ベトナム料理のチャオトムから見えてくるベトナム料理の深さ

ベトナム料理と言われて何を思いつきますか?
生春巻きやフォーが非常にポピュラーですよね。

ベトナム料理には色々な料理があり、それぞれを知れば知るほどベトナム料理の歴史やベトナムという国も見えてきます。

今回はそのベトナム料理の中でも生春巻きには劣りますが、ベトナム現地では人気でポピュラーな「チャオトム」という料理にスポットを当てて、ベトナム料理全体を見ていきましょう。

ベトナム料理の「チャオトム」とは?

ベトナムの中部にあるフエという場所が発祥だと言われています。
伝統的なベトナム料理で、ベトナムの宮廷料理の1つです。
結婚式や祝日等のいつもとは違った、特別なパーティーの席でしばしば食べられ、現地では高級料理です。

そんな「チャオトム」とはどんな料理か簡単に説明します。

海老をすり身にして、にんにくやエシャロット、砂糖、茹でた豚の脂身、煎った米粉と調味料等と一緒に混ぜ合わせます。

そして、串代わりにした細めに切ったサトウキビに海老のすり身を塗りつけて、巻き付けます。

その後、若干の焦げ目がつくまで火であぶり、蒸し器で数分蒸します。
サトウキビのほんのり甘い甘さを海老ミンチに移します。

宮廷料理なので、上品な味付けです。

食べる時は、海老のすり身をサトウキビの串から外して、香草と一緒にライスペーパーや葉野菜に包んで、タレにつけてから食べます。

ベトナム料理「チャオトム」から見えるベトナム料理の歴史

ベトナム料理は、エスニック料理に分類されます。

エスニック料理と聞くと辛いイメージがありますよね。
しかし、ベトナム料理は辛い料理はあまりありません。

また、ベトナム料理は、食事に箸やお椀を使います。
米を主食としており、お茶もよく飲みます。
日本の食文化と大変似ています。

ベトナムの食文化は、100年に及ぶ中国支配時代に影響を受けており、炒める、蒸す、煮るなどの中華の手法が多く取り入れられています。

ベトナム料理で欠かせないと言っても過言ではく、「チャオトム」にも使われるヌクマムという調味料も中国の影響を受けています。

ヌクマムは、小魚を塩漬けにして、発酵させて作ったもの。
日本で言う醤油です。

また、中国とあと1つ、ベトナム料理に影響与えた国があります。
それはフランスです。
19世紀にベトナムが中国から独立した後にフランスが侵略しました。
そのフランス人達が、ベトナムで農業を始め、香辛料や洋野菜、そしてコーヒーを栽培しました。

歴史的に中国よりもフランスの方が近年であるため、現在フランスの食文化の影響を多く受けています。
その名残から料理は全体的に薄味です。
フランスパンもよく食べます。

また、カフェでコーヒーを飲むというフランスらしい光景も、今のベトナムではすっかり日常の風景になっています。

ベトナム料理の「チャオトム」から見える、地域別による特徴 ~北部編~

ベトナムは、南から北へ伸びたS字状の形をした国です。
東側は海に面しており、西側は山岳地帯が広大に広がっています。

そんな縦長の国なので、南北で気候が大きく違っています。
それに伴い、食文化も大きく異なっているのです。

まずは北部を見ていきましょう。

北部は中国に隣接しており、ベトナムの食文化の中でも特に中国の影響を顕著に受けています。
中国に隣接しているので、味噌や豆腐や麺を使った料理が多いのが特徴です。
また、北部は稲作が盛んなので、栄養豊富な土壌で味の良い米がたくさん採れます。

ベトナムの食文化の中に米文化があるのは、北部が米を栽培しているからです。
北部からベトナム全土に米文化が広がりました。

北部にはハノイがあります。
チャオトムよりはるかにポピュラーな米粉麺のフォーは、ここハノイが発祥の地です。
北部の料理は塩辛いのが特徴で、塩や醤油がベースになります。

北部でも海に面していない方は、川魚やタニシを食べます。

ベトナム料理の「チャオトム」から見える、地域別による特徴 ~中部編~

ベトナム第3の都市ダナン市を中心に、フエやホイアン等の世界遺産が点在しています。
20世紀までフエで続いた阮朝には、他のエリアでは見られない独自の食文化が発達しています。
「フエ料理」と独自に呼ばれる事もあります。

このフエ料理は、フエにグエン朝があった事もあり、宮廷料理の影響を受けています。
そのため洗練された味付けで、凝った料理が見受けられます。
宮廷料理は現在も人気があります。

また、南シナ海で獲れる海の幸も豊富で、新鮮な魚介料理も有名です。
その中の1つに海老のすり身を使った「チャオトム」があります。

チャオトムは宮廷料理でもあり、海の幸を使った料理でもあり、ベトナムの中部を代表する料理だと言えます。

また麺料理では、少量の濃厚なスープをかき混ぜて麺に絡ませる「ミー・クワン」というフエで発展した料理があります。

中部の料理は、塩気や唐辛子のピリっとはっきりした味付けが特徴です。
西側は、かつてフランスの植民地だった時代の名残で、コーヒーや香辛料、お茶等が栽培され、歴史を反映した食文化になっています。

ベトナム料理の「チャオトム」から見える、地域別による特徴 南部編~

ベトナム最大の経済都市であるホーチミンがあります。
東南アジアでも随一の都市発展がなされています。

その一方で、南西に位置するメコンデルタ地方は、大自然が広大に広がっています。
大都市と大自然が共存する南部は、蒸し暑い気候なので、ココナッツミルクや砂糖を使用した甘辛い味付けが特徴です。
味付けはベトナム料理の中で最も辛いと定評があります。
料理自体の味付けが辛いのも多いですが、ヌクマムをつけダレとして食べる時は、かなりの量の刻んだ唐辛子を入れて食べます。

そんな南部の定番料理と言えば「バインセオ」です。
日本ではベトナム風お好み焼きとして「チャオトム」よりもポピュラーで、紹介される事もしばしばあります。

その他にも生春巻きも南部発祥の料理です。
ちなみに中国由来の揚げ春巻きが浸透している北部では、この生春巻きは滅多に食べないそうです。

ベトナム料理「チャオトム」を実際に作ってみよう!

なんとなくベトナム料理のチャオトムは分かってきたとは思いますが、実際に食べてみないとどんな料理かなんて分かりませんよね。
そこで今回は日本でも手に入りやすい材料を使ったチャオトムの作り方を紹介します。

【材料】
・海老…300g
・豚ミンチ…100g
・砂糖…10g
・塩…ひとつかみ
・ヌクマム(ナンプラー)…大さじ1杯
・さとうきび…あれば
※サトウキビがなければ砂糖を3g足してください。

【作り方】
海老をフードプロセッサーかミキサーまたは、すり鉢にに入れてミンチ状にします。

そこへ豚ミンチと調味料を入れて混ぜ合わせます。

手に油(分量外)を付けて、サトウキビにミンチにした材料を巻き付けます。

耐熱皿に乗せて、電子レンジで火を通します。

火が通ったら、トースターかフライパンに乗せて表面に焦げ目をつけます。
これで完成です。

食べ方はそのまま食べても良いですし、現地に行った気になって、水でもどしたライスペーパーに巻いたり、葉野菜で巻いたり、ベトナム代表パクチーと一緒に食べたりとアレンジは自在です。
日本でもインスタントで売っているフォーに乗せて食べても良いですね。

初めましての「チャオトム」で、ますますベトナム料理が好きになる

ベトナム料理のそこまでポピュラーではない「チャオトム」を知るうちに、ベトナムの宮廷料理の歴史や、支配していた中国やフランスの影響を受けて、現在のベトナム料理があるのだと分かるでしょう。

また、ベトナムの国の形状から南北で食文化が全然違うという事も分かり、今まで「ベトナム料理」と一括りにしていましたが、実は「ベトナムの南部料理」等と言うのが正しいのかもと思えませんか。

今度ベトナム料理店に行った際は、南部、中部、北部の全国土の代表料理を食べて、ベトナム料理を制覇してみてはいかがでしょうか。