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なぜトランス脂肪酸はアメリカで禁止なの?日本での対応は?

      2018/05/16

なぜトランス脂肪酸はアメリカで禁止なの?日本での対応は?

トランス脂肪酸の食品への添加がアメリカで禁止になったことを受け、日本でも禁止にすべき、規制を設けるべきといった声が高まっています。

しかしアメリカと日本では食文化が異なるうえ、特定の食品の摂取による疾病との因果関係も、日本とは状況が異なります。

今回はなぜアメリカがトランス脂肪酸を禁止にしたのか、その背景と日本との違いについてお話しいたします。

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そもそもトランス脂肪酸って何なの?

2018年6月以降、トランス脂肪酸の食品への添加がアメリカで原則全面禁止になりました。

そのため日本でも規制が叫ばれていますが、そもそもトランス脂肪酸とは何なのでしょう。

トランス脂肪酸は食品添加物ではなく、油脂やグリセリン、コレステロールなどと同じ脂質の一つです。

牛肉や羊肉など反芻する動物の食肉や、乳製品にごくわずかに含まれている天然の脂質、もしくは油脂食品を工業的に製造する過程で生成される人工的な脂質です。

脂質は本来活動のエネルギー源となるため、私たちの体に欠かせない成分です。

しかし摂りすぎると肥満などの問題を招くため、摂取量に注意しなくてはなりません。

なかでもトランス脂肪酸は血液中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす働きがあるため、心臓疾患のリスクを高めることが判明しています。

特に人工的に生成されるトランス脂肪酸の体への悪影響が問題となっているのです。

どうしてアメリカではトランス脂肪酸が禁止なの?

人工的なトランス脂肪酸は油脂製品を工業的に作る過程で発生します。

液体である植物油や魚油を、固形化あるいは半固形化させる「水素添加」と呼ばれる技法の使用により、トランス脂肪酸が作られてしまうのです。

水素添加技術により製造される製品はたくさんありますが、代表的なのがマーガリンとショートニング、ファットスプレッドです。

またそれらを使用して作られるパンやケーキ、ドーナツといったお菓子やポップコーンなどのスナック菓子、フライドチキンなどの揚げ物に大量のトランス脂肪酸が含まれています。

また天然の植物油や魚油を精製する過程でもトランス脂肪酸は発生します。

そのためキャノーラ油やサフラワー油といった油類にも微量のトランス脂肪酸が含まれています。

こうした油や油脂製品を好んで多く摂るアメリカでは、肥満や生活習慣病が社会問題化しているうえに、死因の第1位が心臓疾患となっています。

そのためコレステロール値を悪化させるといわれているトランス脂肪酸が禁止されるようになったのです。

アメリカでトランス脂肪酸が禁止になった背景は?

心臓疾患には先天的なものと心臓弁膜症などの器質的なもの、冠動脈疾患といって血液の流れが止まってしまうものなどがあります。

アメリカ人の心臓疾患による死亡では、このうち冠動脈疾患が60%以上を占めています。

これは高血圧や高コレステロール、肥満などが原因であり、その根底にはトランス脂肪酸の大量摂取が考えられるのです。

もともとアメリカ人は甘いものや脂っこいものを好む傾向にあり、トランス脂肪酸は全エネルギー摂取量の2.6%を占めています。

ちなみに日本人は0.31%でしかありません。

アメリカ人は私たちの8倍以上もトランス脂肪酸を摂っているのです。

こうしたトランス脂肪酸の過剰摂取が冠動脈疾患の多さにつながっていると考えたアメリカでは、トランス脂肪酸を規制することで致命的な心臓病が数千件減ると試算し、全面禁止に向けてかじを切ったのです。

まず2006年、食品へのトランス脂肪酸含有量の表示を義務付けました。

その後2013年、使用を段階的に禁止する方針を発表し、2015年6月にはトランス脂肪酸の使用禁止を発表しました。

3年間の猶予期間を経て、2018年6月以降原則食品への添加を認めないとする内容です。

こうした段階的な措置をとって注意喚起を図った結果、2015年までにトランス脂肪酸の消費量は78%も減少しました。

その間、トランス脂肪酸を生成しない代替技術が確立され、その開発コストは冠動脈疾患で膨れ上がる医療費と比べても、経済的なメリットが得られるものだったのです。

トランス脂肪酸を禁止してもなお残るアメリカの問題

アメリカでのトランス脂肪酸禁止は、実はそれほど厳しいものではありません。

というのも禁止されているのは「水素添加」由来のトランス脂肪酸だけだからです。

もちろんほとんどのトランス脂肪酸が水素添加由来なのですから、規制の効果はあります。

しかし、たとえば含有量の表示義務1つをとってみても、どこか「ぬるさ」があるのです。

含有量が1人前当たり0.5g未満の場合は、0.1gであろうと0.45gであろうと、全て0gと表示できます。

0gと表示されている食品を仮に3つ買ったら、トランス脂肪酸が実は1.35g(=0.45g×3)入っている可能性もあるのです。

トランス脂肪酸に対し厳しい規制をかけているニューヨーク市でさえ同じような抜け道があります。

ニューヨーク市民の約1/3が日々の栄養を外食から摂っているため、レストランでの食事1人前当たりのトランス脂肪酸含有量は0.5g以上であってはならないと規定されています。

しかし製造業者によって作られ包装された食品を提供する時は、このルールは適用されません。

したがって包装されたクラッカーやポテトチップスなどは、この規制の対象外となるのです。

さらにいえば、レストランでの規制はニューヨークでのみ行われていることであって、他の町での規制はありません。

消費者が意識的にトランス脂肪酸を排除しようとしない限り、たやすく体内に入ってきてしまうのです。

どうして日本は禁止にならないの?

アメリカがトランス脂肪酸禁止に踏み切ったことを受け、日本でも禁止にすべきとの声が上がっています。

しかし、日本はもともとトランス脂肪酸の摂取量が非常に少なく、総エネルギーに対して0.31%とアメリカの10%程度しかありません。

水素添加由来のトランス脂肪酸に限ってみれば、わずか0.12%です。

世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%未満に抑えることを目標としていますが、日本ではすでに目標値をはるかに下回っているのです。

普段からお菓子や油っこいものを多めにとる人でも、総エネルギー量に対して0.73%、水素添加由来に限れば0.43%でしかなく、WHOの目標値を下回っていることに変わりありません。

しかもこれらの数値は2003年から2007年までのデータです。

このころよりトランス脂肪酸削減に向けて各企業の取り組みが始まったため、現在ではもっと数値が低くなっていることが予想されます。

そのため日本はアメリカのような規制が必要ないのです。

日本はむしろ飽和脂肪酸が問題

アメリカでは禁止されているトランス脂肪酸は、日本では基準を下回っているため特に規制されていません。

では全く問題がないかというとそうではありません。

トランス脂肪酸を減らす代わりに、飽和脂肪酸含有量が増えているのです。

飽和脂肪酸は主に肉の脂身やバターに含まれ、体のエネルギーになります。

しかしコレステロールを増やし、心臓疾患の中でも冠動脈疾患と関わりがあることがわかっているために、摂取量は総エネルギーの7%以下が基準とされています。

ところが実態は男性で6.6%、女性では7.6%となっており、女性は基準を超えているのです。

トランス脂肪酸を気にするあまり、マーガリンをバターに換えれば今度は飽和脂肪酸が増え、冠動脈疾患リスクが上がるのです。

飽和脂肪酸は肉の脂身やバターの他にも、カップラーメンや鶏の皮、生クリーム、無塩バターにも多く含まれています。

甘いケーキなどスイーツ類が好物な女性は、飽和脂肪酸を多く摂っているといえます。

トランス脂肪酸も飽和脂肪酸も健康に影響があるから、もう脂質は一切とらないというのではなく、摂りすぎないよういろいろ栄養素をバランスよくいただくのがいちばん良いことです。

栄養の偏らないバランスの良い食事を心がけて!

いかがでしょうか。

トランス脂肪酸は確かに健康への悪影響がありますが、過剰に摂取しない限り特に問題はありません。

アメリカで禁止されたときくと、すぐに日本でも禁止せねば、と過剰に反応してしまうことの方がむしろ問題といえるかもしれません。

日頃から栄養バランスのとれた食事を摂っていればそれで十分です。

好き嫌いせず、いろいろな食材を楽しむようにしましょう。

 - 食文化・食生活