今、世界的に塩分を控えることがすすめられています。
日本では、成人男子の1日の食塩目標量は8グラム、女子は7グラム未満といわれています。
しかしこれでも世界的には多く、イギリスでは6グラム、世界保健機関ではさらに厳しく5グラムを目標量にしています。
食事の塩分を気にしている人も多いと思います。
日本で多くの料理に使われている醤油の塩分はどれくらいなのでしょうか。
色々な醤油の大さじ1杯の塩分を比較し、ご紹介したいと思います。
人の身体に塩分が必要な理由
人間の体の細胞には内側と、外側のpHのバランスをとる栄養素が必要です。
細胞膜の内側をカリウムが外側をナトリウムがバランスをとっています。
この2つのミネラルによって、体内の塩分濃度は約0.85%になるように保たれています。
身体の塩分濃度の調節には、ナトリウムとカリウムは不可欠なのです。
ナトリウムには、人の体液をアルカリ性に保つ働きがあります。
人は、激しい運動や労働をした後、乳酸が生産・蓄積され、血液に酸性物質が多くなってしまいます。
この時、人の身体にあるナトリウムが、体内を中和、調整し、弱アルカリ性を保つようにしています。
さらに、ナトリウムは糖質の分解物であるグルコースやたんぱく質の分解物であるアミノ酸、カルシウムなどの栄養素の吸収を助けます。
また、神経系で行われる情報の伝達や筋肉の収縮・弛緩の指令をする働きも持ちます。
ナトリウムは、身体を使って、汗をかいて長時間仕事をしていた農耕民族の日本人には、なくてはならない栄養素だったのです。
そのため日本人は、昔から塩や醤油を食事で摂取してきました。
農家の人は醤油を大さじ1杯どころか何杯も摂っていました。
その中から生まれたのが、塩、味噌、醤油という塩分を取るための和食の文化なのです。
塩分を気にしなければならない理由
しかし、夏でも適温の空調の中で生活する現代人にとって、それまでの食生活を続けることは、塩分の摂りすぎという、食生活問題を生み出しました。
濃い味に慣れてしまった人は、醤油を大さじ1杯に抑えるどころか瓶のまま大量に、焼き魚や、漬物にかけていることもあります。
塩分の摂りすぎに気に付けない食習慣が、高血圧や脳卒中という病気を増加させています。
ナトリウムを摂りすぎると、カリウムとのバランスが崩れ、カリウムの代わりに水分を取り込み、塩分濃度を薄めようとし、のどが渇きます。
さらに塩分濃度を薄めるために水分が増え、血液量が増して、血管壁に圧力がかかり血圧が高くなります。
さらに、ため込んだ水分が細胞からあふれ、細胞の周囲に貯まると「むくみ」という症状を起こします。
そして、こういった症状を放置しておくと、高血圧症、高血圧から来る血管の劣化による脳梗塞・心筋梗塞・不整脈といった命を脅かすような病気を引き起こしてしまうのです。
現代社会では、こういった生活習慣病は50代・60代の病気ではなく、30代・40代といった働き盛りにも起こりえるということがわかっています。
最近では、子どもの頃から薄味に慣れるよう、学校給食では指導しています。
減塩醤油と普通の醤油、大さじ1杯の塩分の違い
減塩・塩分控えめ・薄味・低塩と、似たような言葉がありますが、これには明確な違いのきまりがあります。
以前は、曖昧な表現でしたが、ある中学生が、消費生活センターに持ち込んだことがきっかけで、明確に区別されるようになりました。
元々塩分が入っている醤油などは、その基本となる醤油の塩分を元に、減らした量を明記することができます。
たとえば「50%減塩」と表記してあった場合は、元の醤油の塩分を元に表記します。
一般的な醤油のナトリウム量は、1ℓの瓶で6400ミリグラム、大さじ1杯にすると960ミリグラムです。
大さじ1杯当たり960ミリグラムであれば、50%減塩醤油は大さじ1杯に480ミリグラムのナトリウムが入っているということです。
同じ様な表現で「50%塩分オフ」となっている場合も同じです。
そのため、現在は曖昧な減塩・低塩だけの表記はなく、絶対的に比較するものがあったうえでの、減らした量の表記がわかる相対表示になっています。
このほかに「塩分50%カット」「塩分1/2」といった表示も使われています。
減塩醤油の方が、普通の醤油よりも明らかに塩分が少ないことがはっきりわかります。
では、市販されている大手の減塩醤油にはどれくらいの塩分が含まれているでしょうか。
ナトリウムと食塩って違うの?醤油大さじ1杯の塩分にご注意!
ここでナトリウムという言葉が出てきましたが、ナトリウムと塩分は違うというのはご存知ですか。
50%減塩醤油大さじ1杯のナトリウムは480ミリグラムでしたね。
成人男性の1日あたりの塩分摂取量の目標は、8グラムといわれています。
もし、ナトリウムと塩分が同じものと考えるのであれば、成人男性は、1日に減塩醤油大さじを16杯以上摂ることができる、ということになってしまいます。
ナトリウムは食塩、つまり塩化ナトリウムの中の1つです。
ナトリウムで表記してある場合は、次のような計算で食塩量を出すことが出来ます。
食塩(グラム)=ナトリウム(ミリグラム)×2.54÷1000
です。
50%減塩の醤油の大さじ1杯に含まれるナトリウムは480ミリグラムでしたので、食塩量を計算してみましょう。
480×2.54÷1000=1.2192
となりました。
50%減塩の醤油大さじ1杯の食塩量はおよそ1.2グラムになります。
そのため成人男性で、1日大さじ6杯と少しになります。
うっかりナトリウムが食塩と同じ量と勘違いして計算してしまうと、1日に必要な摂取量の2倍以上の食塩をとってしまうことになります。
注意しましょう。
メーカーによる醤油大さじ1杯の塩分の違い
同じ濃口醬油でも、メーカーによって、塩分の量が異なります。
そこで、代表的なものをいくつか紹介しましょう。
☆キッコーマン
濃口の中でも、
・キッコーマン醤油
・キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ
・しぼりたて生醤油
・しぼりたて丸大豆醤油
の4種類を販売しています。
「キッコーマン醤油」と、「しぼりたて生醤油」の食塩量は、大さじ1杯で2.4グラムです。
「特選丸大豆しょうゆ」と、「しぼりたて丸大豆醤油」は2.5グラムと少し多めです。
丸大豆の方が健康に良さそうに思えますが、減塩という意味では普通の醤油の方が良いようです。
キッコーマンの減塩タイプは色々あり、代表的な減塩醤油は40%減塩で、大さじ1杯の食塩量は1.4グラムになります。
「塩分控えめ丸大豆醤油」は1.9g、「しぼりたて薄口生醤油」は2.3gです。
減塩、薄口、塩分控えめ表現は似ていますが、塩分の量はかなり違っています。
やはり、減塩としっかり表記してあるものが、最も塩分は少ないようです。
☆ヤマサ
ヤマサの一般的な醤油は大さじ1杯当たり2.5グラムの塩分量になります。
逆に、「有機丸大豆醤油」は大さじ1杯当たりが2.4グラムと、キッコーマンとは逆になっています。
メーカーが違うだけで、同じような名称の商品でも、塩分量に違いがあるのは、面白いですね。
ヤマサの減塩醤油は50%減塩で、大さじ1杯1.3グラムとかなり少なくなります。
減塩醤油ほどではありませんが、「ヤマサ鮮度生活 特選塩分控えめしょうゆ」も少なめで、大さじ1杯当たり1.9グラムになります。
騙されてしまいそうなのが、薄口醤油です。
薄口とはいいますが、塩分量は丸大豆醤油と同じ2.4グラムになります。
色は薄くても塩分は普通の醤油と全く変わりませんので、こちらも注意してくださいね。
薄口醤油は濃口醤油よりも塩分が多い?!
前項でもお伝えした薄口醤油ですが、色が薄いために塩分も薄いと勘違いされることがあります。
薄いから塩分が少ないかというと、実は関係ありません。
むしろ、濃口醤油の方が、薄口醤油よりも塩分が少ないという結果が出ています。
薄口醤油と減塩醤油は全く違ったものなのです。
減塩醤油には、しょうゆ品質表示基準によると、
「しょうゆ100g中の食塩量が9g以下のものであって、かつ、健康増進法第31条1項の規定に基づく表示をおこなったもの」
という規定があります。
これは、一般的な濃口醤油を脱塩装置にかけて塩分を取り除いたもので、一般的な醤油の40%~50%オフの塩分量になっています。
西日本で販売されている醤油は薄口醤油・淡口醤油が一般的で、東日本の醤油よりも塩辛くない、という勘違いをしている人が多くいます。
しかし実は、色の薄い薄口醤油の方が、1~3%塩分量が多くなります。
西日本での大手、日本丸天醤油では、普通の濃口醬油の塩分が大さじ1杯で1.8グラムです。
これは東日本の醤油よりも塩分が薄いです。
それに対して、薄口醤油の塩分は大さじ1杯当たり2.85グラムとかなり多めになります。
色が薄いから塩分が薄いというのは、間違いということです。
塩分を控えて健康生活
国内の醤油を作るメーカーでは、様々な試行錯誤で健康を損なわない醤油の開発や、醤油の使いかたなども研究しているようです。
当たり前のように毎日使うものだからこそ、メーカーだけに頼らず、私たち自身が工夫することで、大さじ1杯の塩分を、2グラムから1グラムに減らすこともできます。
健康を守るのは、誰かがやってくれることではなく、自分で行うことです。
好きなものを上手に利用し、醤油を使って健康な食生活を作りましょう。