い食材を使うことです。

豆腐やしらたき、大根などが良い例で、鍋物などでは味をよく吸って美味しさが浸みますよね。

また里芋などに塩分を吸ってもらうのもオススメです。

料理中ならば酒を多めに加えることで、塩辛さを軽減出来ます。

煮物は酒で、汁物はだし汁で味の調整を行うのが料理界の掟となっています。

堪え難い塩辛さの時は、一度煮立たせ、余分な調味料を水と共に捨て、再度、みりんや酒と水で煮込む方法もあります。

お酢を入れると辛味と酸味が美味い具合にバランスを取り、まろみが生まれて美味しくできます。

この方法は煮物だけでなく中華料理や炒め物などにも応用が効きます。

味噌汁を薄めるのはNG

そもそも醤油は、味噌作りの最中に、味噌桶に溜まった溜まり汁を食事に使ったら美味しかった、という起源といわれています。

醤油と味噌は密接な関係があり、醤油も味噌も製造過程における幾多の原材料や酵母菌のバランスによって成り立つ食材と言えます。

それゆえ、味や塩分を薄めるべく製造途中や完成後に水分を増したら、風味が損なわれるのは容易に想像が付くでしょう。

露骨に影響する食材は、味噌汁ではないでしょうか。

味噌を入れすぎた際に水を増すと、だしが薄まって味気なくなってしまいます。

味噌の香りも引き立たず、野菜やキノコと味の混じり合いが劣化してしまいます。

それを防ぐには、作る際に味噌を少しずつ加えて香りと味のバランスを確認しましょう。

特に、合わせ味噌で作る際に、この方法は一般的です。

さて、作っても味が薄かったり、つい水を足して味を薄めてしまった場合、どうすれば味を回復させられるでしょうか。

ここで登場するのが醤油です。

香りと味を見ながら醤油を数滴たらしましょう。

想像以上にまろみと香ばしさを引き立たせてくれます。

濃口醤油を薄めると淡口醤油になるの?

薄味の醤油を使いたいなら淡口醤油を使えば良い、と考える方がいるかもしれません。

しかし実際は淡口醤油より濃口醤油の方が塩分濃度が低いのです。

矛盾を感じるかもしれませんね。

淡口と濃口が示しているのは醤油の色の濃さです。

そして醤油の塩分量の見分ける目安として、醤油の色が濃くなるほど塩分が少なくなり、淡いと濃くなります。

淡口醤油は、濃口醤油を薄めることで出来上がる訳では無いのです。

その違いは、製造工程に隠されています。

醤油の製造は、蒸した大豆と炒った小麦に種麹を加えて麹を作ります。

そこに食塩水を混ぜてもろみを作り、6ヶ月から3年間熟成させて、搾って醤油にするという流れです。

そして、淡口醤油は色を淡くするために食塩水を濃口よりも多く使うのが特徴です。

そのため、醤油に含まれる食塩濃度が高くなります。

ゆえに濃口醤油の方が塩分が少ないのです。

淡口醤油についてもう少し言及すると、違いは食塩水の量だけではありません。

甘酒を加えるのです。

まず食塩水には米から作った種麹を混ぜ合わせます。

さらにその米を糖化させて甘酒にし、もろみから搾る直前に甘酒を加えます。

こうすることで味にまろみが出て美味しくなるのです。

減塩醤油は塩分濃度が最も低い?

濃口と淡口の違いに言及しましたが、醤油の中で最も塩分が低い醤油が、減塩醤油です。

その塩分濃度は、濃口醤油の半分程度と言われています。

なお減塩と表記する為には塩分濃度が9%以下であることを証明する必要があります。

うす塩や低塩の場合、濃口醤油の塩分濃度に対し50~80%の範囲内に収まることが定義されています。

そのため、醤油界で最も塩分が控えられているのは減塩醤油と言えます。

その減塩醤油ですが、製法は通常の作り方と変わりません。

つまり食塩水を薄めることはしないのです。

食塩水を薄めて作ると製造過程で味のバランスを崩し易くなる為です。

塩分の帳尻を合わせるタイミングは、醤油として完成した後です。

脱塩装置を用いて醤油を電気透析にかけることで減塩が可能になります。

電気透析法は調味液やペプチドなどの濃縮・脱塩に最適な方法で、熱処理を行わないので味の変化が殆どなく、出来立ての品質を保つことが出来るのです。

電気によって醤油と食塩の分子が分解されることで塩分濃度を下げられるのです。

だし醤油は醤油を薄めると作れる?

だし醤油とは醤油を薄めるのではなく、醤油にだしを加えることで作られています。

そのため、醤油の味を薄めることが出来るのです。

つまり、醤油に昆布や鰹節のだしを配合した醤油です。

そうめんを食べる際、麺つゆをそのまま使うことはせず、水で割って食べるのが通例ですね。

その昔は、醤油を水で薄めて食べていましたが、風味の衰えは避けられませんでした。

だし醤油であれば、だしが醤油を薄口にしてくれるうえ、香り高さを維持して食事を堪能出来ます。

だし醤油は、自宅でも簡単に作れるのも魅力的です。

醤油とみりんと酒を一煮立ちさせ、かつお節など入れて常温になるまで冷やしましょう。

その後は、濾してしまえば完成です。

うどんやおひたし、豚しゃぶサラダなどに用いると良いでしょう。

市販品でオススメなのは「鎌田醤油のだし醤油」です。

ポン酢醤油やサラダ醤油など、醤油にワンアクセントを加えた商品を数多く取り揃えています。

麺つゆ誕生の要因は醤油の薄め過ぎ

そうめんやうどんに麺つゆを使うのは、今となっては常識です。

しかしその昔は、先述の通り醤油を薄めてつゆにするのが当たり前でした。

当時は醤油を6~8倍、水で薄めて食べていたそうです。

このため塩分濃度は現代の麺つゆと同等に出来ても、だしの味が殆どが失われていたそうです。

そこで、だしを薄めること無く、美味しさを保つべく、濃縮率をわずか2倍に抑えたつゆが、桃屋から1970年代に発売されました。

今でこそ麺つゆの濃縮率は2~3倍ですが、当時は6~8倍が主流だったので画期的な試みでした。

おかげで風味や味を損なわず、かつ塩分を極力抑えたつゆが消費者に届くようになったのです。

桃屋の麺つゆは爆発的なヒットとなって品薄状態が続き、四六時中工場を稼働させた伝説的存在になりました。

一工夫で塩分削減、味はそのまま

普段何気なく使っている醤油の作られ方や、塩分の使われ方を見ていきました。

調味料はそれぞれ、甘い辛いに加えて旨味も兼ね備えているため、むやみに水を足すと味気なくなるのは想像に容易いですね。

酒やみりんを加えるなど一工夫することで美味しく健康な食事が作れます。