九州や北陸は醤油が甘い?原料や製造方法、おいしい使いかた

九州の醤油が甘い、という話は有名です。

これに対して、一般的な醤油といえば塩気があるイメージです。

醤油が甘いというのは、砂糖のような甘さなのか、または塩分が控えめという意味なのか、使ったことのない人には、なかなか想像がつきにくい味です。

そこで、製法や地域の醤油文化を通して、甘口醤油の魅力をご紹介します。

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甘い醤油を使う地域

「甘い醤油を使ってみたい」と思ったときに、スーパーですぐに手に入るものなのでしょうか。

答えは、住んでいる地域によっては難しいかもしれません。

なぜならば、甘口醤油の主な生産は九州で、そのほとんどは地元の九州で消費されています。

ほかの地域には、九州産の甘い醤油はほとんど流通しないのです。

九州ほどの普及率ではありませんが、北陸や他の西日本にも甘口醤油を使う地域があります。

これらの地域も、醤油は地産地消、ほかの地域ではあまり見かけません。

もし、甘口醤油を味わいたい場合は、アンテナショップや通販などで手に入れるのが近道です。

甘口醤油をメインに使う九州のスーパーでは、8割方甘口の醤油取り扱っています。

実はこうしたことは珍しいことで、薄口醤油が好まれる関西でも濃口との割合が半分ずつ取り扱っています。

北陸でも料理によって使い分けるため、濃口・甘口とバランスよく取り扱いがあります。

ですが、九州生まれ、九州育ちの人は、「醤油は甘いもの」というイメージで、濃口醤油を初めて口にすると、そのギャップに驚くようです。

九州を南へ行けば行くほど、醤油の甘味が強くなり、九州ほど甘口醤油を日常的に使う地域もありません。

甘い醤油のJAS上の定義

実は、JAS規格に甘口醤油という区分はありません。

濃口醤油の一部に定義されています。

一見、ラベルには「甘口」や「甘い味」と書いてあるので、濃口醤油には見えません。

しかし裏の食品表示には、「こいくちしょうゆ(混合)」と表記されています。

なぜ、濃口醤油と同じ区分なのでしょうか。

JAS規格の醤油は、官能と成分で決められています。

官能検査員が五感で色・味・香りをチェックします。

成分窒素分や色度などを分析し、そして醤油を、濃口、薄口、たまり、再仕込み、白の5種類に大別します。

醤油の規格に甘さの基準はありません。

総合的な成分から、濃口醤油のひとつに分類されています。

濃口醤油と大きく違うのは、アミノ酸液や甘味料を加えて甘くしていることです。

醤油の原材料は、大豆、小麦、塩ですが、これだけでは甘みは出せません。

九州出身ではない人が、初めて九州の甘い醤油を使うと「砂糖のような甘さ」といいます。

つまり、醤油メーカーが甘味料を調整して、地元に好まれるこの甘い味を作っているのです。

甘口醤油の作り方や原料

甘口醤油は、2種類の製造方式があります。

●混合醸造方式
もろみにアミノ酸液等を加えて、醸造します。

食品表示は「こいくちしょうゆ(混合醸造)」です。

●混合方式
醸造してできた「生醤油」にアミノ酸液等を加えます。

食品表示は「こいくちしょうゆ(混合)」です。

醸造前か後に、アミノ酸液等を加えて作ったのが甘口醤油です。

アミノ酸液は、一言でいうと旨味のもとです。

醤油と甘味料がセットで作られていて、九州で好まれる甘い醤油の味を作ります。

甘味料は、ステビアや甘草、サッカリンが使われます。

砂糖よりも量が少なくて済み、カロリーも製造コストも抑えられます。

これらの甘味料はすべて、JAS規格で認められた添加物です。

砂糖を醤油作りに使うメーカーもありますが、あまり一般的ではありません。

では、甘味料について見ていきましょう。

ステビアと甘草は、両方植物で天然甘味料です。

どちらも砂糖の200倍以上の甘い味がします。

一方で、サッカリンは人工甘味料です。

砂糖の500倍以上の甘い味がします。

サッカリンは九州の南へ行くほど、使用する確率が高いです。

九州の醤油が甘い理由

なぜ九州の醤油は甘いのでしょうか。

まず、江戸時代の長崎貿易で砂糖の取引が盛んであったことに関係しています。

当時、九州で砂糖の流通量が多く、貴重ではあったものの、よく使われていました。

砂糖を多く使った料理は、おもてなし料理とみなされていました。

特別な日に、お客にごちそうとして振る舞うことが多かったのです。

のちに鹿児島で砂糖を栽培するようになり、砂糖を使った家庭料理も増えました。

南へ行けば行くほど甘い味が好まれた理由です。

こうして料理に使う醤油に影響していったのです。

そして、九州が漁業が盛んであったことも考えられます。

九州の醤油は、調理用も甘いですが、刺身醤油はさらに上を行く甘さです。

新鮮な魚の身は弾力があり引き締まっていますが、淡泊な味です。

地理的に新鮮なまま魚を食べられる九州では、刺身の味を引き締める甘い醤油が好まれました。

アルコール度数の強い、芋焼酎と刺身を食べる習慣からも、食べ合わせのよい濃い味が好まれたのです。

北陸の醤油が甘い理由

北陸地方でも甘い醤油は好まれます。

九州と同じく、漁業が盛んであったことが影響しています。

白えびやバイ貝など、こっくりとした甘みのある魚に甘い醤油がよく合います。

ブリやのどぐろなどの脂がのった魚もよく獲れ、煮付けに甘口醤油が使われています。

旨い魚が獲れるところには甘い醤油あり、といいます。

九州と同じく、北陸で獲れる魚と甘口醤油の相性が良いのです。

北陸の醤油は、九州と見た目や味が違います。

九州の醤油は色が濃いのに対して、北陸のものは薄口醤油のように澄んでいます。

甘さはメーカーによって甘味料は異なりますが、甘酒を使うところが多いです。

そのため、九州の砂糖のような甘さよりは穏やかで控えめです。

色や甘酒を使うことなど、薄口醤油に似た、甘口醤油です。

これには、金沢の料理人が京都に修行に行くことが多かったことが関係しています。

京料理の影響を受けて、甘口醤油を加賀料理に使うようになりました。

江戸時代に、現在の金沢市大野町で加賀料理に使う醤油が作られました。

現在においても、大野醤油は日本の醤油五大名産地(銚子、野田、龍野、小豆島)のひとつです。

地元の魚と相性がよく、加賀料理にも使いたい醤油を追求し、北陸独自の甘い醤油が生まれたのです。

甘辛くておいしい煮物が作れる甘い醤油

甘い醤油は甘味料が入った醤油ということが、ご理解いただけたでしょうか。

お土産で頂いたり、旅先やアンテナショップで見つけたら、ぜひ使ってみましょう!

実際に、地元の人以外がはじめて使ってみると「肉じゃが、しょうが焼き、アラ煮がおいしく作れた」「砂糖要らずで便利だった」と、なかなか好評なのです。

料理を作ったことがあに方にとっては、和食の味付けが難しいと感じる方も多いはずです。

初心者には、出汁や砂糖、醤油やみりんなど、使う調味料が多くて気後れしそうですよね。

甘い醤油なら砂糖はもちろん、料理によってはみりんやお酒も省けます。

商品ラベルに、「煮物はこれ一本」のようなコピーも入った商品もあります。

甘い醤油の便利さに魅了されて、取り寄せをする人も多いです。

そして、甘い醤油を刺身醤油として使う人もいらっしゃいます。

煮物や刺身醤油にと、用途が広がれば活躍してくれることでしょう。

地元の味から我が家の味に移行している甘口醤油

このように、甘口醤油は醤油メーカーが工夫を重ねて作った地域の味を代表する調味料です。

これまでは、甘い醤油は地元のための醤油でした。

宅配サービスが充実した今、個人が選択肢として甘い醤油を使う傾向もみられます。

濃口醤油と使い分けをすれば、食のバリエーションが増えて時短化にもつながります。

そして、家族がおいしく食べてくれることが何よりも嬉しいことですね。